電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > 発電の種類・発電所からの電気の流れ
発電所から供給される電源は、数十万ボルトという高い電圧から始まる。電圧を超高圧に高めている理由は、送電損失を最小限に留めるためである。電流値は電圧に反比例するため、同じ電力を送電する場合、電圧を高くすればするほど電流が小さくなる。電流は抵抗値に応じて熱を生み出すため、この熱量分が送電のロスとなる。よって電圧を高めて電流値を限りなく0に近づければ、損失も0に近づくという考え方である。
都心部に近づくと超高圧では都合が悪くなる。街中を見渡すとわかるように、道路に建てられた電柱の上端に3本の電線が敷設されているものについては、6,600Vまで降圧された電源である。超高圧の電源は絶縁することが困難であり都心部では危険になるため、比較的低い6,600Vまで電圧を落とし、各家庭の近くまで配電している。
この高圧の電力を、家庭用として200Vや100Vに柱上変圧器で降圧して供給したり、そのまま高圧を施設内に供給している。
電気は、遠く山奥や沿岸など、都心部から比較的離れた場所に設置されている発電所で生まれ、電線によって伝えられ各所に届けられている。日本国内では、一部の山奥等を除き、電気の供給率は極めて高く、ほぼすべての場所に電気を供給している。国内では、水力発電、火力発電、原子力発電、地熱発電、新エネルギー発電の5種類が代表的発電システムとされる。
国内で生産されている電気は、火力発電・水力発電・原子力発電などを混在させ、ベストミックスという方式で供給されている。急激な変動に対応できない原子力発電をベース電力とし、負荷の変動に対応できる火力発電を使用し、大電力が突発的に必要となった場合、水力発電によってピークを賄う。
夏場は14~16時にエアコンの稼働がピークになり、冬場は朝の8~10時頃に空調機が一斉にオンである。昼間は経済活動によって大きな電力を使用しており、夜間は電力があまり使用されない。激しい変動に追従するため、色々な方式の発電設備を組み合わせて運用している。
水力発電は、山間部に数多く設置されている発電設備で水の流れでタービンを回転させ、電気を生み出す発電方式である。発電させるために使用する水は、自然を流れるものでありクリーンな発電方式といえる。
火力発電と違い、発電時に温室効果ガスの発生もなく、有害な酸化物の放出もない。日本国内は山間部が多いため、水力発電用ダムを構成する環境には有利とされる。
しかし、ダムを造ったり、山間部の水の流れを切り替えたりするなど、水力発電設備を設置するためには大規模な自然の改変が必要になるため、環境への悪影響を及ぼす。
長期間ダムを使用することにより、土砂などがダムの底部に滞留し、初期に確保できていた発電量が変動してしまったり、雨が少ないと発電能力を確保できないなど、自然の影響を強く受ける発電設備といえる。
水力発電には自流式、調整池式、貯水池式、揚水式の4種類の方式がある。
自流式水力発電設備は、自然な水の流れを水力発電設備に取り込み、タービンを回転させる方式である。自然に対する改変が少ないため、建設コストは安価である。水を貯めたり、水量調整したりしない発電方式なので、電気の生成量を調整できないのが難点である。
調整池式水力発電設備は、調整池に水を一旦貯めることで、電気が必要な時に、発電に必要な水量を開放して発電量を調整できる水力発電設備である。貯留のための施設が必要なので、自流式水力発電設備よりも高価なシステムとなる。
貯水池式水力発電設備は、河川をダムによってせき止めて大規模な貯水を行う水力発電システムである。大きな電力を安定して確保できる。調整池式水力発電方式よりも安定した大規模な電力を生み出せるが、ダムを建築するために自然に対して与えるが過大とされる。
揚水式水力発電は、上記3種類と違い、夜間の軽負荷時に電気を使用して水を高いところへ運搬し、電気を多く必要とする時間に放水して発電する方式である。重力を利用した「蓄電設備」として捉えられる。
水力発電を行うためには水車が必要である。水の位置エネルギーを発電機に効率よく伝達させるための水車として、フランシス水車・ペルトン水車・プロペラ水車・カプラン水車などが代表的である。
