電気設備の知識と技術 > 照明設計・電球の知識 > 蛍光灯の耐用年数と寿命
2024.3.31
蛍光灯のランプは消耗品であり、寿命は10,000~12,000時間と比較的長い期間、使い続けることが可能である。
蛍光灯の灯具本体の寿命は、24時間連続点灯など過酷な条件でなければ、10~15年程度とされている。照明器具メーカーでは、本体のほか、安定器についても耐用年数を10年程度で設計しており、10年を超えた照明器具は、安定器交換や器具交換を薦めている。
実情として、使用期間15年を超え、20年や25年と使用している例も数多くある。屋内で使用する照明器具で、3,000h/年を超えるような過酷な点灯状況になければ、概ね15年程度は使用できる。屋外に設置される照明器具であれば、湿気や粉塵による劣化により、10年程度使用できれば十分と考えられる。
数年から数十年使用した照明器具は、器具内の電線ひび割れ、ソケットの変形、破損、端子台の変形など、多くの劣化が発生する。蛍光灯を点灯させた瞬間に漏電遮断器が動作したり、発煙や火花が発生した場合、器具の耐用年数を超過したと判断し、器具交換を行うのが良い。
1972年以前の蛍光灯器具の場合、安定器にPCBが含有している可能性がある。PCBは申告な環境被害を引き起こす有害物質のひとつであり、安定器にPCB成分が含まれている場合は、産業廃棄物として処理できない。
所定の機関に回収を依頼する必要があり、回収されるまで、厳重な保管が必要である。PCBの保管、処理に関する規制はPCB使用禁止と廃棄処分の法規制を参照。
器具種類によって寿命に違いがあるが、業務用の蛍光灯照明として広く使用されているHf蛍光管は、12,000時間程度の寿命とされている。
業務用の蛍光管は一般的に10,000~12,000時間の長い寿命が特徴的であるが、家庭要の蛍光灯は若干短く設定されている。一般家庭で使用されているサークル形蛍光灯は6,000~8,000時間、キッチン手元灯に使用される直管蛍光灯は、3,000時間~6,000時間である。
業務用は、毎日数時間、長期に渡って点灯させる必要があるため長寿命が求められるが、家庭要の蛍光管は点灯時間が短く、オンオフする頻度が高いのが特徴であり、点滅回数に対する強化を施したランプを選択するのが良い。
蛍光灯の欠点として、頻繁なオンオフを繰り返すと寿命が短くなる。蛍光灯の点灯は「エミッタ」と呼ばれる部材に高電圧を印加して、電子の放出を促すという仕組みのため、点灯させるたびにエミッタが消耗する。蛍光灯を点灯し続けた状態よりも、スイッチをオンにした瞬間に大きな負担が発生する。
蛍光灯は、1回の点灯によって1時間寿命が短くなるとされる。しかし、家庭用で使用されている電球型蛍光灯の場合、施設用のFHT蛍光灯やFL蛍光灯、Hf蛍光灯よりも点滅性能が強化されており、20,000~40,000回の点滅回数に耐える電球も販売されている。
点滅頻度の高い部屋に蛍光灯を設ける場合、点滅性能の高い蛍光灯を選定することで電球交換頻度を抑え、省エネルギーにつなげられる。
蛍光灯を長期に渡って使用すると、ソケット付近やランプ表面が黒ずんだり、黒褐色状の帯が発生する。蛍光ランプの黒化現象には、アノードスポット、エンドバンド、EC黒化の3種類がある。
蛍光灯の電極付近に、黒い斑点が発生する現象である。これはアノードスポットと呼ばれ、電極に塗布されているエミッタが飛散し、電極付近のランプに付着している。
長時間点灯した蛍光管に発生する現象であるが、点滅を頻繁に行ったり、電圧異常が発生している電路だったりすると、早期にアノードスポットが発生する。
蛍光灯先端から数cm離れた場所を境界に、ランプ内側に向かって黒いグラデーション状の黒化が発生することを、エンドバンドと呼ぶ。
エミッタの蒸発によって発生するガスと水銀が化合しており、ランプ本体が黒く見えるが、明るさに大きな影響はない。これも長期間使用した蛍光灯に発生する現象である。
内面導電性皮膜処理を施したラピッドスタート形の蛍光灯に発生する現象で、内部の蛍光物質が、放電によって変色することが原因で発生する黒化である。
