サドル
サドルの基本機能と形状の分類
サドルは、露出配管工事やケーブル配線工事において、電線管やケーブルを建物の壁面や天井などの造営材に押さえ込み、確実に支持固定するための電気工事用金具である。形状の基本として、アルファベットの「U」やギリシャ文字の「Ω」に似た形をしており、配管等を包み込むようにして固定する。
固定用ビスの穴が配管を挟んで両側に設けられているものを「両サドル」と呼ぶ。両側から均等な力で強固に固定できるため、太い電線管や重量のあるケーブルを支持する場合や、確実な固定が求められる標準的な施工において用いられる。
これに対し、ビス穴が片側のみに設けられたものを「片サドル」と呼ぶ。片サドルは、壁の入隅などスペースが限られて両側にビスを打てない箇所や、細いケーブルの簡易的な固定、あるいは複数本の配管を隙間なく並べて施工(並行配管)する際に採用される。
固定対象物に応じた専用品の選定
サドルには、金属製電線管を固定するための製品と、CVケーブルやVVFケーブルといった外装ケーブルを直接固定するための専用製品が存在する。電線管固定用のサドルにおいても、対象となる管の外径に合わせて製品が細分化されている。
例えば、金属製電線管の場合は「薄鋼電線管」と「厚鋼電線管」があり、両者は管の呼び径が同じであっても実際の外径寸法が異なる。そのため、使用する電線管の規格に完全に適合したサイズのサドルを選定しなければ、固定時にガタつきが生じたり、管を過度に締め付けて変形させたりする原因となる。
設置環境に対する材質と表面処理
サドルは造営材に直接触れるため、設置場所の環境(温度、湿度、腐食性ガスの有無など)に応じて、適切な耐候性と防錆性能を持つ材質を選定する必要がある。一般的な屋内環境の乾燥した場所であれば、安価な鋼板に電気亜鉛めっきを施した製品で運用される。
しかし、屋外の雨水に曝される場所や、地下ピット内など常時多湿で結露が生じやすい場所においては、電気亜鉛めっきでは早期に赤錆が発生し、支持機能が失われる。このような環境下では、より厚い防錆層を持つ「溶融亜鉛めっき(ドブめっき)」処理が施されたサドルや、腐食に強いステンレス製(SUS304等)の製品を選定する。
内線規程に基づく支持間隔の厳守
電線管やケーブルをサドルで固定する際、「電気設備技術基準の解釈」および「内線規程」に準拠した規定の支持間隔(ピッチ)を守って施工しなければならない。
金属管工事の場合、サドルによる支持点間の距離は原則として2.0m以下と規定されている。これは自重によるたわみや地震時の脱落を防ぐためである。また、管の終端部や、ボックス類との接続箇所、管が曲がる箇所(ノーマルベンド等)の近傍においては、接続部から0.3m以内の位置にサドルを設けて確実に固定することが求められる。
ケーブルを直接造営材に固定する場合も同様に、ケーブルの自重による張力が接続端子に加わらないよう、垂直配線や水平配線の条件に応じた適切な支持間隔が規定されている。
管やケーブルを保護する被覆と付属品
サドルには、金属むき出しの標準品のほか、内側または全体にビニル等の合成樹脂による被覆(コーティング)を施した製品がある。被覆付きサドルは、固定時にケーブルのシース(外装)を傷つけるのを防止するため、あるいは金属管に傷をつけて防錆層を破壊するのを防ぐために用いられる。
また、壁面に直接配管を密着させると、結露水や雨水が管と壁の隙間に滞留し、腐食を進行させる要因となる。これを避けるため、造営材とサドルの間に「サドルベース」と呼ばれる台座(スペーサー)を挟み込み、壁面から一定の隙間を確保して配管を支持する施工方法も行われている。












