非常用発電機の設置基準 | ディーゼルエンジンとガスタービンの違いとは

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非常用発電機の概要

電気設備が常に正常稼動するためには、品質の良い電源供給が不可欠である。日本国内の電力事情は非常に良好で不測の停電発生は少なく、雷撃や地震など自然現象による停電の場合はあっても、長期に渡る停電が発生することはほとんどない。

しかし、火災などが発生し電力会社からの電源供給が途絶えた場合、発電機がなければ電気機器期を動かすことができない。特に大規模な業務施設では消火栓やスプリンクラー、排煙機といった防災設備が多数設けられており、停電時に火災が発生するといった事態になると、初期消火や避難ができず大きな被害をもたらすおそれがある。

このような防災設備が「火災で停電になったので使えない」という事にならないよう、防災設備専用の非常電源が必要であり、非常用の運転に特化した発電機が広く用いられている。

発電機切替盤の写真

予備電源の種類と関連法規

非常用に使用する電源に対する規制のうち、建築設備設計に大きく関わるものとして「電気設備技術基準」「消防法」「建築基準法」などがある。電気設備が安全かつ有効に動作することを担保するために、各種の電気設備に関する技術基準を満足する必要があり、消防法に求められた運転時間や出力を適正に出力できる計画としなければならない。

建築基準法により、災害時の予備電源として何の設備を何分以上動作させるか、といったことも定められている。多くの規制に対応する設備であるが、建物を安全に利用するために不可欠な設備であり、その特性や設計基準を理解するのが重要である。

電気設備技術基準に定められた保安用電源

非常用発電機は、電力会社からの電源供給が途絶えた場合、消防設備への電源供給だけでなく、需要家内にある電気設備の機能を維持するための「保安用電源」や「業務用電源」にもなる。避難や消火活動に使用する予備電源としても有効な設備であり、業務の継続や、保安用電源として活用できる。

消防法における非常電源

消防用設備への電源供給が途絶えた場合に使用する「非常電源」でもある。消火栓、スプリンクラー、消防排煙設備などの消防用設備等の電源として接続し、商用電源が遮断されても消防用設備が適切に動作できるよう電源を供給することができる。

消防法では、それぞれの消防用設備がどのような火災で用いるかを定めており、それぞれの必要運転時間も規定されている。定格負荷で60分以上連続運転できること、燃料油は2時間以上の容量を持つこと、発電機起動信号を受けてから40秒以内に電圧確立することなど、多くの基準が定められている。

建築基準法における予備電源

非常用照明、排煙機の電源として使用する「予備電源」である。消防用設備の非常電源と同様、商用電源が突然遮断され停電となっても、一定時間は非常用照明や排煙設備が動作するように計画される。

防災設備に30分以上電源供給できること、30分以上連続運転できる容量を持つこと、40秒以内に発電機が起動し電圧確立することなどが定められており、消防法における非常電源と併用できる。消防法と建築基準法の両方に規制されている場合、消防法と建築基準法のどちらの基準も満足できるような機種選定や燃料計画が必要である。

建築物の電気設備として使用する非常用発電機の内燃機関は大きく分けて、ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンの二種類が用いられる。原動機を使用した内燃機関は切り替え時の始動が速く、動作の信頼性が高く、保守点検が容易といった多くの利点があり、発電機駆動用の機関として幅広く使用されている。

防災設備として使用される非常用発電機設備の場合、消防法により「ディーゼル」「ガスタービン」または同等以上の始動性能を有するものと規定されている。

ディーゼルエンジンの特徴

ディーゼルエンジン非常用発電機は、20kVA前後の小型機種から1,000kVAを超える大型機種まで多様なラインナップがある。断続的な燃焼による爆発ガスの熱エネルギーをピストン往復運動に変換し、クランク軸によって回転運動に変換するという機構で運転を行う。

ディーゼルエンジンの非常用発電機の分野では非常に広く普及しており、発電機の周辺装置を簡素化することができる「ラジエーター冷却」がよく選定される。冷却水槽を用いた水冷方式もあるが、水を循環するポンプやタンクの保守が煩雑となるため、あまり用いられない。

ディーゼル発電機は燃焼空気の排気に黒煙が多い、運転時の振動や騒音が大きいという問題があるが、比較的安価なため頻繁に採用される。周囲の空気環境に出力が調整されることは少なく、常に一定の出力を確保できる堅牢さも利点である。

ガスタービン発電機と比較して、潤滑油消費量が多い、軽負荷運転の効率が悪い、往復運動のため振動が発生するといった欠点がある。冷却装置の附置、据付面積が必要など、建築的な負担が大きくなるというデメリットもあるが、出力に対する燃料消費量が少ないという大きな利点があるので、大きなオイルタンクを用意することができないビルやホテル、マンションなどで広く用いられている。

長時間の軽負荷運転における注意点

ディーゼルエンジンを選定する場合、軽負荷運転による燃焼効率の低下に注意しなければならない。発電機に接続している負荷が軽すぎる場合、燃料噴射圧力が低くなるため燃料が上手く燃焼せず、黒煙が多くなるという欠点がある。シリンダーやピストンの潤滑オイルが燃焼できる温度まで上昇せず、排気管からオイルが滴ることもあり汚損が問題になることも多い。

軽負荷運転を長時間に渡って行った結果、煙道や機関内部に黒煙が多量に発生し、排気管にオイルが滴るような状況において、突然高負荷・全負荷で運転を行った場合、内部機構の故障につながることがある。そもそも非常用の発電機では、大きな消防負荷を始動することが求められるため、始動電流に耐えられるよう大きなサイズの発電機が計画されることになる。

