軽油
軽油の概要と発電機燃料としての利点
軽油は、原油の蒸留精製過程で得られる軽質留分であり、ディーゼルエンジンの燃料として最適化された石油製品である。比重は0.82~0.87程度、発熱量は約8,800kcal/Lであり、A重油と比較してエネルギー密度はやや低いものの、粘度が低くサラサラとしており、常温での取り扱いが容易である点が特徴である。
非常用発電機の燃料として軽油が選定される主な理由は、始動性の良さと設備の簡素化にある。予熱なしで即座にエンジンへの噴射が可能であるため、停電発生から電圧確立までの時間が短いことが求められる病院やデータセンター、通信施設などの重要施設など、用途を問わず幅広く採用されている。
A重油との差異と選定基準
燃料選定において、軽油は「運用性」に優れる反面、「コスト」と「法的規制」の面でA重油と異なる特性を持つ。主な差異は以下の通りである。
- 始動性と流動性:軽油の長所である。常温で流動性が高いため、寒冷地であっても始動性が高い。
- 指定数量:消防法上の危険物区分において、軽油は第4類第2石油類(指定数量1,000L)に分類される。A重油(指定数量2,000L)と比較して指定数量が半分であるため、例えば同じ10,000Lを貯蔵する場合、A重油では指定数量の5倍で済むが、軽油では10倍となり、より厳しい法的規制や安全対策が求められることになる。
- コスト:燃料単価はA重油よりも高いため、大容量かつ長時間運転を前提とする施設ではランニングコストが増大する傾向にある。
設備構成と燃焼特性
軽油仕様の発電機は、その優れた流動性と燃焼特性により、システム全体をシンプルに構築できる。
加温装置が省略できる場合、燃料タンクからエンジンまでの配管ルートが単純化され、初期導入コストや故障リスクを低減できる。また、不純物が少ないためフィルター詰まりの頻度も低く、メンテナンス性が良好である。
近年の軽油は「サルファーフリー(硫黄分10ppm以下)」が標準化されており、燃焼時のSOx(硫黄酸化物)排出量が極めて少ない。また、完全燃焼しやすいため、ばいじん(黒煙)の発生も抑制され、都市部や住宅隣接地での設置に適している。
品質管理とメンテナンスの要点
取り扱いは容易であるが、長期保管における品質管理には注意が必要である。
軽油はJIS K 2204により、流動点に応じて特1号から3号までに分類される。使用地域の最低気温に応じた号数を選定する必要があり、特に厳寒地では流動点が-30℃以下である「3号軽油」または「特3号軽油」を使用しなければ、燃料凍結による始動不能に陥るリスクがある。
A重油に比べてスラッジは発生しにくいが、長期間の貯蔵では酸化による劣化や、結露水に起因するバクテリアの繁殖が発生する場合がある。定期的な水抜き作業に加え、必要に応じて酸化防止剤や殺菌剤の投入、および定期的な燃料性状分析を行うことが推奨される。
非常用発電機の設計手法や、技術情報については非常用発電機の設置基準を参照。