フランシス水車は、水の持つ圧力と速度を、ランナーと呼ばれる羽根車に伝達させて発電させる方式である。日本国内の発電方式として最も多く採用されている方式で、落差40~600mという幅広い範囲で適用できる汎用性の高さから、約70%の普及率となる。
ペルトン水車は、ノズルから吹き出す水流をランナー(羽根車)に当てて回転させる方式の水車で、水流が少なく落差が大きな場合に適している。水の圧力は利用せず、水の速度のみ利用するため、200~1,800mの大きな落差のある環境に適している。
プロペラ水車は、フランシス水車と同様に水の圧力と速度を利用する水車であるが、落差が低く水量が多い場所に適している。落差は5~80m程度が適用範囲である。プロペラ水車の羽根角度を自由に変化させ、効率変化を少なくし安定した電力供給が期待できる仕組みにしたものは「カプラン水車」と呼ぶ。
火力発電は、燃料を燃やして水を加熱し、蒸気に変換して蒸気圧等でタービンを回して発電する発電方式である。火力発電によって発生する蒸気は、冷却することで水に戻り、再度加熱されて蒸気となりタービンを回し続ける。日本国内の発電量の6割は火力発電によって賄われている。
火力発電は発電効率が良く、発電量の調整が容易なので、電力の供給量調整が可能という利点がある。代表的な発電方式には「汽力発電」「内燃力発電」「ガスタービン発電」「コンバインドサイクル発電」などがある。
火力発電を維持するためには大量の化石燃料を必要とし、これら燃料を燃焼させることにより温室効果ガスの発生、酸化物の放出など地域環境への影響が問題視されるため、再生可能エネルギーを活用した代替発電方式について研究が進められている。
汽力発電は、ボイラーによって重油やLNGを燃焼させて熱を生み出し、熱を水に与えることで蒸気に変え、その蒸気圧でタービンを回す発電方式である。安定した発電能力や発電量を確保できるので、国内でも多く普及している発電方式で、大規模の火力発電所のほとんどがこの方式である。発電効率は42~45%程度とされている。
燃料を燃やすと、燃料内部の硫黄成分が硫黄酸化物となり、大気中に放出される。これは「NOx」と呼ばれる有害な物質であり、厳しい排出基準が定められている。
NOxのほか、多量の煤塵(ばいじん)も放出され、大気汚染につながるおそれがある。電力会社など、大規模な発電施設では、燃焼温度を下げて窒素酸化物の発生量を低減さたり、脱硝装置を設けた浄化を行っている。
硫黄成分を含まないLNGを、重油に代わって使用すれば、硫黄酸化物の発生を低減できる。脱硫装置を設けての抑制も行われている。LNGは煤塵も抑制できるため、自然に優しい燃料である。
内燃力発電は、ディーゼルエンジンで発電機を回して発電する発電方式である。燃料の燃焼による高温高圧ガスを利用し、発電機を直接回して発電する方式で、建築設備分野では、自家用発電機などで利用されている非常用発電機が代表的である。
原動機と発電機がセットで組み込まれており、燃料の燃焼によって発生する高圧ガスのエネルギーを、原動機がもつクランク機構によって回転エネルギーに変換し、発電機を回転させる。クランク機構は、ピストン運動エネルギーを回転運動エネルギーに変換するための機構で、内燃力発電の最も重要な機構である。
4サイクルのディーゼルエンジンが広く用いられており、効率は45%と高い数値を維持している。始動や停止が容易なので、建築物の非常用発電機や、仮設発電機など工事用途にも用いられている。
ディーゼルエンジンは燃料消費量を増やしての出力増大に限界があり、発電能力は数十kWから数万kW程度のため、小規模な需要に限られて採用される。
ガスタービン発電は、灯油や軽油などを燃焼させ、発生した燃焼ガスでタービンを回す発電機である。ディーゼルエンジンは往復運動を回転エネルギーに変換する発電方式であるが、ガスタービン方式は、燃料の燃焼によるエネルギーを直接回転エネルギーに変換するので、クランク機構を設ける必要がなく、燃料消費量の増大に伴って、大容量の発電機が製作できるというメリットがある。
高温の排熱を放出するので、熱回収をして総合エネルギー効率を高めることが可能で、大規模な産業プラントに採用実績の多い発電機である。
しかし、ディーゼル発電機と同じエネルギーを出力する場合、その発電効率は低く、20~35%程度しかない。ディーゼル発電機と同じ能力をガスタービン発電機で対応すると、約2倍の燃料が必要となるため、数百kW程度の小型発電機でのガスタービン発電の優位性がほとんどない。
