避雷器の原理・接地 | アレスタ(LA)の選定方法・バリスタとの違い

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避雷器(LA)・アレスタ

避雷器は、落雷時に構内へ侵入してくる異常電圧や、負荷開閉時に発生する開閉サージの異常電圧を抑制させるために設置する。引込口近くに設置し、雷撃・回路開閉に起因する異常電圧を大地に放電させ、電気機器の絶縁を保護する役割を持っている。避雷器はアレスタという名称でも呼ばれている。

雷撃は、衝撃を伴う過電圧や過電流を発生させるので、電気設備に多大な悪影響を及ぼす。避雷器は、雷サージによって発生する「衝撃を伴なう過電圧」を抑制し、電気設備の絶縁を保護し、続流を速やかに遮断するという保護機能を持っている。

雷サージを避雷器によって大地にバイパスすることで、電気機器に異常電圧が印加されず、絶縁の劣化が抑制可能である。

避雷器の構成

避雷器は気中ギャップと呼ばれる隙間と、特性要素という抵抗で構成されている。通常時の電圧は、気中ギャップがあるため電圧が加わることがないが、雷撃の異常電圧が発生した瞬間、気中ギャップに電圧が印加され、大地に異常電圧を放流する。

特性要素は、非直線である電圧-電流特性を利用し、放電時は大電流を通過させ、放電後は続流を阻止するという特徴を持っており、落雷や開閉による大電流を効率的に大地へバイパスでき、かつ続流は短時間で遮断されるため電路は正規状態を保つことができる。

避雷器は、誘導雷サージや開閉サージ、小規模の直撃雷サージには効果を発揮するが、大電流・高電圧を伴なう直撃雷サージの場合、放電耐量によっては破損してしまうことがあるので、選定には注意が必要である。

高圧避雷器の写真

避雷器の種類

避雷器にはギャップ付避雷器と、ギャップレス避雷器がある。現在はギャップレス避雷器が主流で、広く使用されている。

ギャップ付避雷器

ギャップ付避雷器は、続流を抑制する阻止と、続流を遮断する直列ギャップが接続されており、気密された「碍管」に収容されている。雷サージが流れて直列ギャップが放電すると、素子に放電電流が流れ、電路と大地を電気的接続状態にすることで異常電圧を抑制する。

直列ギャップは、急激に変化するサージ電圧では放電漏れなどを発生させ、適切な保護ができないおそれがある。一度ギャップが放電を開始すると、サージ電流の続流が流れ続けるので、雷サージの特性によっては続流遮断失敗のおそれが懸念される。

ギャップレス避雷器

ギャップレス避雷器は直列ギャップを使用しないもので、放電耐量が大きく、定格電流は5,000A~10,000Aまで対応可能である。ギャップレス避雷器は、ZnO素子という、電圧 - 電流特性(非直線特性)が優れた素子が使用されている。

通常の運転電圧では絶縁体となるため、数μAの電流しか流れない。

大地に電流が流れてしまう心配がないため、直列ギャップなしの計画が可能である。弁抵抗形やPバルブ形、酸化亜鉛形などいくつかの製品があるが、特性が優れている酸化亜鉛形の避雷器が主流である。

避雷器の設置基準・選定方法

受電電力が500kW以上の需要家に設置する。PASやUGS等に内蔵された機種があるため、それを選定することで代替とできる。500kW未満の需要家であったとしても、雷害の多い地域に受変電設備を設置する場合、設備信頼度を高めるために、避雷器を設置することが望まれる。

避雷器は、雷サージが侵入するおそれがある場所に設置する。避雷器と受電機器との距離が離れてしまうと、避雷器の性能が低下してしまうため、できる限り受電点近傍に設置すると良い。

避雷器の定格電圧は4.2kVと8.4kVがあるが、公称電圧3.3kVの電路では4.2kVを、公称電圧6.6kVの電路では8.4kVの製品を選定すれば良い。6.6kVで受電する需要家の場合、配電線路に発生する異常電流のほとんどが1,000A以下であるため、放電電流2,500Aの製品が広く使用されている。しかし、雷害が多いと認められる場所であれば、5,000Aの避雷器を設置すると、安全性が一層高まる。

