電気設備の知識と技術 > 照明設計・電球の知識 > 点灯管の種類・仕組み
キッチン手元灯やウォークインクローゼットの照明など、直管形の蛍光灯の本体に小さな筒状の装置が付いている。これは点灯管と呼ばれ、グロー式の蛍光灯を点灯させるために必要な器具である。点灯管の動作の仕組み、長寿命で高効率な電子点灯管・デジタル点灯管の特徴について解説する。
点灯管とは、グロースタータ式の蛍光灯を点灯させるために使用する、高電圧発生部品である。点灯管はバイメタルを内蔵しており、キック電圧を発生させて蛍光灯を点灯させる。
点灯管はグロースタータとも呼ばれ、約6,000回は蛍光灯を点灯できる。耐久点灯回数を超過した点灯管は、蛍光灯を正常に点灯させられないため、廃棄し新品に交換する。
一般の点灯管は、量販店で数百円から購入できる安価な部品であり、交換するのも蛍光灯器具から回転させて取り外すだけである。グロー式の点灯管は、1日あたり10回の蛍光灯点灯を行った場合、約600日の寿命となる。
点灯管には一般的なバイメタル内蔵のものや、寿命を3倍程度まで延長した長寿命点灯管など、メーカーから多数の種類が販売されている。長寿命点灯管は点灯回数18,000回程度まで動作可能で、値段は一般の点灯管とあまり変わらない。寿命にして約1,800日、5年程度となる。
グローランプは、固定された電極と、熱を加えると湾曲するバイメタル電極が近接している。点灯管に電圧を印加すると、固定電極とバイメタルの間の絶縁が破壊され、空中放電する。この空中放電によって発生する熱を利用してバイメタル電極を湾曲させ、蛍光灯の点灯回路に閉回路を構成させる。
グローランプ式の蛍光灯は、蛍光灯とグローランプが並列接続の回路構成になる。並列接続の回路では電流が分流するため、抵抗が少ない方に多くの電流が流れる。点灯していない蛍光管側には電流は流れず、点灯管の側に全ての電流が流れ込む。
続いて、蛍光管に付属しているエミッタ部が余熱される。際限なく電流が大きくなり続けることを防止するため、直列に接続された安定器が、流れる電流値を一定に保つ。
グローランプに閉回路が構成されると、アーク放電が消える。点灯管の内部が冷やされ、熱を失ったバイメタル電極が冷却されて元の形に戻ろうとし、接触していた電極が離れる。
バイメタル電極が離れると、閉回路を流れていた電流が0となる。その瞬間、安定器内を貫く磁束が大きく変化するので、電磁誘導の効果により大きな起電圧が発生する。
この大きな起電圧は、余熱されたエミッタに高電圧として印加され、電子の放出が始まり蛍光管に電流が流れランプが点灯する。もし蛍光灯が発光できなかった場合、グローランプ内部のバイメタル電極と固定電極が再度放電し、同じ順序で大きな起電圧を発生させる。
蛍光管に一度でも電流が流れれば、並列回路は蛍光管側への電流のみとなり、点灯管への電流の分流が無くなる。バイメタルと固定電極での放電が消失し、常時バイメタル電極は離れた状態になり、蛍光管は点灯した状態を維持できる。
電子点灯管は、蛍光灯の電極を余熱し、安定器から一定電圧の高圧パルスを発生させる回路を内蔵した点灯管である。バイメタルを内蔵したグロー式の点灯管よりも長寿命で、蛍光灯を即時に点灯させられる優れた機能を持っている。
一般の点灯管よりも寿命が長く、点灯回数は60,000~100,000回以上とされる。1日10回の点灯で、10,000日の寿命を維持する。25年以上という数値になるため、蛍光灯本体の寿命が先となり、事実上半永久的に点灯管の交換が不要である。
点灯回数5倍に対して金額も5倍であるが、蛍光灯の点滅寿命を延長できるため、イニシャルコストとランニングコストを考慮すると、蛍光灯を導入し廃棄するまでのトータルコストを低減できる。繰り返しオンオフを行うキッチンの手元灯や、洗面台などで使用すると大きな効果がある。
電子点灯管は一般の長寿命点灯管と比較したとき、蛍光灯を点灯させられる回数が5倍以上多いというメリットがあるが、価格は一般点灯管より4倍~5倍高く設定されている。量販店などでは、近い金額で販売している場合もあるので、実際にはそれほど大きな金額の差はない。
電子点灯管は蛍光灯を点灯させるまでの時間が大幅に改善されており、1秒程度で点灯できる。従来の点灯管では、蛍光管が点灯するまで3秒程度の時間が必要であるが、電子点灯管を使用することで、3倍以上の時間短縮を図ることができる。
蛍光管が発光するまでの時間が短く、エミッターの消耗が少なく抑えられることにより、蛍光灯を繰り返しオンオフした場合、一般点灯管を使用するよりも寿命が長くなる。蛍光灯点灯時のノイズがほとんど発生しないという利点もある。
電子点灯管は一般の点灯管の仕組みを電子回路に置き換えているため、蛍光灯の点灯管を交換するだけで使用可能である。電子点灯管を使用し、ランプ点灯までのストレス軽減という副次効果も有るので、グロー式蛍光灯の点灯管を、全て電子点灯管に交換してしまうことも一案である。
電子点灯管を導入することで、蛍光灯が点灯までの時間を短縮できることや、点灯管をたびたび交換する手間を省くこと、点滅寿命を伸ばせるなど、一般の点灯管を電子点灯管に交換するだけで多くのメリットを享受できる。
電子点灯管は、自動点滅器付の器具や人感センサー付照明器具に取り付けることは推奨されていないため、スイッチでオンオフする一般仕様の蛍光灯器具に設置する。
電子点灯管は数秒間の間に繰返しオンオフをすると、蛍光灯が不点灯となる。不点灯になってしまった場合、30秒以上の時間をあけた上で再度オンにすれば再点灯する。
屋外照明など、オンオフをほとんどしない場所や、常に点灯した状態の蛍光灯では、電子点灯管に交換しても効果を発揮できない。設置場所を考慮し、オンオフする頻度が高い場所での採用を検討すると良い。
デジタル点灯管は、デジタルIC回路を点灯管に組み込み、電子点灯管の3倍以上の点灯回数を持つ点灯管である。一般の点灯管や、電子点灯管と違い、デジタル点灯管を生産・販売しているメーカーは限られており、流通量が少ないため家電量販店でもあまり見かける機会がない。
デジタル点灯管は、電子点灯管よりも単価が2倍程度高いが、点灯回数200,000回以上という長寿命のため、多頻度点滅を行うような照明器具の場合、点灯管の消耗を極力抑えられる。
デジタル点灯管の点滅寿命を200,000回とした場合、毎日10回点滅させると寿命は54年である。照明器具は10年程度で内部機器が故障し始めるようになるため、点灯管よりも先に照明器具本体が故障する。電子点灯管と同様、デジタル点灯管を一度蛍光灯に取り付けてしまえば、実質、半永久的に使用可能と考えて差し支えない。
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