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A重油

A重油の概要と発電機燃料としての利点

A重油は、原油の蒸留精製過程で得られる中間留分であり、軽油と重油の中間に位置する石油製品である。比重は0.82~0.95程度で、軽油と比較して粘度は高いが、発熱量が約10,000kcal/Lと大きく、エネルギー密度に優れているのが特徴である。

非常用発電機の燃料としてA重油が選定される最大の理由は、経済性と運転時間にある。軽油に比べて単価が安価であるため、大容量の発電機で大量の燃料を貯蔵する場合にランニングコストを抑制できる。また、同一のタンク容量でも発熱量が高い分だけ長時間運転が可能であり、災害時のような72時間以上の連続運転が求められるBCP対応の電源としても適している。

軽油との差異と選定基準

発電機の燃料仕様を「軽油」とするか「A重油」とするかは、初期投資と運用コストのバランスにより決定される。主な差異は以下の通りである。

  • 価格:A重油の方が安価であり、大規模施設で燃料備蓄量が多いほど経済的メリットが生じる。
  • 指定数量:消防法上の危険物区分において、軽油は第4類第2石油類(指定数量1,000L)であるのに対し、重油は第4類第3石油類(指定数量2,000L)に分類される。指定数量が倍になるため、同一容量を貯蔵する場合でも規制倍数が半分となり、少量危険物としての扱いや、許認可・届出のハードルが下がるという計画上の利点がある。
  • 引火点:A重油は60℃以上と高く、揮発性が低いため、長期間貯蔵しても蒸発による減量が少なく、安全性に優れる。
  • 流動性:A重油の欠点となる特性である。軽油は常温でも十分な流動性を持つが、A重油は粘度が高く、特に冬季などはそのままでは配管内での流動性が低下する。

必要な設備対策:予熱と濾過

A重油を採用する場合、その高粘度特性を補うための専用設備が不可欠となる。

ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプへ送油する前に、A重油を加温して適正粘度まで下げる必要がある。そのため、燃料タンクからエンジンまでの配管経路に電気ヒーターやスチームヒーターを設置し、常時あるいは始動前に燃料温度を40℃~60℃程度に保持する制御が求められる。これを行わない場合、霧化不良による不完全燃焼や、始動不能といったトラブルを招く。

A重油は軽油よりも不純物や残留炭素分が多いため、フィルターは目の細かい高性能なものを選定する必要がある。また、燃焼温度が高くなる傾向があるため、エンジンの冷却系や排気系の耐熱設計も重要となる。

品質管理とメンテナンスの要点

燃料は貯蔵して終わりではなく、長期保管における品質維持管理が重要である。

タンク底部には結露などによる水分が滞留しやすい。水分と油の境界ではバクテリア(微生物)が繁殖しやすく、これが「スラッジ」と呼ばれるヘドロ状の沈殿物を生成する。スラッジが配管に吸入されるとフィルター目詰まりやエンジン停止の原因となるため、定期的なタンクの水抜きと、状況に応じた防腐剤等の添加剤使用が推奨される。

非常用発電機には、JIS K 2205の「1種1号」または「1種2号」が適合する。近年は環境負荷低減のため、硫黄分を抑制した「低硫黄A重油(LSA重油)」の使用が一般的である。消防法や大気汚染防止法に関連するため、貯蔵量に応じた届出や管理者の配置も遵守すべき事項である。

非常用発電機の設計手法や、技術情報については非常用発電機の設置基準を参照。

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