パイロットワイヤー
パイロットワイヤーは、呼び線とも呼ばれ、空の配管内にケーブルを引き入れるための先行線としてあらかじめ通しておくワイヤー(呼び線)のことである。建物の建設段階で配管だけを先に施工しておく場合、後工程となる入線作業を円滑に行うために、管の中に呼び線を配置しておくことで、引き入れ作業が容易となる。
材質としては、一定の引っ張り強度を持つ太さ1.2ミリメートル以上のビニル被覆鉄線や、より強靭なスチールワイヤー、あるいは摩擦が少なく管内を滑りやすいファイバーグラス製のものが使用される。地中埋設で多用される波付硬質合成樹脂管などにおいては、製造段階であらかじめ内部に呼び線が通された状態で出荷される製品も広く普及しており、現場での配管敷設と同時に牽引の準備が整うよう工夫されている。
地中内や壁内の電線管内部は曲りが多く、強い摩擦が生じるため、数十メートルに及ぶケーブルを直接手で押し込むことは物理的に不可能に近い。そのため、あらかじめ管路内に通しておいた細い線を利用して、後からケーブルを機械的な力で引っ張り込むという手順が取られる。この一連の電線引入れ作業において、ケーブルの表面を覆う絶縁被覆に傷をつけたり、内部の導体に過度な負荷をかけて断線させたりしないためには十分な施工管理が求められる。
使用する配管の形状や敷設するケーブルの重さに応じて適切な牽引治具を選定し、定められた曲げ半径や張力の制限を守りながら作業を進める必要がある。
プーリングアイを用いたケーブル端部の保護
プーリングアイは、ケーブルの先端部分に取り付け、ウインチなどで引っ張る際の強い張力を受け止めるための専用の金具である。重量のあるケーブルをパイロットワイヤーに直接結びつけて強く引っ張ると、結び目に応力が集中して被覆が裂けたり、内部の導体が引き伸ばされて断線したりする事故につながる。
これを防ぐため、ケーブルそのものに専用の金具をねじ込んで固定し、そこにワイヤーを連結する方式が取られる。特に、数千ボルトから数万ボルトの電圧を扱う高圧ケーブルの敷設においては広く使われており、地中や水分の多い環境での作業を想定し、ケーブルの切断面から内部へ水が浸入するのを防ぐ防水性能を持たせたタイプも存在する。
メッシュ状のワイヤグリップによる牽引
プーリングアイのほかに、ワイヤグリップと呼ばれる網状の治具を使用する牽引方式もある。これはケーブルの先端から一定の長さを筒状の金属メッシュで覆い、引っ張る力が加わるとメッシュが自動的に収縮してケーブルの外周全体を強く締め付ける構造となっている。
被覆の表面全体で摩擦力を発生させて張力を分散させるため、特定の箇所に局所的な負荷がかかりにくい。比較的軽量な低圧ケーブルや通信ケーブルを複数本同時に引き込む際などに、手軽に着脱できる牽引治具として現場で多用されている。
電線引出における入線作業の手順と注意点
実際の入線作業は、配管の出口側でパイロットワイヤーを人力や電動ウインチで巻き取り、入り口側からケーブルを送り込むという手順で進行する。この引き出し作業において、配管の内部でケーブルがねじれて絡まらないよう、入り口側で専用のローラーなどを用いて慎重に形を整えながら送り出す必要がある。
また、配管の曲がり角を通過する際、ケーブルを極端に鋭角に曲げると絶縁性能が低下するおそれがある。そのため、波付硬質合成樹脂管を使用する場合、緩やかな許容曲げ半径を確保するよう配慮しなければならない。配管のサイズに対して曲げ半径が小さすぎると、摩擦が急増して入線そのものが困難になる事態を招くため注意が必要である。












