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電気設備の知識と技術 > 自動火災報知・防災設備 > ディーゼル発電機の特徴

 2024.3.31

ディーゼル発電機の特徴

ディーゼルエンジン非常用発電機は、20kVA前後の小型機種から1,000kVAを超える大型機種まで多様なラインナップがある。断続的な燃焼による爆発ガスの熱エネルギーをピストン往復運動に変換し、クランク軸によって回転運動に変換するという機構で運転を行う。

ディーゼルエンジンの非常用発電機の分野では非常に広く普及しており、発電機の周辺装置を簡素化することができる「ラジエーター冷却」がよく選定される。冷却水槽を用いた水冷方式もあるが、水を循環するポンプやタンクの保守が煩雑となるため、あまり用いられない。

ディーゼル発電機は燃焼空気の排気に黒煙が多い、運転時の振動や騒音が大きいという問題があるが、比較的安価なため頻繁に採用される。周囲の空気環境に出力が調整されることは少なく、常に一定の出力を確保できる堅牢さも利点である。

ガスタービン発電機と比較して、潤滑油消費量が多い、軽負荷運転の効率が悪い、往復運動のため振動が発生するといった欠点がある。冷却装置の附置、据付面積が必要など、建築的な負担が大きくなるというデメリットもあるが、出力に対する燃料消費量が少ないという大きな利点があるので、大きなオイルタンクを用意することができないビルやホテル、マンションなどで広く用いられている。

長時間の軽負荷運転における注意点

ディーゼルエンジンを選定する場合、軽負荷運転による燃焼効率の低下に注意しなければならない。発電機に接続している負荷が軽すぎる場合、燃料噴射圧力が低くなるため燃料が上手く燃焼せず、黒煙が多くなるという欠点がある。シリンダーやピストンの潤滑オイルが燃焼できる温度まで上昇せず、排気管からオイルが滴ることもあり汚損が問題になることも多い。

軽負荷運転を長時間に渡って行った結果、煙道や機関内部に黒煙が多量に発生し、排気管にオイルが滴るような状況において、突然高負荷・全負荷で運転を行った場合、内部機構の故障につながることがある。そもそも非常用の発電機では、大きな消防負荷を始動することが求められるため、始動電流に耐えられるよう大きなサイズの発電機が計画されることになる。

ディーゼルエンジンを選定する場合、常に全負荷に近い運転ができるよう、余裕を持たせ過ぎない選定をすることも重要なポイントである。近年では負荷試験を行って消防機関に報告することが求められるため、負荷試験装置を接続して100%負荷運転を行い、安定した燃焼ができるかを確認できる計画が良い。

直接噴射式と予燃焼室式

直接噴射式は、燃料を燃焼室に直接噴射して燃焼させる方式で、始動性が良く、燃焼効率が良いという特徴がある。主に、低速~中速の非常用発電機に採用されている。対して予燃焼室式は、予燃焼室に噴射した燃料により、内部圧力を上昇させ、残部を主燃焼室に噴出することで燃焼効率を高める方式である。騒音振動を小さく抑えるため、高速の非常用発電機に採用される。

冷却方式

内燃機関外部からの冷却水で冷却する水冷方式と、機関に直接駆動するファンで冷却する空冷方式がある。ファンによる空冷は小容量の発電機でのみ適用され、大規模な発電機では水冷方式となる。

水冷方式には、放流式、クーリングタワー式、水槽式、ラジエーター方式がある。放流式は冷却水の系統が簡素で設置が簡単であるが、給水が多量に必要で、水がなくなった場合は発電装置が焼損してしまうため、断水した場合には使用不可能となる。

クーリングタワー方式は、冷却水の消費量が少なく、水道水が断水しても一定時間は運転させられるが、クーリングタワーを動作させるための動力や、クーリングタワーを設置するためのスペースの確保に問題が残る。あまり採用実績はない。

冷却水槽式は、水道水が断水しても水温が上昇するまでの間、運転を継続できる。運転時間によるが、大きな水槽を別途用意しなければならず、建設コストが増加する。水槽も定期メンテナンスが必要で、常時水源を用意しなければならないため採用実績はほとんどない。