避雷器の制限電圧

高圧配電系統を保護する避雷器は、制限電圧33kW以下に設定されており、公称放電電流の値により、28kW・30kV・33kVが規定されている。雷害は地域によって頻度が違い、雷雨日数分布が「IKLマップ」という指標で明示されている。

電気設備技術基準では、最大電力500kW未満の需要家においては、避雷器の設置を義務付けていない。しかし、避雷器がなければ落雷によるサージがそのまま電気設備に流入し、機器が破損される。多雷地区では、どのような規模の受電設備でも、避雷器を設置するのが望まれる。

避雷器と高圧機器の離隔距離

避雷器は、雷サージが侵入するおそれがある部分に設置するので、一般的には受電点になる引込口に設置する。避雷器と開閉器はできるだけ直近に設置すべきである。

避雷器と保護すべき高圧機器との距離が長い場合、避雷器が有効に働かないことがある。避雷器を内蔵したPASであれば、避雷器と高圧機器が同じ場所となり、より安全性が高い。

避雷器による異常電圧抑制とインピーダンスの関係

避雷器は、雷サージを放電させる際の異常電圧を抑制する機能が求められる。接続機器の異常電圧発生を抑制するには、避雷器から大地までの接地抵抗値を、できる限り低く抑えるのが効果的である。

電気設備技術基準では、10Ω以下のA種接地工事を施すことが規定されているが、10Ωよりも小さな値にすることで、異常電圧の発生をより抑制できる。

接地線のインピーダンスが大きくなると、異常発生時の電圧がより高くなってしまい、雷サージが発生した際に保護すべき電気設備でフラッシュオーバにつながる。接地抵抗値を低く抑えるため、避雷器から大地までのインピーダンスを小さく設計しなければならない。

大地までのインピーダンスを低く抑えるには、接地線のサイズを大きくするか、接地線の敷設距離を短くする方法を採用すると良い。

同一接地と専用接地

避雷器の接地は、保護する機器と共通の接地を使用するのを基本とする。インピーダンスを低減させるため、避雷器の接地端子から、保護対象の接地端子まで、最短距離で接続することが望まれる。

接地線が長くなると、接地線の距離に比例してインピーダンスが大きくなってしまい、電位差が発生して適正な保護ができない。避雷器の接地と保護対象の接地を別にすると、保護不能になるため、必ず同一の接地を確保するべきである。

避雷器には、専用接地としてA種接地工事を施す必要がある。建物の保安用接地と共用すると、サージが流入するおそれがあるので、避雷器専用の接地を敷設するのが良い。

バリスタによる雷サージ保護

接地極の施工を伴う避雷器の取り付けは極めて大掛かりな工事となる。既存のコンセントなどに対して、簡易に雷対策を行う方法として、雷サージをカットする機能を搭載したガードタップや、雷保護装置が内蔵されたUPSなどの電源装置を経由する方法がある。

対策が施されていないコンセント回路に雷サージが侵入すると、通常時には100~200Vという安定した電圧が供給されている電路が、瞬時に数千ボルト上昇する。このコンセント回路全体の電位により、接続された電気機器に数千ボルトが印加され、絶縁破壊による故障を引き起こす。半導体部品が多いパソコン等の機器は、高電圧に弱いため特に故障率が高い。

雷サージを起因とする絶縁破壊を防止するための装置として、「バリスタ」がある。バリスタは、簡易に雷保護対策を行うための保護装置で、ガードタップのような民生品にも多く搭載されている。

バリスタの仕組み

バリスタは、回路に並列に接続して使用する。通常時は高抵抗の素子により電気を流さないようになっており、雷サージが到達した瞬間だけ電気抵抗を低くして電路を短絡状態とし、雷サージを機器に到達させないという機能を持つ。

一般的に発生する小規模な雷サージであれば保護成功の可能性が高いが、直近で落雷が発生し高電圧が流入した場合は、サージ耐量を超えることにより性能劣化を引き起こすおそれがある。

家庭用ガードタップでは、繰り返し高電圧が印加された場合、機能を失うおそれがあると注意書きがなされている。劣化したバリスタでは、雷サージに対しての保護機能が失われた状態となるため、機器本体の交換が推奨される。

バリスタに温度ヒューズが内蔵されている製品では、雷サージによって異常過熱した場合に、ヒューズを溶断させる場合がある。温度ヒューズが溶断した製品は、使用不能となるため交換を要する。

 
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