電気設備の知識と技術 > 照明設計・電球の知識 > グローランプ方式とラピッドスタート方式の違い
2024.3.31
グローランプを用いた蛍光灯は、グロースターターと呼ばれる点灯装置を用い、蛍光灯の点灯の引き金となる大きな起電圧を発生させ、蛍光灯を点灯させるものである。グローランプ方式の蛍光灯は非常に歴史が古く、キッチン手元灯や倉庫照明、クローゼット照明などでも、グローランプは未だ利用されている。
点灯管にはいくつか種類があり、バイメタルを電流で加熱して湾曲させるグローランプ方式、電子回路を用いて発光させる電子方式などがある。グローランプは非常に歴史が古く、蛍光灯の発売初期から使われているものだが、現在も住宅用との一部蛍光灯にはグローランプによる点灯方式が採用されている。
電子回路方式の点灯管を用いると、ラピッドスタート蛍光灯と同じように瞬時点灯が可能となる、クローゼットやトイレ、キッチン手元灯など、グローランプ式の蛍光灯がよく使われる室では、スイッチをオンにしてもなかなか点灯しないという事例は多い。
電子式の点灯管に交換すると、瞬間的に蛍光灯が点灯するため利便性が大きく向上する。点灯管のコストについて、グローランプと電子式で大きく違っていないため、グローランプ点灯管を電子式点灯管に交換する事例は多い。
点灯管の種類や特徴については点灯管の種類・仕組みを参照。
グローランプは、点灯させる蛍光灯の種類や出力によって使い分けが必要である。蛍光灯の点灯には瞬間的な起電力が必要であり、適合したグローランプを使用しなければ、ランプ不点灯や寿命の低下につながる。
一般的に、バイメタルの湾曲には3秒程度の時間がかかり、これはグローランプを使う以上、どのメーカーの製品であってもほぼ同様の時間を必要とする。
グローランプは、固定された電極と、熱を加えると湾曲するバイメタル電極を近接させた、蛍光灯点灯用の部品のひとつである。グローランプに電圧を印加すると、ガラス内部の電極間の絶縁が破壊され、空中放電によって熱を生み出すように作られている。
空中放電によって発生する熱を利用し、バイメタル電極を湾曲させ、蛍光灯の点灯回路に閉回路を構成させる。
グローランプ点灯方式の蛍光灯では、蛍光灯とグローランプが並列にされている接続。並列接続の特性として、電流は抵抗が少ない回路側に多く流れようとし、電源オンの瞬間は蛍光ランプ側ではなく、グローランプ側に全電流が流れ込む。
電源スイッチを入れて電圧を印加すると、グローランプ側に流れた電流により、電極間で放電が発生する。放電は熱となりバイメタルが加熱される。加熱されたバイメタル電極は熱の影響で湾曲し始め、近接状態の電極同士は時間と共に接触する。
グローランプ内の電極同士が接触すると、グローランプ側で閉回路が構成され、蛍光灯のエミッタが余熱され始める。グローランプには電流が流れ続けるが、蛍光灯には安定器が接続されており、直列に接続された安定器よって、電流値は一定に保たれる。
グローランプ側では閉回路構築により放電が消え、冷やされることでバイメタルが元の形に戻り、接触していた電極が離れる。
バイメタル電極が離れると、閉回路を流れていた電流が突然0になるため、安定器内を貫く磁束が大きく変化し、電磁誘導の効果により大きな起電圧が発生する。この起電圧をきっかけに、余熱されたエミッタに高電圧が印加され、電子の放出が始まって蛍光灯側に電流が流れ始め、蛍光灯が点灯する。
一連の動作によって蛍光灯が発光しなかった場合、バイメタルによって離れた電極に再度放電が始まり、加熱によってバイメタルの接点が閉じて閉回路を作り、同じ順序で起電圧を発生させる。これは蛍光灯側が点灯するまで繰り返される。
蛍光灯側に電流が流れ始めれば、グローランプ側への電流の分流がなくなり、以降は放電することはない。常にバイメタル電極は離れた状態になり、蛍光灯は点灯し続けられる。これがバイメタルによる蛍光灯点灯の仕組みである。
グローランプを交換する場合、同じ出力の蛍光灯に適合する点灯管を選定すればよいが、口金の形状に注意が必要である。