ディーゼルエンジンを選定する場合、常に全負荷に近い運転ができるよう、余裕を持たせ過ぎない選定をすることも重要なポイントである。近年では負荷試験を行って消防機関に報告することが求められるため、負荷試験装置を接続して100%負荷運転を行い、安定した燃焼ができるかを確認できる計画が良い。

直接噴射式と予燃焼室式

直接噴射式は、燃料を燃焼室に直接噴射して燃焼させる方式で、始動性が良く、燃焼効率が良いという特徴がある。主に、低速~中速の非常用発電機に採用されている。対して予燃焼室式は、予燃焼室に噴射した燃料により、内部圧力を上昇させ、残部を主燃焼室に噴出することで燃焼効率を高める方式である。騒音振動を小さく抑えるため、高速の非常用発電機に採用される。

冷却方式

内燃機関外部からの冷却水で冷却する水冷方式と、機関に直接駆動するファンで冷却する空冷方式がある。ファンによる空冷は小容量の発電機でのみ適用され、大規模な発電機では水冷方式となる。

水冷方式には、放流式、クーリングタワー式、水槽式、ラジエーター方式がある。放流式は冷却水の系統が簡素で設置が簡単であるが、給水が多量に必要で、水がなくなった場合は発電装置が焼損してしまうため、断水した場合には使用不可能となる。

クーリングタワー方式は、冷却水の消費量が少なく、水道水が断水しても一定時間は運転させられるが、クーリングタワーを動作させるための動力や、クーリングタワーを設置するためのスペースの確保に問題が残る。あまり採用実績はない。

冷却水槽式は、水道水が断水しても水温が上昇するまでの間、運転を継続できる。運転時間によるが、大きな水槽を別途用意しなければならず、建設コストが増加する。水槽も定期メンテナンスが必要で、常時水源を用意しなければならないため採用実績はほとんどない。

ラジエーター方式は、非常に採用実績の多い方式で、冷却水配管が不要で冷却水の消費もほとんどない。ラジエーターファンを運転させるため、出力が若干低下することや、排風量が大きくなることに注意が必要である。

ガスタービンの特徴

ガスタービンを搭載した非常用発電機は、ディーゼルエンジンと比較して黒煙が少なく、振動や騒音が小さく抑えられ機器本体もコンパクトである。発電した電力は安定性が高く、軽負荷運転でも良好な発電を保つことができる利点がある。

燃料を多量の空気と混合して完全燃焼させることにより、排気に含まれる一酸化炭素やNOxの量を大きく低減できるため、環境負荷が小さいという利点もある。ディーゼルエンジンのような往復運動機構ではなく回転運動機構のため、建築躯体に伝わる振動が小さく、躯体伝搬による騒音が小さいのも利点である。

しかし、機器本体が高価であること、給気と排気風量がディーゼルエンジンよりも大きいこと、燃料消費量が多いといったような多くの欠点もある。給排気風量が大きいため、給気用のガラリや排気ダクトなどがディーゼル発電機よりも大きくなり、建築的な制約が大きい。

またガスタービン発電機は、小型機のラインナップが少なく、500kVAを超える大型スペックが必要な案件での採用実績が多くなる。500kVA以下の小中規模の建物用途ではディーゼルエンジンの採用が一般的である。

燃料消費量はディーゼル発電機の2倍以上

ガスタービン発電機は電力品質や負荷追従性などで多くの利点があるが、燃料消費量はディーゼルエンジンに比べて倍程度大きく、大型機種では燃料タンクが非常に大きくなり、燃料小出槽だけでは対応できない消費量である。

ディーゼルエンジンよりも高熱な排熱処理も課題であり、植栽などが近くにある場合、煙道から放出される排気ガスで植栽を焼いてしまうおそれがあるので、排気方向はディーゼルエンジンよりも慎重に選ばなければならない。

ガスタービン発電機を選定する場合、消火設備についても注意しなければならない事項がある。ガスタービン発電機に対して、新ガス(窒素)消火は原則として適用できない。32条特例申請を提出することで認められることもあるが、早期に所轄消防機関との協議申請業務を進めておくことが望まれる。

ディーゼルエンジンとガスタービン発電機の違い、発電設備としての利用方法については発電の種類・発電所からの電気の流れでも解説している。

ディーゼル・ガスタービンの燃料タンク容量計算

長時間運転させる必要がある場合、燃料タンクを別置きする計画を行わなければならない。大容量のタンクを地上や建物内に設置すると、危険物取扱所として規制され、消防設備や建築構造に制約が発生する。地下埋設タンクは危険物取扱所の中では規制が緩めであり、景観等の影響も少ないことから広く利用されている。このとき燃料タンクの容量は、発電機の連続運転時間、運転の頻度、燃料消費率を確認した上で算出する。

燃料タンク容量の算出計算(ディーゼルエンジン)

ディーゼルエンジン発電機の燃料タンクは、下記の計算式によって容量を算出する。

燃料消費率は原動機出力によって左右され、下記のような関係性がある。

燃料密度wは、軽油の場合830[g/L]、A重油の場合850[g/L]となる。

ここで、軽油を使用したディーゼルエンジン発電機で、原動機出力120kW、必要運転時間「3時間」の燃料タンク容量を算出する。

130Lの軽油を燃料とすれば、指定数量1/5以下となり、非常用発電機のパッケージ商品で選定が可能である。燃料が多くなった場合、パッケージ商品は少量危険物取扱所にならない範囲までの製品がほとんどのため、別に燃料小出槽を設けるか、地下タンクなどを設置する。

