リアクタンス
交流回路において、コイルやコンデンサが電流の流れを妨げる疑似的な電気抵抗の成分をリアクタンスと呼ぶ。通常の抵抗とは異なり、リアクタンスは実際に電力を消費して熱を発生させないという特性を持つ。抵抗とリアクタンスはどちらも電流を制限する働きを持つが、リアクタンスの大きさは交流の周波数によって変化する仕組みとなっている。
リアクタンスには、コイルを要素とする誘導性リアクタンスと、コンデンサを要素とする容量性リアクタンスの2種類が存在する。これらは周波数に対する反応が正反対であり、交流回路の設計や解析においてこの特性を理解することが設備の安定稼働につながる。
誘導性リアクタンスの特性
誘導性リアクタンスは、コイルの自己誘導作用によって発生する電流を妨げる成分である。直流電流を流した場合は電気抵抗がゼロとなってそのまま電流を通すが、交流電流に対しては抵抗として働く特性を持つ。
周波数が高くなるほどコイルが電流の変化を妨げようとする働きが強まるため、誘導性リアクタンスの値は大きくなる。また、コイルを含む回路では、流れる電流の位相が電圧に対して遅れるという現象が発生する。この遅れが電気設備における力率低下の主な原因となっている。
国内で用いられている電気機器は、基本的に誘導性であり、負荷を原因として力率が進む(改善される)ことは考えられない。そのため、力率改善が重要となる。
容量性リアクタンスの特性
容量性リアクタンスは、コンデンサによって発生する成分である。直流電流に対しては絶縁体として働くため電流をまったく通さないが、交流電流に対してはコンデンサが充電と放電を繰り返すため、見かけ上電流が流れる状態となる。
誘導性リアクタンスとは反対に、容量性リアクタンスは周波数が高くなるほど値が小さくなる特性を持つ。周波数が高いと充放電の切り替わりが早くなり、より多くの電流を流しやすくなるためである。コンデンサを含む回路では、電流の位相が電圧に対して進む現象が発生する。
インピーダンスと成分の合成
交流回路全体の電気抵抗を示す値としてインピーダンスがある。これは電力を消費する純粋な抵抗成分と、電力を消費しないリアクタンス成分を合成したものである。
- 抵抗:周波数に関係なく一定であり、電力を消費して熱を発生させる成分。
- 誘導性リアクタンス:コイルに由来し、周波数が高いほど電流を妨げ、電圧に対して電流を遅らせる成分。
- 容量性リアクタンス:コンデンサに由来し、周波数が高いほど電流を通しやすくし、電圧に対して電流を進ませる成分。
誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスは互いに打ち消し合う性質を持っているため、単純な足し算ではなくベクトルを用いた計算によって全体のインピーダンスを導き出す。リアクタンスの成分を適切に把握して回路のインピーダンスを調整することは、安定した電圧を維持するための基本的な考え方となる。
受変電設備における力率改善の仕組み
工場やビルの電気設備では、多数のモーターを利用するため回路全体に強い誘導性リアクタンスが発生し、電流が電圧より遅れて力率が悪化する。力率が悪い状態を放置すると、電力会社から供給される電流のうち設備を無駄に循環するだけの無効電力が増加する。これにより発電機や変圧器、配電線の容量を圧迫し、電圧降下や電力損失を招く。
これを改善するための一般的な設計手法として、高圧母線や低圧母線、誘導性機器の付近などに進相コンデンサを設置することで無効電力を補償する。進相コンデンサが持つ容量性リアクタンスの電流を進ませる働きを利用して、モーターによる電流の遅れを相殺し、力率を1に近づける仕組みである。これにより無効電力が減少し、電力損失の低減や電気料金の割引といった利点が得られる。
直列リアクトルによる高調波対策
進相コンデンサを単独で設置すると、電力系統に含まれる高調波成分がコンデンサに流れ込みやすくなり、設備の過熱や焼損を引き起こすおそれがある。これを防ぐため、進相コンデンサには直列リアクトルをセットで接続するのが標準的な構成となっている。
直列リアクトルは誘導性リアクタンスを持つコイルであり、高周波数の電流に対して高い抵抗値を示す特性を持つ。これをコンデンサと組み合わせることで、高調波電流が設備内に流れ込むのを防ぎ、電圧波形の歪みを抑える保護装置として機能する。日本の高圧受電設備において、直列リアクトルの定格容量は進相コンデンサの容量に対して6パーセントとするのが標準的な設計手法であり、これにより安全な回路が保たれている。












