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設備時計は、有線によって電源を供給し駆動する時計設備のひとつである。建築物だけでなく、公園やプールなどにも用いられる。電池を搭載した時計とは違い、電源供給は有線で行なわれ、複数の時計を遠隔で設定したり、時刻の変更が可能となっている。
1台の親時計に対し、親時計から発信されるパルスによって運針する子時計、付帯する電源や配線などで構成されている。特殊なものとしては、花時計や噴水時計、モーニングコール、手術時計、塔時計なども設備時計の一種である。
設備時計の親時計で管理される子時計は、すべて同じ時間を示す。時計にはそれぞれ固有の誤差があるため、子時計を全て独立させてしまうと時間経過に伴って数秒単位の誤差が発生し、それぞれの時間合わせが大変煩雑となる。
多数の時計を設置する場合、防災センターや管理室に親時計を設置し、子時計すべての設定を一括調整する計画とすべきである。親時計に蓄電池を搭載した機種であれば、施設内が停電した場合でも、数時間から数日に渡って時間設定が保持される。
放送局用の標準時計装置など、高精度を求められるような特殊用途での時計設備の場合では、極めて正確な時間合わせが必要であり、常にJST日本標準時に時刻を合わせ続けなければならない。
時刻合わせをする方法は、FM電波や長波電波の不安定なものではなく、タイムサーバとネットワーク回線を用いて時刻合わせをする方法を基本としている。
時間を刻むための周波数発振装置については、水晶時計ではなくルビジウム原子の共鳴を利用したものを使用すると、水晶時計よりも2桁以上高い安定度を確保できる。水晶時計が約900,000秒に1秒ずれるとされているが、ルビジウム式は約100,000,000秒に1秒のずれ( 約0.3秒/年のずれ )まで、誤差を小さくできる。
標準電波の電波発信所では、極めて高精度の時刻を要求されるため、原子時計が設置されている。原子時計は非常に高価であり、放送局や発信局などの用途でなければ、採用されることはない。
一般的な設備時計は、水晶時計(クォーツ時計)が選定される。水晶時計の時間精度は比較的悪く、0.7秒/週程度でずれるため、時刻合わせのシステムを併設するのを基本とする。時間のずれを放置すると、設備の運用にも支障が発生するため、何らかの方法で時刻を補正しなければならない。
FM電波による時刻修正や、長波電波による修正機能を設備時計に搭載し、自動で時刻補正させることにより、時間的なズレを極めて小さくできる。
標準時刻情報を電波によって受信して時刻合わせをする時計を、電波時計と呼ぶ。電波時計は、設備時計に限らず、腕時計や掛け時計などでも標準的に装備されている仕様であり、価格も非常に低く抑えられているため、建築設備用ではなく個人用としても広く普及している。
設備時計は、本体内に高精度年間プログラムタイマーが内蔵されており、多くのプログラムを組み込む事ができる。パソコンに接続し、USB端子接続によってプログラム設定ができるなど、ユーザーインターフェースの工場が図られている。
FMラジオによる電波時刻修正なども装備でき、時間のズレに対する補正もオートメーション化されている。
電気時計は設定プログラムに応じて、独立接点(メイク接点)を出力できる。設定した時間に照明をオンオフしたり、空調機の発停を行うといった中央監視設備的な動作をすることも可能である。チャイム出力接点などを持っている機種であれば、放送設備を設置せず、簡易にBGMを流す機能もある。
設備時計を選定する場合、停電保証機能付とするのが良い。長時間停電した場合は停電復帰後に調針を行うことになるが、電波時計機能を持っている機種であれば、自動的に調針できる。
設備時計には、親時計と子時計で構成される親子式と、子時計のみで構成される単独式の二種類の構成がある。
時刻の基準となる親時計を防災センターや管理室に配置し、必要な各所に子時計を設置する方式である。親時計によって時刻を管理し集中制御するので、全ての設備時計の時刻を統一できるのが特徴である。
学校用途であれば、校舎の上部にグラウンドなどから見える大型子時計を設け、防災センターや管理室から遠隔による時刻合わせを行っている。高所設置の大型時計は、駆動のための電力が大きいため電池では動作できず、かつ時刻合わせも危険を伴うため、配線を用いたシステムが合理的である。
体育館の高所に取り付けられることの多い大型時計も同様に、親時計に制御された子時計であり、配線によって電源供給されている。これも、親時計から時刻設定を行えるため、時刻の統一や調整が可能である。
親時計については、1回路程度の小型システムから、数十回路を持つ自立式ラック搭載の大規模システムまで、幅広く構成できる。設備時計を設計する場合、1回路に接続できる子時計の台数に制限があるので、時計の回路数と時計台数に必要系統を算出する。
親時計を選定する際は、電波による時計合わせ機能の有無、停電補償用の予備電源の有無などを計画し機種を選定する。停電補償用電池は、約5年程度で寿命となるため、定期的な電池交換が必要となる。
子時計は、親時計からパルス信号を受信し、ロータやパルスモーターによって駆動する。電圧は一般的に12Vや24Vで、子時計への単独電源は基本的に不要である。親子式電気時計設備は、親時計の時刻表示を一定時間のパルス信号で一斉運針するもので、子時計は親時計と同じ表示となる。
