アモルファス変圧器
アモルファス合金の構造と磁気特性
アモルファス合金とは、金属の原子配列が不規則で、結晶構造を持たない「非晶質」の金属材料である。鉄、珪素、ホウ素を主成分とし、溶融した金属を超高速で冷却することで、結晶化する暇を与えずに固化させて製造される。
この材料の最大の特徴は、従来の変圧器鉄心に使用される珪素鋼板と比較して、極めて優れた磁気特性を持つ点にある。結晶の継ぎ目(粒界)が存在しないため、磁化の向きを変える際の抵抗が少なく、ヒステリシス損失を従来の約5分の1にまで低減できる。また、材料の厚さが珪素鋼板の約10分の1と非常に薄く、電気抵抗が高いため、渦電流損失も低く抑えられる。
圧倒的な無負荷損失の削減
アモルファス変圧器の最大のメリットは、無負荷損失(鉄損)の大幅な削減である。無負荷損失とは、変圧器が電源に接続されている限り、電力を消費していなくても24時間365日発生し続ける損失のことである。
アモルファス鉄心を採用することで、この無負荷損失を従来の珪素鋼板変圧器と比較して約60%から70%削減することが可能となる。負荷電流による銅損の削減効果は限定的だが、常に発生する鉄損を大幅にカットできるため、総合効率では1%から2%の向上が期待できる。特に、夜間や休日など電力使用量が少ない「軽負荷時」における効率改善効果が著しく高いのが特徴である。
製造上の制約と巻鉄心構造
優れた磁気特性を持つ一方で、アモルファス合金は機械的強度が弱く、非常に硬くて脆いという性質を持つ。そのため、従来の珪素鋼板のようにプレス機で打ち抜いたり、切断して積み重ねたりする加工が困難である。
切断加工による応力が磁気特性を劣化させるため、アモルファス変圧器では、薄い帯状の材料をバウムクーヘンのように巻き回して成形する巻鉄心構造が採用される。この構造は、磁路が連続するため磁気特性を最大限に活かせる利点があるが、巻線を後から挿入するなどの特殊な製造工程が必要となり、これが初期コストを押し上げる要因となっている。
経済性と導入に適した用途
アモルファス変圧器の初期導入コストは、従来型と比較して20%から30%程度はコストアップすると言われ、調達の状況によっては60%から70%も高価となることも考えられる。しかし、運転中の電力損失(ランニングコスト)が低いため、電力単価や稼働状況にもよるが、一般的に5年から8年程度で価格差を回収できる可能性がある。
導入効果が最も高く現れるのは、年間の平均負荷率が低い(例えば50%以下の)用途である。住宅街や商業地域の配電用変圧器、あるいは昼夜の負荷変動が大きい工場の受電設備などが適している。逆に、24時間常に高負荷で運転し続けるような用途では、無負荷損失削減の恩恵が相対的に小さくなるため、投資対効果の検討が必要となる。
保守・運用の注意点
日常の保守点検項目は、絶縁油の管理や外観点検など従来型と変わりないが、アモルファス合金は衝撃に弱いため、輸送や据付時の取り扱いには細心の注意を要する。強い衝撃が加わると鉄心にクラック(ひび割れ)が生じ、異音の発生や特性劣化につながる。
また、無負荷電流が極めて小さいため、従来の変圧器の管理基準値で診断を行うと、異常かどうかの判断が難しい場合がある。アモルファス専用の判定基準を用いて適切な診断を行う必要がある。
アモルファス変圧器は、一般的な珪素鋼板を用いた変圧器と比べ、サイズが大きくなる。そのため、キュービクルに収容する際にサイズアップする可能性があり、キュービクル置場や電気室のボリューム出しをする場合、施工時に「納まらない」といった不具合に注意し、十分なスペース検証が求められる。
変圧器の技術情報や設計方法については変圧器選定の基礎知識を参照。