ラジエーター方式は、非常に採用実績の多い方式で、冷却水配管が不要で冷却水の消費もほとんどない。ラジエーターファンを運転させるため、出力が若干低下することや、排風量が大きくなることに注意が必要である。

特殊仕様の発電機

非常用発電機は、超長時間運転可能型、寒冷地対応型など、オプションによって様々な環境で運用できる。特殊環境で使用する場合、その環境に適用した機種を選定しなければ、非常時にその能力を発揮できず、運転不能により人的被害につながるおそれがある。

長時間運転

非常用発電機を1時間以上の長時間運転をしたい場合、長時間対応型の製品を採用する。法的には2時間以上の運転時間が一般的であるが、72時間・168時間など、数日に渡るような連続運転を求められた場合、潤滑油を多く搭載することで長時間運転ができるようにし、別置タンクに燃料を備蓄し、燃料移送ポンプで燃料供給を続けて運転する。

燃料貯蔵量によっては危険物取扱所として規制される可能性がある。指定数量の考え方を理解し、指定数量を超過しない燃料量に抑えることを基本として計画するとコスト面で有利となる。指定数量を超過する計画となっても、地下タンクによる貯蔵であれば、法規制はそれほど厳しくならない。

発電機は、潤滑油が続く限り連続運転ができるが、運転したままの状態で潤滑油の補給はできないため、潤滑油タンク容量が連続運転時間に大きく影響する。潤滑油容量も指定数量にカウントされるため、計算時には十分注意しなければならない。

寒冷地仕様

発電機を設置する周辺温度が10℃以上であれば、機関対してに特別対策を行う必要はないが、5℃を下回る低温環境では不具合が発生するおそれがある。機関のジャケットなどを保温しなければ動作不良となる可能性があるので、搭載したヒーターを運転して保温を行う。

首都圏以南など、比較的温暖な地域であれば標準仕様の発電機で問題ないが、首都圏以北、山岳地帯など、準寒冷地や寒冷地に該当する地域では、標準仕様のヒーターでは能力が不足するのでラジエータ等の凍結防止を図る必要がある。発注時に特殊仕様の発電機を指定しなければならない。

高高度における使用

山岳地帯など標高の高い場所に発電機を設置する場合、発電機の設置高度に発電機の出力が大きく変動することを考慮しなければならない。標準仕様の発電機は150mまたは300m以下の場所に設置することを前提条件として出力計算がなされる。標準仕様を超える高度に発電機を設置する場合、高高度対応として容量計算をしなければならない。

高高度対応とした場合、5%~10%の能力低下が発生するため、低高度に設置する発電機よりも能力を高めに設定する必要がある。補正を含まずに発電機出力を計画すると、停電等の災害時に能力不足による停止を引き起こすおそれがあり危険である。

始動用蓄電池の種類と特性

REH蓄電池は高効率放電が可能な蓄電池であり、小型パッケージで12Vの公称電圧を得られる。UPS用蓄電池としての利用のほか、起動用蓄電池として幅広く採用されている。

バッテリーはセルモーターを運転させることが主目的であり、高効率な蓄電池が求められるため、高効率・高出力なREH蓄電池が広く使用される。REH蓄電池は小型で安価な高性能蓄電池であるが、寿命は4~5年程度となっている。寿命をより長期化するためにMSE蓄電池に変更することも可能である。

MSE蓄電池は公称電圧2Vであるため、24Vの電圧を得るためには12セルを連結しなければならず、REH蓄電池の倍程度の設置スペースが必要である。REH蓄電池と比較し、MSE蓄電池は納期が長くなる傾向があり、搬入据付時期によっては採用が困難になる。計画時には注意が必要である。

REH蓄電池・MSE蓄電池ともに、周囲温度25℃を超えると寿命が著しく低下する性質があり、周囲温度30℃では約70%、周囲温度40℃では約40%という大幅な寿命低下を引き起こす。

MSE蓄電池を採用し、REH蓄電池よりも1~2年の寿命を引き伸ばしたとしても、実際は温度による寿命低下で数ヶ月程度しか寿命が伸びていないということもありえる。計画時には周囲温度がどのように推移するかを確認し、期待寿命を検討するのが良い。

 
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