燃料タンク容量の算出計算(ガスタービンエンジン)

ガスタービンエンジン発電機の燃料タンクも、ディーゼルエンジン発電機と同様の計算式によって容量を算出する。

燃料消費率は原動機出力によって左右され、下記のような関係性がある。ディーゼルエンジンよりも燃料消費率が高く、2~2.5倍の消費量となる。

燃料密度wは、灯油の場合780[g/L]、軽油の場合830[g/L]、A重油の場合850[g/L]となる。

軽油を使用したガスタービンエンジン発電機で、原動機出力350kW、必要運転時間「3時間」の燃料タンク容量を算出する。

特殊仕様の発電機

非常用発電機は、超長時間運転可能型、寒冷地対応型など、オプションによって様々な環境で運用できる。特殊環境で使用する場合、その環境に適用した機種を選定しなければ、非常時にその能力を発揮できず、運転不能により人的被害につながるおそれがある。

長時間運転

非常用発電機を1時間以上の長時間運転をしたい場合、長時間対応型の製品を採用する。法的には2時間以上の運転時間が一般的であるが、72時間・168時間など、数日に渡るような連続運転を求められた場合、潤滑油を多く搭載することで長時間運転ができるようにし、別置タンクに燃料を備蓄し、燃料移送ポンプで燃料供給を続けて運転する。

燃料貯蔵量によっては危険物取扱所として規制される可能性がある。指定数量の考え方を理解し、指定数量を超過しない燃料量に抑えることを基本として計画するとコスト面で有利となる。指定数量を超過する計画となっても、地下タンクによる貯蔵であれば、法規制はそれほど厳しくならない。

発電機は、潤滑油が続く限り連続運転ができるが、運転したままの状態で潤滑油の補給はできないため、潤滑油タンク容量が連続運転時間に大きく影響する。潤滑油容量も指定数量にカウントされるため、計算時には十分注意しなければならない。

寒冷地仕様

発電機を設置する周辺温度が10℃以上であれば、機関対してに特別対策を行う必要はないが、5℃を下回る低温環境では不具合が発生するおそれがある。機関のジャケットなどを保温しなければ動作不良となる可能性があるので、搭載したヒーターを運転して保温を行う。

首都圏以南など、比較的温暖な地域であれば標準仕様の発電機で問題ないが、首都圏以北、山岳地帯など、準寒冷地や寒冷地に該当する地域では、標準仕様のヒーターでは能力が不足するのでラジエータ等の凍結防止を図る必要がある。発注時に特殊仕様の発電機を指定しなければならない。

高高度における使用

山岳地帯など標高の高い場所に発電機を設置する場合、発電機の設置高度に発電機の出力が大きく変動することを考慮しなければならない。標準仕様の発電機は150mまたは300m以下の場所に設置することを前提条件として出力計算がなされる。標準仕様を超える高度に発電機を設置する場合、高高度対応として容量計算をしなければならない。

高高度対応とした場合、5%~10%の能力低下が発生するため、低高度に設置する発電機よりも能力を高めに設定する必要がある。補正を含まずに発電機出力を計画すると、停電等の災害時に能力不足による停止を引き起こすおそれがあり危険である。

始動用蓄電池の種類と特性

REH蓄電池は高効率放電が可能な蓄電池であり、小型パッケージで12Vの公称電圧を得られる。UPS用蓄電池としての利用のほか、起動用蓄電池として幅広く採用されている。

バッテリーはセルモーターを運転させることが主目的であり、高効率な蓄電池が求められるため、高効率・高出力なREH蓄電池が広く使用される。REH蓄電池は小型で安価な高性能蓄電池であるが、寿命は4~5年程度となっている。寿命をより長期化するためにMSE蓄電池に変更することも可能である。

MSE蓄電池は公称電圧2Vであるため、24Vの電圧を得るためには12セルを連結しなければならず、REH蓄電池の倍程度の設置スペースが必要である。REH蓄電池と比較し、MSE蓄電池は納期が長くなる傾向があり、搬入据付時期によっては採用が困難になる。計画時には注意が必要である。

REH蓄電池・MSE蓄電池ともに、周囲温度25℃を超えると寿命が著しく低下する性質があり、周囲温度30℃では約70%、周囲温度40℃では約40%という大幅な寿命低下を引き起こす。

MSE蓄電池を採用し、REH蓄電池よりも1~2年の寿命を引き伸ばしたとしても、実際は温度による寿命低下で数ヶ月程度しか寿命が伸びていないということもありえる。計画時には周囲温度がどのように推移するかを確認し、期待寿命を検討するのが良い。

寿命と耐用年数

非常用発電機は長期間使用することを前提とした防災設備であり、税法上の法定耐用年数で「15年」と定められている。しかし税法上の法定耐用年数は、経理上の減価償却を主眼に定められた制度であり、実際はさらに長期間の利用にも耐える。

BELCAや国土交通省官庁営繕の基準では、15年を大きく超え「30年」の機器寿命が耐用年数として規定されている。法定耐用年数は、減価償却を踏まえたLCC(ライフサイクルコスト)を判断するための基本となる数値であり、十分なメンテナンスが行われているのであれば、交換部品の供給が停止しない限り、より長い期間の使用にも耐える。

