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地絡

地絡は、絶縁されていなければならない電路が、大地と電気的に接続されることである。地絡の原因は多岐に渡り、電線が長期間利用されることによる絶縁性能の低下だけでなく、電線が物理的な損傷を受けてしまうことや、小動物に被覆をかじられるといった事象まで幅広い。

大地は電気抵抗値が少ないため、本来絶縁しなければならない電路が大地とつながる「漏電状態」となった場合は、大地を通じて変圧器まで電流が流れ、B種接地工事の接地極を通じて変圧器本体に戻ることになる。このように地絡地点から、本来の電線以外に閉回路が構築された状態が地絡状態である。

地絡は漏電とも呼ばれており、本来流れてはならない部分が充電されている状態である。これが継続していると、思いがけない場所で感電したり、漏電している経路で発熱が起こり火災につながるなど、重大な電気事故、電気災害につながる。

電路は常に絶縁されていなければならない

電路は常に絶縁されていなければならず、大地に電流が流れていない状態を維持しなければならない。「本来電気が流れてはならない部分が充電されている」状態では、わずかな電流による発熱であっても可燃物が隣接していれば発火したり、漏洩電流で感電事故を引き起こしたり、接地線や弱電線路にノイズを撒き散らし通信機器に異常を与えたりと、事故につながりやすい。

もっとも身近な、地絡による事故は感電である。一般的に用いられている各種電線は、絶縁体によって被覆されており、充電状態の電線を直接触っても感電することはない。しかし、電線のみを通過しなければならない電気が絶縁体の損傷などを原因として漏電状態になっていれば、それは感電事故につながる。

家庭用電気機器で感電事故の多いものとして洗濯機が挙げられる。洗濯機は高速回転するモーターが搭載されており、さらに多くの水を処理するという性質から、電気配線の劣化や、水による漏電事故が起きやすい。万が一の事故に備えて洗濯機には接地線(アース)を取付し、電路が漏電状態となった場合には接地線を通じて安全に漏電電流を地面に流すという措置を講じている。

このアース線が敷設されていない場合、漏電した電流が洗濯機を触った人体に通じて大地に流れ、人体に電流を流し込んでしまう。通電経路に損傷を与え、特に心臓部に電流が流れると、心室細動を引き起こし重篤な被害につながる。

コンセントに接続されたプラグとアース線の写真

漏洩電流による発熱とノイズ

漏電した電流が大地に到達するまでの経路は、電路とよく似た閉回路となる。漏電であっても、電源に対して電流は戻っていき、その経路に電気抵抗があれば熱に変化する。電流の経路に可燃物や、容易に発火する燃料といった引火物が存在すると、地絡電流による発熱を原因にして引火や発火につながることも考えられ大変危険である。

地絡が発生すると、本来「絶縁された電線のみを流れるべき電流」が、建築物を構成する金属体、鉄骨、鉄筋、大地等を通じて、いたるところに流れ込み、誘導電圧の発生によるノイズを拡散させる。このノイズは大地と接続されている接地にも到達し、接地系統がノイズで汚染されると、通信機器など半導体機器に接続されている接地線を通じて流れ込み、障害を引き起こすこともある。

電路を完全に絶縁するのは難しく、一定の微小な漏えい電流は常に発生しているが、高い絶縁性能が維持された状態であれば接触しても問題はない。しかし、配線器具や電線類は長期使用や外的損傷などを原因に絶縁性能が徐々に劣化し、漏えい電流が増加する。

漏えい電流が一定値を超過し、危険状態となっている状態は「地絡」として安全装置に認識させ、地絡まで進行した電路を遮断しなければならない。なお、絶縁性能の低下は経年劣化だけでなく、落雷や短絡などによる大電流を受けることでも発生する。

地絡した電路を放置すると、感電や火災事故につながるおそれがあるため、放置することはせず、定期的な更新や補修を行い、事故が発生しそうな電路を発見し修繕しなければならない。地絡事故を自動的に検出する装置として、地絡継電器や漏電遮断器があり、これらを用いて、漏電した電路を健全な電路から切り離している。

電路にどれだけの漏洩電流が発生しているかを確認する装置として絶縁監視装置がある。常時絶縁監視することにより、電路が地絡していないか、または地絡に近い状態になっていないかを数値で判断できるため、安全性の向上につながる。設置コストは高いが、広く採用されている安全装置のひとつである。

高圧電路の地絡と地絡保護

高圧の電路が地絡した場合、大地に流れる電圧や電流が非常に大きくなり、低圧の漏電よりも危険性が高いため地絡を速やかに除去しなければならない。低圧電路の地絡は電路に直接挟み込む漏電遮断器によって対応できるが、高圧電路に直接設けて、地絡電流を直接切り離すといった簡易な方法ではなく、「地絡継電器」と呼ばれる漏電検出の保護リレーを用い、真空遮断器といった高圧専用の遮断器を動作させることで事故回路を開放する。

地絡継電器を単線結線図などで表現する場合、「GR」と表現する。地絡継電器が地絡状態を検出した場合、その信号を真空遮断器の保護装置に送信して、事故回路を開放する。

電路は、必ず行きと帰りの電流が流れるため、その行き帰りの電流値を測定し、数値に違いがあった場合は「電流の一部が大地に漏洩している」と判断できる。この特性を利用して、電流の差を検出して信号を発信するのが地絡継電器や漏電遮断器の仕組みである。地絡継電器からの信号を受け、遮断器を動作させることで電路を切り離す。

漏電遮断器による低圧電路の地絡保護

低圧電路の地絡保護は、漏電遮断器を使用して電路を切り離すのが一般的である。水気のある場所や、雨や湿気により絶縁抵抗が低くなりやすい場所への電源供給を行う回路では、水濡れや湿気により絶縁性能の低下が発生しやすく、地絡に進行しやすい場所のため漏電遮断器による安全対策が必須である。電気機器をこのような場所に設ける場合は、漏電遮断器を使用して地絡保護を行わなければならない。

漏電遮断器の動作原理も地絡継電器と同様、行き帰りの電流値の違いを地絡電流と判断している。

地絡から電路を保護する地絡継電器の詳細については過電流継電器・地絡継電器・地絡方向継電器の保護協調を参照。

 
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