親子時計
設備時計(親子時計)の基本構成と導入目的
親子時計は、基準となる時刻を管理する「親時計」と、親時計から送信される電気信号(駆動パルス)によって時刻を表示する複数台の「子時計」で構成される有線式の電気時計設備である。建築設備においては一般に「設備時計」と呼称される。
すべての個室や廊下でまったく同一の時刻を示すことが最大の機能であり、授業のチャイムに合わせて行動する学校や、投薬・検査の時刻を厳格に管理する病院、ダイヤグラムに基づいて運行される鉄道駅など、施設全体で秒単位の確実な時刻同期が求められる建築物に採用される。
単独型電波時計に対する有線方式の優位性
市販の単独型電波時計(標準電波を受信して時刻を補正する時計)であっても時刻合わせは可能であるが、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)などの堅牢な建築物内部では、外部からの電波が遮蔽されて受信不良に陥りやすい。受信状況のばらつきにより、隣接する部屋の間で時計の指示時刻に数秒から数十秒のずれが生じるおそれがある。
有線式の親子時計設備であれば、親時計が正確な時刻を保持し、物理的な専用配線を通じてすべての子時計を強制的に一斉駆動させるため、電波の到達度に関わらず施設内の表示時刻が完全に一致する。時刻のずれを許容できない用途においては、有線式の計画を標準とすると良い。
親時計の時刻同期(タイムサーバー)方式
親時計自身が高い精度を維持するためには、内蔵の水晶発振器に加え、外部の正確な時刻情報源と定期的に同期を行う必要がある。設置される施設の環境やネットワークインフラの状況に応じて、最も合理的で安定した時刻合わせ方式を選定する。
- NTP方式:構内LANやインターネット上のNTPサーバー(タイムサーバー)と通信し、時刻を同期する。アンテナの屋外設置が不要であり、現代の建築物において最も広く採用される。
- GPS方式:GPS衛星から送信される衛星電波(1575.42MHz)を受信して同期する。極めて高精度であるが、上空に開けた屋上などに専用のGPSアンテナを設置し、親時計まで同軸ケーブルを配線する必要がある。
- 長波標準電波方式:情報通信研究機構が送信する標準電波JJY(40kHzまたは60kHz)を受信する。アンテナの設置場所が建物の影響を受けやすいため、事前の電波到達調査が求められる。
- FMラジオ電波方式:NHK-FM放送の時報信号(76〜90MHz)を利用する。地下室など標準電波が届かない場所でも、既存のテレビ・FM共同受信設備を流用して時刻同期が行える。
子時計の駆動方式と有極パルス
親時計から子時計へは、直流24V(DC24V)の「有極パルス」と呼ばれる電気信号が有線で送信される。建築設備において一般的な仕様は「30秒運針」であり、30秒ごとに1回、約0.5秒間のパルス電圧が親時計から印加される。このパルスを受信するたびに、子時計内部のステッピングモーターが回転し、長針が半メモリ(30秒分)進む。
有極パルスの特徴は、信号が送られるたびにプラスとマイナスの極性が交互に反転することである。極性が反転することでモーター内のローターが一定方向へ正確に回転を続ける仕組みとなっており、外部からの電気ノイズによる誤動作を防ぐ効果も持っている。なお、秒針を備えた子時計の場合は「1秒運針」の専用パルス回路が用いられる。
配線計画における電圧降下と接続台数の制限
親子時計の配線には、一般的にAE線(警報用ポリエチレン絶縁ケーブル)の1.2mmや0.9mm、あるいはCPEVケーブルなどの2芯線が使用される。子時計はすべて親時計の駆動回路に対して並列に接続される(送り配線方式)。
設計上の留意点として、1系統の配線長が長くなりすぎると、電線の電気抵抗による電圧降下が発生し、末端の子時計がパルス電圧不足に陥り運針不良を起こす。また、親時計の駆動回路には1系統あたりの最大出力電流が定められている。子時計1台あたりの消費電流を積算し、規定の電流値を超えないよう複数の系統に分割して配線計画を行う必要がある。