屋外に設置されている発電機や、海岸が近く塩害を受ける場所に設置されているような場合、塩分によって外板の腐食が進行し、内部導体部分の腐食が発生するので、30年という長期間の使用は困難である。

停電時に防災設備を稼働させるために必要な重要機器であり、20年を超えて使用するようであれば、有事の際に発電機が運転しないといった危険性も高くなり、人命に関わる問題となるおそれがある。

メーカーは修理部品を一定期間保管しているが、耐用年数を超過しているような場合には、補修部品の入手が不可能となり、故障時の対応ができないという事も考えられる。保全部品が調達できないほど古い発電機は、発電機本体の交換を検討しなければならない。

始動用蓄電池の寿命と耐用年数

発電機は、電力が失われた状態で運転開始しなければならないため、始動のための蓄電池を搭載している。通常「REH」と呼ばれる小型蓄電池が搭載されているが、電池の寿命は比較的短く、5~6年で能力を失う。能力を失った蓄電池は、すぐに交換しなければ発電機の始動不良につながる。

非常用発電機は建物の屋上など、熱に対して不利な場所に設置されることが多く、蓄電池の寿命を大きく縮めてしまうおそれがある。定期的に蓄電池の出力を定期的に確認し、発電機が始動できないほど古くなる前に新品へ交換することが望まれる。

発電機の予防保全と事後保全

電気設備の耐用年数を延長する方策として「予防保全」と「事後保全」を理解することが重要である。

予防保全とは、故障発生前に対策を行い、故障が発生しないよう日々修繕やメンテナンスを行いながら運用する方法である。事後保全とは、故障発生後に故障部分を交換したり修理して通常状態に回復させる運用方法である。

蛍光灯の電球交換について予防保全と事後保全について解説する。例えば蛍光灯は、長期間の使用によって管端部の黒ずみが濃くなるが「完全に切れてしまう前にランプを交換する」という運用方法を採用する場合、これは予防保全に該当する。ランプが完全に切れてしまった後で、切れた電球を交換して復旧するのであれば事後保全となる。

非常用発電機の保全方法は、「災害発生時に発電機を運転しようとしたが起動しなかった」ということがあってはならないため、事後保全を採用することはできない。非常用のため使用頻度が著しく低い設備ではあるが、緊急時に事故が発生し電源供給が行えないのは人命に関わる重篤な問題につながるため、予防保全を行うのが基本となる。

月に1回程度、潤滑油をエンジン全体に行き渡らせる「プライミング運転」を行い、数分間の負荷運転を行って、発電機が正常に起動し運転することを確認しなければならない。かつ、所轄消防署に対して年次点検記録を提出し、発電機が健全であることを報告する義務も生じる。

非常用発電機の騒音と発生の原因

非常用発電機を計画する場合、本体から発生する運転騒音について検討しなければならない。国内で発電機を設置する場合、自治体で定められている騒音規制法や公害防止の条例に準拠しなければならないが、非常時にのみ運転するため、ほとんどの地域で準拠が免除される。

自治体によっては、届出そのものを免除する場合や、届出を求める場合があるので自治体の規制に応じてたいおうしなければならない。

発電機から発せられる振動や空気伝播音は非常に大きく、住宅街など日常的に騒音の小さな地域では、発電機の運転がクレームに結びつくことが多いため、計画は慎重に行わなければならない。ディーゼル発電機の騒音の多くは、機械音、排気音、固体伝搬音に分類される。

機械音における騒音

発電機から発生する騒音のひとつに、機械音がある。ディーゼル発電機は、シリンダ内部で燃料が燃焼する際、衝撃がシリンダ壁面を振動させる。ピストンや燃焼ポンプなど多くの部位で衝撃や振動が発生するので、発電機から放出される機械音は非常に大きく、クレームになりやすい音源とされている。

機械音を低減する方法として、騒音源となる機関部分をパッケージとして覆えば騒音を軽減できる。国内で標準的なパッケージ型発電機を製作しているメーカーにおいては、標準騒音仕様を105db、低騒音仕様を85dB、超低騒音仕様を75dBとして区分し、防音措置のグレードを定めている。

排気音における騒音

本体から放出される騒音として、機械音の他に排気音がある。排気音は、煙道から放出される高温高圧の排気ガス、冷却用の給排気の二種類があり、どちらも風切音が本体から発せられる。

煙道から放出されるガス放出音は、排出経路に消音器を設けることで低減を図ることができる。消音器は煙道と同じく耐熱性・耐圧性に優れた材質で作る必要が有るためサイズが大きく、コストにも大きく影響する。

コストの観点からすれば、近隣に対して影響のおそれがなければ、普通騒音仕様とするのが通常であるが、隣地境界に近い場合や、ホテルなど発電機の運転が建物利用者に対して悪影響を及ぼすことが明らかな場合、低騒音仕様や、超低騒音仕様の発電機を選定するよう検討すべきである。

日常的に運転する発電機ではないため、法律や条例で定められている騒音規制から除外されていることが多いが、自治体によっては「非常用であっても騒音源である」と定め、届出について規制している場合がある。新設を計画する場合、地域条例を十分確認すると良い。

