過電流継電器・地絡継電器・地絡方向継電器の保護協調

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保護協調の考え方と概要

電気設備設計の業務として、需要家内の高圧受変電設備を安全に運用するための設計がある。ここでは各種継電器の選定方法や、保護協調曲線の考え方、受変電設備を構成する機器の特徴等を簡単に解説する。

電気回路に過電流や短絡地絡、過電圧や不足電圧の異常があった場合、遮断器や電力ヒューズが適切な設定を維持していなければ、電気回路を保護できない。

電気回路の保護協調は、電気回路に発生した事故を直ちに電源回路から切り離し、事故の拡大を最小限とするために行う。遮断器や電力ヒューズによって事故回路を遮断し、健全な回路の遮断器やヒューズが動作しないように協調を図り、負荷機器や電路が損傷しないように継電器類の動作特性を調整する。

高圧系統で事故が発生すると、接続されている低圧の電気系統だけでなく、電力会社側の配電用変電所の遮断器まで動作させてしまうおそれがあり、周辺地域一体の停電を引き起こす。これは波及事故といい、停電させてしまった他需要化への損害賠償責任のほか、経済産業省への事故報告の義務を負う。

保護協調を行う場合、電力会社との協議を行い、慎重な計画を行うのが望まれる。保護協調の原則は「確実に」「速やかに」「被害を最小限に」保護する必要があるが、過剰設備とならないよう「安価に」機能を満足することが求められる。

過電流継電器(OCR)

過電流継電器は高圧の電路で発生した短絡事故や、系統負荷が過負荷状態になった状態を検出し、動作する継電器である。

低圧電路では、配線用遮断器の本体に過電流を検出する機構が搭載されているため、外付けの過電流検出機構は不要であるが、高圧系統では流れる事故電流を遮断器本体で検出はできず、過電流継電器を設けて事故電流を検出し、その信号を用いて高圧遮断器を動作させるのが基本となる。

限時要素

短絡や突入電流といった瞬間的な大電流ではなく、負荷の同時運転や空調機の過負荷などによって発生する電流値の増加を監視し、定格電流を長時間に渡って超えるなど、危険領域に達したことを検出して信号を発信する機能である。

定格電流を超える電流が系統に発生した場合、その電流値の大きさに応じて動作する。大きな電流が流れるほど早く遮断するという特性があり、電線の焼損や機器類の異常過熱を防止する。

限時要素では、下位の系統ほど速く動作するように「タップ」と「レバー」を設定する。

タップとは、CTを経由して検出する電流値を、どの比率で使用するかを設定するための機構である。「400/5A」という設定のCTに接続されているOCRであれば、400/5×1=80A の検出を行うのが「タップ1」である。タップを2にすれば 400/5×2=160A の設定となる。最大であるタップ5に設定すると、400/5×5=400A となる。

レバーとは、タップで設定した電流値を基準に、何倍の電流値が流れた際に何秒出動作にするかを設定するための機構である。普通限時や強反限時特性など、多様な特性カーブがあり、保護協調曲線を作図して、事故発生時に全ての電気機器が安全に切り離されることを確認する。

普通反限時特性は、始動電流によって動作しないように特性カーブが横向きに寝たような動作グラフになる。始動電流が大きいモーター類には良い特性であるが、過負荷に弱い機器に採用すると遮断が遅くなるため、設定が難しい。

超反限時特性のOCRはグラフが縦に立ちあがった形状のため、過負荷に対しての反応が早い。比較的長い時間に渡り大きな電流が流れる「電動機の始動電流」で誤動作する可能性があるため、モーター類の過負荷保護には不向きである。

タップとレバーを設定し、保護協調曲線を作成することで、設備全体の協調状況を確認できる。例として、過負荷が発生した場合に電力会社側のOCRが3秒で動作する設定となっている場合、需要家側が3秒を超える時間で遮断される設定では、電力会社側の給電が先に停止し、波及事故となってしまう。

受変電設備は「カスケード遮断」が原則である。カスケード遮断は、事故が発生した電気系統において、下位の設備から順に遮断するよう設定し、停電範囲をできる限り小さく抑えるという仕組みである。カスケード遮断を考える場合、下位に接続される設備ほど、速く遮断されなければならない。協調が適正になるまで、タップやレバー、場合によっては限時特性を変更して、協調曲線を見直していく。

瞬時要素

短絡事故の場合、定格電流の10倍・20倍にもなる大電流が瞬間的に流れる。電流はジュール熱となるため、すぐに遮断しないと電線や機器が焼損する大事故につながる。瞬間的な電流値の上昇を監視しているのが瞬時要素である。継電器本体には「INST」という文字が記載されており「20・30・40…」と倍数表示がされている。

瞬時要素は、限時要素で決めたタップ値で算出される電流値の倍数となる。タップ値から算出された電流値に、瞬時要素の20や30という数値を掛けた数値が瞬時遮断電流である。「CT比400/5A・タップ5・瞬時40」とすると、400/5×(5/5)×40 = 3,200A が瞬時要素の動作電流値である。

瞬時要素を決定する際に問題になるのが、変圧器の励磁突入電流である。励磁突入電流とは、通電していない変圧器に電源を投入した瞬間から数秒間、定格電流の10倍前後の大電流が波打つように流れる現象である。この励磁突入電流で過電流継電器が動作すると、変圧器に通電できない。