グローランプの口金には、E型(ねじ込み式)とP型(差し込み式)がある。30W未満の蛍光灯ではE型、それ以上の業務用蛍光灯ではE型が広く普及しているが、10Wクラスの小型蛍光灯でもP型があり、必ずしも蛍光灯サイズで分類されているわけではない。
家庭用の蛍光灯は出力が小さいためねじ込み式のE型が多いが、小型の蛍光灯でもP型は存在するため、蛍光灯の仕様書に合わせて選定すれば良い。交換であれば、既に取り付けられているグローランプを取外し、同じ出力に適合した口金のグローランプを購入すれば問題ない。
グローランプの取り外しは、必ず蛍光灯の電源を切ってから行う。やけどの原因となるため、ランプ点灯中にグローランプを外してはならない。
グローランプは蛍光灯を点灯させる回数によって寿命が定められている。一般的に6,000回程度の点灯が可能であるが、長寿命タイプのグローランプであれば、10,000~15,000回のオンオフに耐えるものもある。
電子式のグローランプは40,000回以上のオンオフに耐えるため、点灯の速さだけでなく、寿命の面からも、電子式点灯管に交換するメリットは大きい。
LED照明が広く普及したことに伴い、住宅の蛍光灯をLEDに交換したいというニーズが高まっている。住宅用の蛍光灯は基本的に「グローランプ形」であり、事務所など業務用で用いられているような「ラピッドスタート形」の蛍光灯は少ない。
グローランプ方式の蛍光灯であれば、グローランプを取外し、LED照明用のダミーグローを装着することで、蛍光灯をLED電球に置き換えられる。多くの家電量販店で、この方式によるLED置き換え照明が販売されている。
蛍光灯には安定器が取り付けられており、グローランプを交換する方法では、安定器への電源供給が続けられる。安定器は通電によって電力を消費しており、蛍光灯出力の20%程度の電力が無駄となる。
蛍光灯をLEDに交換することで、消費電力が数値的に下がったとしても、安定器での電力ロスによって思ったより省エネにならない、ということも考えられるため注意を要する。
ラピッドスタート式の蛍光灯はグローランプを使用せずに点灯できる。電圧を印加した瞬間から、約1秒程度の時間で点灯するため、業務用施設での採用が多い蛍光灯である。
ラピッドスタート点灯方式の蛍光灯は、グロースターター方式と同様、蛍光灯を点灯させるために高電圧を発生させているという点は同じである。ラピッドスタート点灯方式では、安定器に磁気漏れ変圧器を搭載しており、電流を流すことでエミッタを余熱し、さらに変圧器によって高電圧を誘起させて、エミッタから放電を開始させる。
省エネルギーの観点から、ラピッドスタート式の蛍光灯は既に古い照明器具であり、エネルギー効率も低く寿命も短いという欠点がある。Hf蛍光灯または、LED照明器具に交換することが望まれる。
Hf蛍光灯は、同じ本数で照度を高く確保できるので、消費電力を小さく抑えられる上、台数を減らすことで天井空間をスッキリと見せられる。近年はLED照明が広く普及し、Hf蛍光灯よりも高効率・高寿命が実現できている。
蛍光管のガラス内面に導電性の被膜を設けたラピッドスタート蛍光管である。20Wから40Wまでの、一般出力の蛍光管として普及している。一般屋内用のラピッドスタート形蛍光灯だけでなく、防水タイプや防爆タイプの蛍光灯にも使用できるオールラウンドな蛍光管である。
寿命は、20Wで8,500時間と若干短いが、32Wや40Wの蛍光管では12,000時間の寿命となる。調光用器具としては使用できないため、外面ストライプ形の蛍光管の採用が求められる。
ガラス管外面に導電性ストライプを塗布し、高抵抗を介して電極と接続した蛍光管である。連続調光型の蛍光灯で使用することを前提としたランプであるが、一般器具としても使用できる。
防水タイプや防爆タイプの照明器具には、外面ストライプ方式の蛍光管を使用できない。
ガラス管外面に撥水性皮膜(シリコン)を塗布した蛍光管である。主に110形用の蛍光管として普及している。器具への接地が必要とされている。