躯体伝搬音における騒音

躯体伝搬音は、発電機に搭載されている「振動を発生させる機関」により、コンクリート基礎や柱、梁、床などに伝達構造体を振動させることを原因とする騒音である。

主に、躯体伝搬は高周波となって建物内に広く伝播し、どの位置で振動が検知されるか不明なため、発電機本体にできる限り近い場所で食い止めるのが基本となる。

発電機を支持固定する基礎コンクリートの量を増やし、重量を大きくすることで振動量を低く抑える方法や、発電機の直下にスプリング防振装置や防振ゴムを挟み込むことで躯体から絶縁する方法が採用される。

固定基礎の質量を設計する場合、簡易計算方法として「基礎質量 = (1.5~2.5)× 発電ユニット質量」 にて、効果的な基礎の重さを算出できる。

発電機騒音の距離減衰による算出

非常用発電機から放出される騒音は「本体から1m離隔した位置で、床面から高さ1.2m」の点で測定した騒音値が基準となる。騒音値は、敷地境界線や道路境界線において測定した値が規制対象になるため、境界線からできる限り離れた場所に設置するのが有利である。

発電機室など、室内に発電機を収容できれば、発電機本体の振動や機械音の伝達を大きく減衰できるので、考慮するのは排気音のみとなる。意匠計画上、発電機室を設けられない場合、発電機本体に防音措置を施した上で、敷地境界からできる限り離隔するか、周囲に防音壁を建てるといった対策が考えられる。

騒音値を算出する計算式

騒音値は Nr = 20log r1 / r [dB] という計算式で示す。騒音の減衰計算は下記の公式とする。

敷地境界から発電機までの距離30m、発電機騒音85dB(低騒音仕様)として、敷地境界での騒音値を計算する。騒音値の基準は本体から1m離れた場所を基準としており、騒音源の測定距離は1mとしている。

よって敷地境界の騒音値は55.4 [dB]となる。

黒煙対策と排気計画

運転開始時に発生する多量の黒煙や、運転中の排気ガスの排出方向についても十分な検討が必要である。

大型の発電機では、運転時に発生する煙の量が多く、火災と勘違いして消防機関に通報されるといった懸念もある。煙の排出は近隣から目立たない場所とし、空気中に拡散して黒煙が見えないよう計画するか、電子ガバナといった黒煙低減装置を設けられた発電機を採用するのが良い。

排気計画

発電機を始動した瞬間、ススを含んだ燃焼排気が煙道から多く放出される。ディーゼル発電機の場合、運転開始時に排出された黒煙は数秒で希釈されてほとんど見えなくなるが、500kVAを超える大型の機種では黒煙量が多くなりがちである。

発電機の煙道からの排気が建築物に当たると、壁面が黒く汚れてしまうため、排気方向は建物直近を避けるべきである。排気は約300℃という高温であり、2~3mほど離隔した場所であっても約50℃ほどの温度を維持している。

煙道は、高速かつ高温の排気が勢い良く流れるので、管内の圧力損失は非常に大きくなる。排気管はできるだけ短くし、曲がり箇所が少なくなるように設計しなければ圧力損失が大きくなり、発電機の性能が落ちるおそれがある。

室内に発電機を設置する計画の場合、煙道は屋上などまで敷設しなければならず意匠的な配慮が必要である。発電機室内から直接外部に排出できるのであれば問題ないが、屋上まで煙道を立ち上げる必要がある場合、煙道本体からの発熱によって火災を引き起こさないよう煙道専用のダクトシャフトを設け、かつ煙道をロックウールなどで断熱する。

発電機に付帯している燃料小出槽や燃料移送配管に熱の影響がないよう、燃料配管と煙道はできる限り離隔して、熱の影響がないよう配慮すべきである。

電子ガバナによる黒煙低減対策

発電機は運転中、絶えず燃焼による排気ガスを放出し続ける。燃焼に必要な空気量を適正に供給できていれば、排気ガスに含まれる黒煙発生量を最小限に留められるが、発電機に接続された負荷が変動して、燃焼に必要な空気量が不足すると、空気不足により不完全燃焼が発生して多量の黒煙が排出される。

急激な負荷変動に対して燃料供給も追従させ、常に十分な空気量が供給できれば、不完全燃焼を抑制し黒煙低減が可能である。これは発電機始動時も同様で、燃料噴射量が多く空気量が不足している状態では黒煙発生量が多くなり、始動時は多量の黒煙が発生する。

従来の機械式ガバナは、燃料噴射ポンプの回転で発生する遠心力を利用して燃料噴射を調整する方式であるが、負荷変動による不完全燃焼が大きく、排気に多くのNOxを含んでいた。

電子式ガバナの発電機であれば、燃料噴射量や噴射タイミング、噴射回数をより精度良く制御できるため、不完全燃焼を大きく抑制でき、黒煙量の低減が可能である。

発電機の法的規制と各種届出

非常用発電機を設置するためには、各種定められた法的規制を満足することを確認し、行政機関に届出を行わなければならない。騒音規制法、振動規制法に満足し、大型の発電機であれば、ばい煙発生施設の届出などが必要である。

ばい煙発生施設の届出

ばい煙施設に該当する規模の場合、その着手において事前に工事計画の届出を行う。電気事業法に規定される「発電所」としての施設は、出力1,000kW以上のガスタービン発電機、出力10,000kW以上の内燃力発電機など、大規模の発電機に限定されている。

大気汚染防止法に規定される法的規制は、発電機の燃料燃焼能力で左右される。「1時間あたり50リットル以上の燃焼能力」がある発電機や、ガスまたはガソリン機関において「1時間あたり35リットルの燃焼能力」があるものは、ばい煙発生施設としての届出が必要となるため、比較的小さな発電機であっても届出義務が生じるため注意を要する。

