サージ電圧
サージ電圧の概要と性質
サージ電圧とは、電気回路において定常的に流れている電圧・電流波形に対し、瞬間的に重畳して発生する過渡的な異常高電圧のことである。
このスパイク状の電圧は、定格電圧を遥かに超えるエネルギーを持つ場合があり、機器の絶縁破壊や、耐電圧の低い半導体素子(IC、トランジスタ等)の焼損を引き起こす主原因となる。電気設備管理においては、この「見えない衝撃」から機器をどのように守るかが重要である。
発生要因による主な分類
サージ電圧は、その発生原因によって大きく以下の3つに分類される。
- 雷サージ(誘導雷):落雷地点周辺の電線や通信線に、強力な電磁界によって発生する誘導電圧。数千から数万Vに達し、外部から配線を通じて建物内に侵入するため、被害規模が最も大きい。
- 開閉サージ:スイッチや遮断器のON/OFF、特にコイルやモータなどの誘導性負荷を開放した際に発生する逆起電力によるもの。回路内部で発生し、接点の消耗や電子回路の誤動作を招く。
- 静電気放電(ESD):人体や物体に帯電した静電気が放電する際のサージ。エネルギーは小さいが電圧は高く、電子機器の製造・組立工程において半導体素子を破壊する主要因となる。
機器への影響と破壊モード
近年の電子機器は小型化・省電力化が進み、内部回路の集積度が高まっているため、サージ電圧に対する耐性は低下傾向にある。
サージが侵入すると、基板上の配線パターンが溶断したり、半導体接合部が熱破壊を起こしたりする。これらは「完全故障」となるだけでなく、素子にダメージを蓄積させ、後の故障原因となる「潜在的な劣化」を引き起こす場合もあるため、繰り返しサージを受ける環境では特に注意が必要である。
保護対策:侵入阻止とバイパス
サージ電圧から機器を保護するためには、以下の対策を適切に組み合わせる必要がある。
SPD(サージ防護デバイス)の設置を検討する。例として、サージアレスタやバリスタと呼ばれる素子を回路に並列に設置する。通常時は絶縁状態だが、サージ電圧が加わると瞬時に導通して抵抗値を下げ、過大な電流を接地線へ逃がすことで、機器にかかる電圧を抑制する。
雷サージ対策においては、SPDがバイパスした電流をスムーズに大地へ逃がすため、接地抵抗値を低く保つことが不可欠である。また、静電気対策としては、作業エリアの導電性マット敷設、リストストラップの着用、加湿による帯電防止など、環境面からのアプローチが有効である。
落雷によるサージ対策や、避雷器についての詳細は避雷器の原理・接地を参照。