負荷変動への追従が容易で、軽負荷時の応答性や安定性が高いのがガスタービン発電機のメリットであるが、小規模な建築設備分野では、激しい負荷変動や安定性への対応はディーゼル発電機で足りることも多く、ガスタービン発電機ではなくディーゼル発電機を採用するのが一般的である。
コンバインドサイクル発電は、ガスタービン発電と汽力発電による蒸気タービンを併用した発電方式である。ガスタービンは燃焼ガスでタービンを回す方式と解説したが、燃焼ガスは非常に温度が高いため、排熱であっても、水を蒸気に変えるのに十分な熱エネルギーを維持している。
排熱を回収して、蒸気を発生させて蒸気タービンを回せば、使用した燃料を効率良く消費でき、効率向上を図ることができる。ガスタービンは比較的小型で済むため、運転や停止の即応性が高く、電力需要の変動に対応しやすいというメリットがある。
少ない燃料で、より多くの発電量を生み出すことを考えて作られた発電方式のひとつで、発電効率は47%を超える。
さらに、コンバインドサイクル発電の効率を向上させた「Advancedコンバインドサイクル発電」や「More Advanced コンバインドサイクル発電」といった技術が開発され、電力会社の発電効率向上に寄与している。これらは、燃焼ガス温度を上昇させて、50%を超える発電効率を実現している。
原子力発電は、火力発電のボイラーを原子炉に置き換えたシステムであり、化石燃料の代わりにウランを燃料とした発電設備である。ウラン235に中性子を当てると原子核が分裂し、2~3個の中性子とともに熱エネルギーを放出する。この2~3個の中性子は次々にウラン235に接触して核分裂が継続する連鎖反応が起き、大きな熱エネルギーを発生させる。
この熱量で高温高圧の蒸気を作り、タービンを回転させる。蒸気でタービンを回転させることによって電気を得るというのは、火力発電の発電方式とあまり変わらない。
ウラン235は、1gが核分裂すると約23,000kWhの熱量が発生する。この熱を蒸気で回転させるエネルギーに変換することで、大きな電力を得られる。核分裂を制御するため、中性子を吸収する「制御棒」、中性子の速度を低減させる「減速材」を使用し、核分裂をコントロールしている。
制御棒には中性子を吸収しやすいホウ素・カドミウム・ハフニウムが使われている。減速材には、重水や軽水が使用されている。
地球内部に蓄えられている地熱を利用した発電方式である。地球の中心は6,000℃もの高温度の内核があり、外核、マントル、地殻とだんだんと温度が下がるが、このうち「地下5~10km」の位置に「マグマ溜まり」と呼ばれる、1,000℃程度の熱を発生させ続けている地点がある。
このマグマ溜まりの上部で熱回収し、蒸気を発生させて蒸気タービンを回して発電する方式である。自然のエネルギーを電気に変換するシステムのため、自然エネルギー発電に分類される。
日本国内は、火山による地熱が豊富なため、十分な地熱エネルギーを確保できる。しかし、地上からマグマ溜まりの上部まで井戸を掘って熱回収を行うことになり、必要な井戸の深さは2000~3000mにもなるため、大規模な掘削工事が必要となる。
地熱発電は化石燃料を使用せず、自然エネルギーを電力に変換する方式のため、二酸化炭素の発生や有害な酸化物の生成もなく、環境にやさしいクリーンな電力とされている。
燃料を燃焼させて熱を得る方式ではなく、自然界にある熱エネルギーを利用した発電方式のため、再生が可能であり、かつ諸外国からのエネルギーの輸入に頼ることなく、自立した国産エネルギーとして注目されている。
天然の水蒸気を安定して供給できる場所は、地熱発電所として適した場所であると同時に、自然に高温の湯が得られることから温泉が設けられていることが多く、発電所の建設が困難な場所でもある。
源泉を温泉利用しているところに、発電所用として大量の熱水を汲み上げてしまうと、既存の温泉地にどんな影響を及ぼすかわからない。温泉地帯の景勝地付近に、蒸気を大量に放出させるプラント施設が設置されるというのも景観に悪影響を及ぼすとされており、地熱発電所を設置する場合は「景観を破壊しない措置」を求める法令整備も進んでいる。
景勝地として、温泉や国立公園に指定されている場合、発電所を設置することで、周辺環境への悪影響を及ぼすことが懸念され、国内での地熱発電の普及は遅く、地熱発電所の設置計画から稼働まで10年を超える期間が必要とされる。