対して小型の発電機であれば届出が不要なため、ガスボンベを用いるなどした製品を備蓄する場合も多い。

小型の非常用室電気を用いた訓練の写真

騒音規制法と公害防止条例

計画している地域を管轄する自治体に対し、騒音規制法に規制されているか確認しなければならない。通常、非常用として用いられる発電機は騒音規制や振動規制の対象にならないが、行政によっては手続きを求める場合がある。

非常用発電機に関係する騒音規制法の条例は「設備に付帯する補機で空気圧縮機及び送風機の原動機について定格出力7.5kW」という部分を準用する。

屋内設置の大型機種においては、補機の容量が大きいために該当する場合もあるが、一般的なパッケージ式であれば、該当しないことを前提として、行政協議を進めるのが良い。

騒音規制法では規制されていなくても、自治体ごとに定めている公害防止条例にて規制されている場合があり、注意が必要である。例として東京都の公害防止条例においては、非常用発電機の騒音は騒音規制の対象外であることが明確に記載されており特段の心配はない。

騒音規制の対象から外れたとしても、道路・隣地境界に発電機が設置されていた場合、騒音クレームが発生する可能性がある。プライミング運転など、定期的なメンテナンス運転を月に1回以上実施することになるため、非常用であるからといって騒音に対する配慮しないのは問題である。隣地境界や道路境界の近くに設置計画する場合は、低騒音型や超低騒音型の製品を選定し、近隣に配慮することも検討すべきである。

法定点検の規制

発電機の必要機能を維持し、非常時に確実に発電機を運転させるためには、保守管理を適切に行わなければならない。発電機の保守点検は、建築基準法、消防法、電気事業法によって規定されているため、これに準拠しつつメーカーが示す必要な点検・修繕を行う。

身近な規制として、消防法では、発電機の総合点検を1年に1回以上実施し、定期報告をしなければならないと定めている。非常用発電機はプライミング運転により、1ヶ月に1回程度、機関への潤滑油の充填が行われているが、無負荷や軽負荷での運転を長期間続けていると、排気筒にカーボン成分が付着し、始動不良の原因となる。

定期的に、発電機に掛かる負荷を大きくし排気筒内部の温度を上昇させ、カーボン成分を燃焼させて排気筒内をクリーンにすることが、保守上重要とされている。発電機に接続されている負荷を実際に稼働させ、高負荷状態を維持できれば良いが、困難であれば、模擬負荷を接続し発電機に負荷を与えることも可能である。

模擬負荷には、湯を沸かすことで負荷を与える「水負荷試験装置」や、加熱抵抗体を用いた「乾式試験装置」などが用いられる。可搬式のファンや電熱器を接続するのも、模擬試験としては有効であるが、数百kWの可搬式装置は非常に大型で重いため、建物外部まで配線を敷設し、負荷試験接続用の開閉器盤を設けておくと良い。

なお消防法では、総合点検において「30%以上実負荷」を掛けた試験運転をするよう明記されている。発電機に接続された実負荷で試験ができない場合、模擬負荷を接続することでも可能であり、点検手法のひとつとして考えても良い。

建築基準法による規定

建築基準法では「建築士」「建築設備点検資格者」により、6ヶ月~1年の周期で点検を行い、特定行政庁への報告が必要である。外観、性能の確認を行う。定期報告違反をした場合、罰金を課せられる。

消防法による規定

消防法では「消防設備士」「消防設備点検資格者」により、特定防火対象物の場合1年周期、それ以外の場合は3年周期で点検報告を行う。機能点検は6ヶ月に1回以上、総合点検は1年に1回以上実施し、点検結果報告書と点検票を作成して消防機関に点検報告を行う。点検報告違反をした場合、建築基準法と同様に罰金を課せられる。

電気事業法による規定

電気事業法では、発電機を設置するものが、電気主任技術者が作成する保安規程に準じて点検を行う。一般的には、建築基準法や消防法、または変電設備の点検に合わせ、1年に1回程度の点検に含むこととする。

電気設備を適正に運用するための点検なので、日常点検、定期点検、精密点検を実施し、異常がないことを確認しながら使用する。保安規程違反をした場合は、経済産業省より技術基準適合命令が罰則として課せられるおそれがある。

非常用発電機の運転は軽油またはA重油を燃料とするので、一定量以上の燃料を保管する場合、危険物取扱所としての規制を受ける。A重油を使用する場合、400リットル以上2,000リットル未満の燃料が搭載されていれば、少量危険物取扱所として規制を受けるため、所轄消防への届出や、少量危険物取扱所としての構造条件を満足する必要がある。

数日間に渡って連続運転できるよう多量の燃料を備蓄する計画の場合、2,000リットル以上のA重油を備蓄することも考えられ、少量の枠を超えて「一般危険物取扱所」として規制されることもある。

発電機燃料の指定数量

燃料は、A重油または軽油が使用されている。公害規制地区では灯油を使用することもあるが、灯油で運転する発電機は特殊仕様であり、追加コストや、製作可能メーカーが制限されることに注意が必要である。発電機燃料を選定する場合、消防法上の指定数量について配慮しなければならない。

指定数量は消防法に定められており、危険物の危険性に応じて数値が決められている。指定数量を大きく超える燃料を貯蔵したり、取扱う場合、該当する危険物取扱者の免状を持つ者がその危険物取扱所を管理しなければならず、消防機関への手続きのほか、有資格者を雇用する人件費も大きくなる。