回路毎に子時計を一斉に進めたり、遅らせたりすることも容易に対応できる。
親時計を持たず、子時計単独で運用する時計方式である。街路灯に併設した時計や、公園の花時計では、単独式設備時計のシステムが採用されている。電波時計となっており、時刻合わせはFM電波を利用し、自動修正させるシステムがほとんどである。
時計を設ける場合、目視する位置からの距離に応じて時計サイズを選定する。一般的なサイズとして、離隔距離10~20mで300φ(教室)、30mで400φ(会議室)、40mで400φ(講堂)、60mで600φ(プール)、140mで900φ(校舎)、180mで1000φ(校舎)程度とされている。
タイムサーバは、インターネット回線やGPS、電話などの時刻情報をネットワーク化し、タイムサーバーにアクセスすることで時刻合わせを行うシステムである。同一のタイムサーバーにアクセスすることで、接続されたシステムは全て同じ時刻が表示できる。
タイムサーバはPC類だけでなく、放送設備、自動火災報知設備、セキュリティ・監視カメラ設備など、多くの設備に対応している。
建築設備に搭載されている時刻合わせ方式は、各々が独自のシステムを構築している。電波時計を内蔵しているものや、外部タイムサーバに通信するものなど多岐に渡る。
時刻の同期方法が違っても、表示される時刻がまったく同じであれば運用に支障はないが、時刻設定を一元管理し、時刻のずれを確実に防止したいのであれば、タイムサーバの導入が推奨される。
タイムサーバによる時刻補正は、GPSアンテナ、標準電波(長波JJY)、地上デジタル信号、NHK-FM信号などによって時刻情報を受信し、NTPやSNTPといったプロトコルで時刻情報を提供する。タイムサーバーがGPSアンテナ方式や標準電波方式であれば、インターネットに接続することがないため、セキュリティ上、外部に接続できないネットワーク機器の時刻合わせに使用すると良い。タイムサーバーにはそれぞれ時刻合わせのための入力が備えられており、GPSやFM信号などいくつかの入力が可能となっている。
電波時計とは、電波送信所から送られてくる標準電波を受信し、自動で時刻補正を行う時計である。掛時計や目覚まし時計など、個人用の時計に付属する機能として広く普及している。電波時計は定期的に時刻情報を電波として受信し、時刻合わせを自動的に行うことができる時計である。
日本国内では電波時計を用いて、JST(日本標準時)の時刻に自動的に合わせることができる。電波時計には電波発信局からの信号を受信する受信機が内蔵されており、その信号を受信し時刻情報を取得して時刻合わせが行われる。日本国内では東京都小金井市の「NICT」で日本標準時が作られており、原子時計など超高精度の時計によって正確な時刻が生み出され、その信号が山頂の送信所から日本全国に送信・供給されている。
JSTはセシウム電子時計を組み合わせた時計群によって誤差を小さくし、さらに衛生を用いて世界標準時であるUTCとも同期させながら時刻を調整している。原子時計など超高精度の時計を用いて合わせられた時刻データを定期的に受信することで、時刻合わせを行うのが電波時計の基本的な考え方となる。
電波時計は腕時計、掛け時計など多種多様なシステムに組み込むことができるため、比較的精度の低いクォーツ式の時計であっても、時刻合わせを定期的に行うことで時刻補正が行われ、時刻のズレを防止することができる。電波を受信できる場所であることが条件であるが、国内のほぼすべての場所に対して電波が網羅されているため電波受信に支障ないが、建物内の場所によっては電波が阻害され、時計に電波が届かないことがある。このような環境では電波時計であっても時刻がずれてしまう。
また、時刻合わせによる電波受信は電気エネルギーを使うため、電池が寿命間近となっている場合も電波時計の機能を停止することがある。電波時計がずれてしまう場合、電波が受信できる場所であるか、電池が不足していないかを確認すると良い。
東日本では、福島県にある大鷹鳥谷山(おおたかどややま)山頂付近に設置された電波送信所から、周波数40kHzで発信される標準電波を受信し、電波時計の時刻合わせを行っている。
西日本の場合は、福岡県にある羽金山(はがねやま)山頂付近の電波送信所から、周波数60kHzで発信される標準電波を受信し、電波時計の時刻合わせを行っている。
電波受信範囲は、送信所から約1,000kmの範囲とされているため、日本国内は一部の離島を除いて全て包含しており、どの場所でも時刻補正が可能になる。受信可能な場所であっても、天候不順であったり、建物が周囲に密集していたりすると正常に受信できないことがある。
標準電波とは、時・分・1月1日からの通算日・西暦の下2桁・曜日のことで、これが電波送信所から発信され、この情報を元にして時刻修正を行うシステムとなる。
電波時計の時刻補正は、時計を見ることの少ない深夜に行われることが多く、頻度は1日に1回程度である。水晶時計(クォーツ時計)の場合、高性能なもので900,000秒に1秒のずれであり、日数に換算すると、900,000 / 60×60×24 = 10.42日 となる。10日に1秒のずれであり、1日1回の時刻補正で十分である。
メーカーでは、1ヶ月に15秒近くずれると表示していることが多いが、毎日1回~2回補正されれば、これも問題にはならない。
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