空調吹き出し口からの冷気が直接ランプに当たるなどして冷やされ、ランプ内部の水銀が付着しやすい環境において多発する。逆富士形蛍光灯は、ランプが天井面よりも下部に位置するため、空調の冷気の影響を受けやすくなる。
長時間使用していない蛍光灯に多発する黒ずみで、しばらく点灯すると消失する。これは蛍光灯を放置している間に、付着した水銀が点灯直後の瞬間的な蒸発で凝縮している。
ランプ中央下部、冷房の風が当たる部分など、部分的にランプが冷やされる部分に発生する黒ずみである。水銀が冷却された部分に集まってしまうために発生する現象である。
水銀ペレットは直径1mmの粒子であるが、場合によっては影が見えてしまうことがある。しかし、寿命や点灯品質に影響はない。
蛍光灯の安定器は、内部に収容されている電子部品に対し、約40,000時間を性能維持の限界としている。24時間連続稼動などを行わず、通常の使用方法がされた安定器であれば、平均寿命8~10年とされている。
日本照明器具工業会のガイドラインでは、照明器具の耐用年数を15年としている。15年を経過した照明器具は、照明器具としての機能が著しく低下し、絶縁劣化が進行している状況であり、早急な器具交換が推奨される。
安定器の劣化診断は目視だけでは難しく、外観上問題ないように見えても、内部機器の劣化が進んでいることが多々ある。安定器内部のビニル絶縁電線は、安定器から発生する熱によってもろくなっており、発煙や白化事故を起こしやすい状況になる。
コイルの異常発熱、コンデンサの破損や液漏れなど、発火事故の危険性も高くなり、ハイリスクな状態となる。
安定器は周囲温度5℃~35℃程度の範囲で使用することを前提にしており、適正温度を逸脱した環境では、寿命が著しく短くなる。天井裏に安定器を設置するのが一般的であるが、グラスウールの断熱材で覆わないよう注意が必要である。安定器が断熱材で覆われると、安定器の周囲温度が著しく上昇し、絶縁材料が熱によって劣化する。
期待寿命を大きく損なう原因になるため、安定器の放熱を妨げない施工が重要である。
電子安定器の場合、内蔵しているトランスやコンデンサ、半導体部品の寿命に耐用年数が左右される。耐用年数の限界に近づくと、蛍光ランプの不点やチラツキが発生する。
絶縁劣化が進んでいるコンデンサから発煙・発火することも考えられるため、早期の交換が望まれる。
電子安定器は、トランスチョーク・コンデンサ・半導体部品がプリント基板に「はんだ付け」されており、それぞれの部品に劣化のおそれがある。トランスチョークは絶縁性能が低下することにより、層間短絡を発生させるおそれがある。
コンデンサ類は、絶縁性能の低下や電解液の蒸発によって温度上昇し、容量低下を引き起こす。半導体やプリント基板も、絶縁性能が低下すれば、温度上昇の原因となり、絶縁性能が致命的に劣化すれば、漏電や短絡につながる。
24時間連続稼働の工場やコンビニエンスストアなど、昼夜を問わず蛍光灯を点灯させなければならない用途では、故障リスクが大きく上昇する。期待寿命が半分以下になる事例もあるので、注意が必要である。
既存の蛍光灯に対し、改修工事を伴わない簡易な省エネ施策として「ランプを取り外す」というのも効果的である。照度が低下するという直接的なリスクがあるが、ランプを取り付けないことで蛍光灯への通電を遮断し、省エネルギーを図る。
蛍光灯は、灯具本体とランプで成り立っているため、ランプを取り外せば電流の行き場がなくなり、電力の消費が発生しない。これを目的としてランプを取り外し、省エネルギーを図っている事例が多数あるが、蛍光灯器具の種類によっては「異常電流の発生」や「高電圧パルスの発生」の原因となり、機器故障や異常発熱、発火といった事故につながるおそれがあることを理解しなければならない。
蛍光灯を装着せず、安定器に電源を供給し続けた場合、安定器の劣化は蛍光灯が装着されているのと同様に進行する。古くから使っている蛍光灯は、安定器も旧式かつ長期間利用していることが多く、劣化に気が付かないおそれがある。
蛍光灯のランプであれば、安定器が故障すれば点灯しなくなるため、故障に気付くことも可能だが、LED電球が装着されていると故障に気付けない。