指定数量未満であれば有資格者の必要はないが、少量危険物取扱所の基準に準拠した構造を備え、かつ日常管理しなければならないなど、法令によって厳しく規定されている。

燃料を本体に搭載しているパッケージ型では、少量危険物取扱所に該当しないよう、指定数量の1/5未満となるよう燃料タンクが取り付けられている。燃料を別に貯蔵したり、長時間運転させるために大容量タンク仕様とすれば、少量危険物取扱所になる指定数量に該当する。

燃料に使用される軽油や重油は、第4類の危険物として規制されている。危険物はその危険性の度合いに応じて基準となる数値が定められており、指定数量が区分されている。下記は、第4類の危険物の指定数量一覧である。

燃料の多くは軽油またはA重油である。軽油は第2石油類の非水溶性液体で、指定数量は1,000Lである。A重油であれば、2,000Lが指定数量となる。

軽油とA重油の使い分け

軽油はA重油よりも高価であるが、ガソリンスタンドでも取り扱っているため、入手が容易である。軽油は粘度がA重油よりも低いため、高速運転する発電機でも支障なく使用でき、高い着火性を持っている。

A重油は粘度が高く、高速運転する発電機には向いていない。ディーゼル発電機は比較的低速運転のため、軽油・A重油ともにどちらを選定しても問題ないが、A重油は長期保存に難があり軽油よりも早期に劣化するとされているため、指定数量が許す限り、軽油を選定するのが望まれる。

危険物の指定数量の観点から、A重油は400リットル以上保管すると、少量危険物取扱所として規制される。軽油の場合は規制が厳しくなり、200リットル以上を保管すると少量危険物取扱所として規制される。大容量パッケージ型発電機の場合、標準搭載タンクであっても少量危険物取扱所になる可能性があり、A重油を採用する事例が多くなる。

A重油と軽油の混合禁止

A重油と軽油が混合されると、互いの燃料は完全に混ざりあわず、回転速度の制御不良となったり、異常黒煙の発生につながるため、燃料を混合してはならない。

軽油仕様として納入した機種にA重油を入れる、A重油仕様として納入した発電機に軽油を入れることも、同様に避けなければならない。緊急時など、やむを得ず燃料の置き換えが必要な場合は、発電機の運転特性をメーカーに問いあわせて、燃料の置換が可能かを確認すると良い。その場合、完全に燃料を抜き取った事を確認することが重要である。

燃料小出槽の構造と計画

発電機を数日に渡って連続運転するような計画では、本体搭載の燃料タンクでは容量が追いつかず、別に燃料タンクを設ける必要がある。本体搭載タンクを取り外し「燃料小出槽」と呼ばれる小型の別置きタンクに燃料を備蓄し、発電機本体へ燃料供給を行う。

数千から数万リットルの大容量の燃料が必要な場合は、燃料小出槽では不足であり、主燃料槽として燃料タンクを設置する。直接、主燃料槽から発電機に燃料を供給することはなく、いったん燃料小出槽に燃料を移送し、小出槽から発電機に送油するのが一般的である。

必要燃料が1,000L程度と比較的少ないようであれば、燃料小出槽のみで発電機の配管計画を立てることが可能である。数千リットル以上の燃料消費が見込まれるようであれば、燃料小出槽と主燃料槽を組み合わせた計画とする。

主燃料槽は地中埋設とし、燃料小出槽を発電機付近に設けるのが一般的な設計手法である。

本体搭載の燃料で、2~3時間の連続運転が可能であるが、燃料小出槽を使用すれば、20時間といった長時間の運転が可能である。原則として、燃料小出槽から発電機までの送油は重力方式として、燃料移送ポンプを設けない計画とする。

主燃料槽から燃料小出槽に燃料移送が発生する計画であれば、発電機の全負荷運転時の燃料消費量よりも大きなポンプ能力を持つ送油ポンプを選定すべきである。

地下タンクの構造と計画

燃料タンクを地下埋設する場合、タンクを据え付けるための構造躯体を地中に構築する工事が発生する。地中の水位が高い場合、浮力によって地中躯体やタンクの浮き上がりが懸念されるため、基礎の下部に杭が必要か、構造設計者による検討を行う。

水位が高いと、タンクに発生する浮力も強くなる。タンクに燃料が満載であれば、自重によって浮力に耐えられたとしても、タンクが空になった際に、浮力によって浮き上がるおそれがある。十分な構造的検討が不可欠である。

発電機の立会検査と動作試験

本体受け入れ前に工場検査を実施し、正常に運転することを確認した上で現場搬入するのが一般的である。メーカー内部での自主検査は、工事監理者や事業主が工場に出向き、各種試験に立ち会う試験が行われる。

始動渋滞や過回転が発生した場合の機関緊急停止や遮断器開放の動作確認、停電・復電時の動作時間確認、温度上昇試験など、発電機の性能・能力を確認するための試験が行われ、それぞれ正常に動作することを確認する。ここでは、工場から出荷される前に行われる各種試験の内容について解説する。

保護回路動作試験

本体に異常が発生した場合、即座に中央監視装置や警報盤に故障信号を発信し、その異常の内容によっては「強制的に機関停止」を行う安全装置が組み込まれる。代表的な発電機故障の項目は、下記の通りである。