特異性から、地熱発電による電力供給実績は、国内の総電力供給の1%にも満たない普及率となる。
地熱発電として、大規模に地中から源泉を汲み出す方式ではなく、既に汲み上げられている温泉用の源泉のうち、未使用分として海に捨てられている分の熱量を回収して発電する「温泉発電」という仕組みがある。
温泉街では、多量の温泉を汲みあげているが、これを全て利用できているわけではなく、未使用分は破棄するしかない。100℃未満の熱量では、蒸気によってタービンを回すのが困難であるが、沸点の低い水以外の媒体を利用することで、比較的低温であっても一定以上の回転エネルギーを取り出して、タービンを回転させる。
自然エネルギーを用いた発電は、作った電力が無駄なく使われるのが前提であるが、温泉維持のためのポンプやろ過装置、ホテルなどであれば空調や給湯設備が多数設置されていることが考えられ、発生した電力を無駄なく活用でき、高い効率を維持できる。
地熱発電所として大規模な施設を構えるのではなく、未使用エネルギーを分散電源として利用することも、地熱発電の普及のひとつとして期待されている。地熱発電は高い買取価格が維持されており、初期投資の高さがネックではあるものの、長期間の使用によってコスト回収は容易であり、各地で「無駄にしている温泉熱」を電力に変換することが期待されている。
新エネルギー発電は、風力発電や太陽光発電が該当する。太陽から生み出される無尽蔵の熱・光エネルギーを電気に変えるシステムが、新エネルギー発電として注目されている。「再生可能エネルギー」と呼ばれることもある。
太陽光発電は、無尽蔵に得られる太陽光をエネルギーとし、電力に変換する発電方式である。太陽光発電は、太陽電池と呼ばれる「n型シリコン」と「p型シリコン」を重ねあわせたパネルを使用した発電用パネルを利用する。
日射が太陽光パネルに当たると、プラス電荷とマイナス電荷(正孔と電子)が発生し、電流が生み出される。これに負荷を接続することで、照明を点灯させたり、ファンを回転させられる。
太陽電池によって発生する電気は直流であり、住宅の設備に接続するためには、交流の100Vに変換しなければならない。これはパワーコンディショナーと呼ばれるインバーター装置を通すことにより、直流を交流に変換し、周波数と電圧を安定させている。
太陽光発電は、発電のために燃料を燃焼させることがないためクリーンな発電が可能で、駆動部分がないため保守点検が簡易になるという利点がある。
大電力を発生させるためには広い面積が必要で、天候によって発電量がばらつき、夜間は全く発電しないという欠点があるため、太陽光パネルのみを電源として活用するのは困難である。電力安定化のために蓄電池を併用することも考えられているが、電池は高価であり、定期的な交換コストの発生や、万が一の火災に対応するための消火設備の用意など、多くの課題がある。
風力発電は、風のエネルギーで風車を回転させ発電する方式である。風力発電は風力エネルギーをプロペラの回転駆動部に伝達し、発電機を回転させることにより電力を生み出す。自然エネルギーである風力を利用しており、太陽光発電と同様に化石燃料の燃焼がなく、クリーン電力に分類できる。
風エネルギーは、太陽熱によって発生する自然現象を利用している再生可能エネルギーであり、二酸化炭素、排気ガス、酸化物の発生がない。現在では運動エネルギーの40%程度を電気エネルギーに変換できる高効率システムも確立され、海上や山間部など安定した風力を得られるなら、発電設備として利用できる。
風力を効率よく電気エネルギーに変換するため風車の形状も多数開発されている。プロペラ型風車、サボニウス型風車、ダリウス型風車、オランダ型風車が代表的な風力発電用の風車である。形状に発電効率や風の捕捉性能、騒音値が違っているため、設置場所や用途に合わせて選定する。
風力発電には数多くの問題点があり、風まかせの発電のため電力が安定しない、国内では安定した風速の確保が困難なため大電力の発電が期待できない、プロペラの回転音が騒音となる、高速で回転するプロペラで鳥の動物に接触するおそれがあるといった事案について、十分な検討が必要とされている。
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