励磁突入電流は、多数の変圧器が並列している場合に問題である。変圧器一台ずつを手動で通電するなら大きな突入電流は発生しないが、中央監視による自動停復電制御でVCBによる一斉投入する場合、投入した瞬間に過電流となり、変圧器を多数接続している上位の過電流継電器が動作する。

瞬時要素の設定は、短絡電流では確実に動作し、変圧器の励磁突入電流では動作しないように設定する。需要家側の過電流継電器の設定は、電力会社の限時・瞬時要素よりも早く動作するのが原則である。

保護協調を間違えた状態で運用し事故発生となると、電力会社配電線の停電につながり、波及事故扱いとなり損害賠償問題に発展する。

既存改修や設備増強工事においては、新旧の過電流継電器が混在していたり、動作特性が違う過電流継電器との保護協調が重要である。

誘導形と静止形の過電流継電器

従来の過電流継電器では、誘導円板や軸受け、コイルなどが内蔵された「誘導型」が使用されてきた。誘導形継電器は振動に弱く、衝撃や地震によって動作するという欠点があった。可動部の劣化が速く、寿命が短いという欠点もある。

現在の新築または新設の案件においては、ほぼ全て「静止形」の継電器が用いられる。

静止型の過電流継電器は、円盤など可動部が一切無く、トランジスタが動作要素に使用されている。振動の影響もなく、可動部劣化という心配もない。誘導形よりも動作範囲の誤差を小さく抑えられるので、設備の信頼性向上を図れるなど、数多くの利点がある。

地絡継電器(GR)

地絡継電器は、高圧系統に発生した地絡事故を保護するための継電器である。

高圧ケーブルや高圧機器が損傷・劣化し、大地と電路が接続されてしまうことを地絡と呼び、一般に「漏電」とも呼ばれる。地絡事故も短絡事故と同様に早急に取り除かなければならない。

漏電状態を放置すると、漏洩電流による発熱で火災を引き起こしたり、人体への感電事故につながるなど大変危険である。

地絡保護についても、過電流継電器と同様に電力会社の設定値よりも速く動作する設定にしなければ、大規模停電に波及するおそれがある。波及事故を防止するため、保護協調を検討する。

地絡継電器の動作の仕組み

高圧用の地絡継電器は、低圧用の漏電遮断器と同様、行きと帰りの電流比較をして動作する。零相変流器(ZCT)を使用して漏洩電流を検知し、行き帰りの電流値に違いがあれば、一部の電流が大地に漏洩していると判断して信号を送信する。

電力会社が「0.6Aの漏洩の検知により送電停止」という運用をしている場合、需要家が0.6Aを超える電流値に設定すると、需要家より先に電力会社が停電する。これでは保護協調不良である。需要家側は原則0.4A以下とするが、一般的には100~200mAとするのが良い。

地絡継電器は、単純な漏洩電流値のみで事故検出を行う。これは他の需要家から事故電流が流れこんだ場合でも動作してしまうおそれがあり「もらい事故」による誤検出の原因となる。他の需要家からの事故電流が流れこむおそれがある場合、地絡継電器ではなく、地絡方向継電器(DGR)を採用する。

地絡方向継電器(DGR)

地絡継電器では、漏洩した電流値のみを検出しており、電源側から流れてきた事故電流なのか、負荷側から戻ってきた電流なのかを判別していない。高圧ケーブルのこう長が長く、充電電流が大きくなる場合、電源側から流れる事故電流以外で地絡継電器が反応してしまい、誤動作の可能性がある。

ケーブルのこう長が長い計画にあっては、地絡電流の方向性を検出できる「地絡方向継電器(DGR)」を採用する。地絡方向継電器は地絡電流だけでなく電圧の位相を同時に検出し、事故電流の方向が違う場合には動作しないよう設定されている。

地絡方向継電器の選定

高圧ケーブルのこう長が長い需要家で、もらい事故の可能性が高まる。一般的には下記に示したケーブル長さがある場合、地絡継電器では保護できないとされる。数値は地絡継電器の動作を0.2Aに整定した場合の参考値である。

  • 6.6kV CV-3C 8sq 135m以上
  • 6.6kV CV-3C 14sq 115m以上
  • 6.6kV CV-3C 22sq 100m以上
  • 6.6kV CV-3C 38sq  85m以上
  • 6.6kV CV-3C 60sq  70m以上
  • 6.6kV CV-3C 100sq  60m以上
  • 6.6kV CV-3C 150sq  50m以上
  • 6.6kV CV-3C 200sq  50m以上
  • 6.6kV CV-3C 250sq  50m以上

このケーブルこう長は、地絡継電器であっても誤動作しないことが保障されている数値ではない。ケーブルの静電容量による充電電流の大小によって常に変動するため、極めて短距離の高圧ケーブル敷設でない限り、地絡方向継電器を設けるのが安全である。

なお引込点に設置する高圧気中開閉器(PAS)や、地中引込用のUGSは、地絡方向継電器付きの製品がある。引込点と受変電設備は離れた場所に設置されることが多く、地絡方向継電器付きを選定するのが一般的である。

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