他にも異常電圧・異常周波数の発生などで、機関停止や遮断器開放を行うことも可能である。必要に応じて、保護回路の種類と項目を追加すると良い。

自動運転のシーケンス試験

防災電源に電源を供給する発電機は、停電検出、負荷への電源供給までが自動で行われる。

停電し、発電機が自動的に起動、潤滑油のプライミングが行われ、電圧が確立するまでの時間を測定し、所定の時間内に安定電圧まで移行することを確認する。発電機の仕様として「10秒始動」と「40秒始動」があるが、指定した始動速度よりも早い時間で電圧確立するか確認する。

セルモーターを回転させ発電機が起動し、潤滑油を流動させ、定格電圧まで電圧上昇する時間を測定する。40秒始動の製品でも、概ね20秒以内で始動するのがほとんどである。

温度上昇試験

発電機は負荷に電力を供給することで発熱する。エンジンや発電機の温度が異常値まで上昇すると、本体が焼損するので、適正に放熱機構が働いていることを確認する。

100%負荷を行い、発電機排風温度や固定子温度を測定し、異常温度を示していないかを確認する。エンジンの油温、水温、油圧、排気温度も合わせて測定し、冷却が適切に働いているかを確認すべきである。

燃料消費量試験

発電機は運転により燃料を消費するが、燃料消費量が仕様通りであるか確認する。全負荷運転を行い、メーカーが提示している燃料消費量よりも少ないことを確認する。燃料消費率は下記の通りであり、この数値以下となっていることが確認できれば合格である。

蓄電池始動試験

エンジン始動には蓄電池が使用される。蓄電池に異常があると緊急時にセルモーターを回せず、発電機を始動させられないという致命的な事故につながる。

蓄電池の始動試験では「セルモーター駆動時間10秒、休止5秒の間隔」で、連続3回以上行えることを確認する。連続3回以上セルモーターを回転させ、4回目に正常起動できれば試験は合格である。

騒音測定

発電機本体の騒音を測定する。普通騒音(105dB以下)、低騒音(85dB以下)、超低騒音(75dB以下)に区分されているが「本体から距離1m・高さ1.2mの周囲4点で測定した平均値」が、仕様の値よりも小さいことを確認する。

負荷遮断・投入試験

発電機に接続された負荷が、突然0になった場合、または突然投入された場合に、異常なく電力供給できることを確認する。消火ポンプや排煙機など、大きな負荷が一斉に投入されても、発電機が問題なく運転することを確認する意味でも、必ず実施すべきである。

発電機への負荷投入だけでなく、一斉に負荷が脱落した場合に、周波数や電圧が上昇し過ぎないことも、試験によって確認すべきである。

発電機の定期点検と負荷運転

非常用発電機は緊急時のみ運転する電気機器であり、火災や停電、災害が発生しない限り起動することはない。長期に渡って運転していない発電機は、保守運転としてエンジンを起動させ、潤滑油を機関に循環し、一定の負荷運転を行って健全性を確認しなければならない。

パッケージ方式の機種であれば「自動プライミング運転」と称して、定期的に5~10分間程度、エンジンを自動起動しエンジンの無負荷運転を行う機能が各メーカーの製品に搭載されている。潤滑油を長期間に渡って循環させなかった場合、始動不良の大きな原因となる。最長でも1ヶ月に1回程度はエンジンを始動させなければならない。

定期的な負荷運転の実施

無負荷によるプライミング運転のみを繰り返すと、エンジンや排気筒にカーボンが堆積し、始動不良や運転中停止の原因となる。消防法では年次点検において30%以上の負荷運転を行い、発電機の健全性を確認しなければならない。

30%程度の負荷運転で堆積したカーボンを焼き切るのは不可能であり、できる限り100%負荷運転をするのが望ましい。発電機に接続される実負荷は、発電機が始動できるよう50~60%程度となっており、試験装置を用いなければ100%運転は不可能である。

負荷試験装置は、水を沸騰させるか、電熱線を加熱する熱負荷試験機が用いられる。500kVAクラスの試験機であっても大型トラック同様のサイズの試験車が必要なため、駐車可能なスペースを確保しなければならない。

発電機が建物の屋上に設置されていれば、試験装置と発電機を接続するのが困難になる。事前に試験用系統の接続盤とケーブルを敷設するなど、建築計画からの配慮が必要である。

消防法に定められた非常用発電設備の負荷運転

発電機が万が一の停電時も、支障なく起動することを確認するための負荷試験が消防法によって定められている。発電機の点検において、実際の稼働すべき負荷を乗せず、潤滑油を浸透させて起動確認のみを行ってエンジンを切ってしまうという試験が一般的に行われていたが、これでは本当に発電機が運転できるのかを確認できていない。

負荷試験を行うことで本体や煙道に熱や振動を与え、異常騒音や振動・発熱といった故障を事前に発見したり、蓄積したカーボン成分(スス)を焼き切るといったことも可能となる。消防法では負荷試験を実施するに際しては、30%異常の負荷運転を30分以上実施することが重要であり、無負荷で発電機を起動させるだけの試験では消防法違反となる。

負荷試験を実施するためには、防災用の排煙機や消火ポンプといった設備を稼働させるなどして負荷を上げる必要があるが、建物設備を稼働させることが難しい場合は外部から負荷試験装置を搬入して発電機に接続しなければならない。試験装置としては発熱体によるものが多いが、トラック等で搬入する必要のある、非常に大きなサイズになるため、どの位置に接続盤を設けるかを検討しなければならない。

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