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安定器

安定器の役割と放電特性の制御

安定器(Ballast / バラスト)とは、蛍光灯、水銀灯、メタルハライドランプなどの放電灯を点灯させ、かつその放電を維持・制御するために不可欠な制御装置である。単なる電圧変換器ではなく、放電現象特有の「負性抵抗特性」を制御するという物理的な役割を担っている。

放電ランプは、一度放電が開始されると、管内のイオン化が加速し、電流が増えれば増えるほど抵抗値が下がり、電圧が降下するという負性抵抗の性質を持つ。これを電源に直結すると、オームの法則に従わず電流が無限大に増大しようとし、瞬時にランプが破損するかブレーカーがトリップする。安定器は、回路にリアクタンスを直列に挿入することで電流を適正値に制限し、暴走を防ぐ「電流制限器」として機能する。

丸形蛍光灯の内部に収容されている安定器

方式の分類:磁気式と電子式

安定器には大きく分けて「磁気回路式(銅鉄式)」と「電子式(インバータ式)」の2種類が存在し、それぞれの特性を理解した選定が求められる。

磁気回路式(グロー式・ラピッド式)は、鉄心に銅線を巻いたコイル(チョークコイル)のリアクタンスを利用する古典的な方式である。構造が単純で堅牢、かつノイズや高調波の発生が少ないという利点があるが、大きく重く、商用周波数(50/60Hz)で点灯するためチラツキが発生しやすい。また、コイル自体の発熱による電力損失が大きく、エネルギー効率は低い。

電子式(Hfインバータ式)は、半導体回路により商用電源を高周波(数十kHz)に変換して点灯させる方式である。発光効率が高く、チラツキがなく、軽量であるため省エネ性に優れる。しかし、スイッチング動作に伴う「高調波電流」や「漏洩電流」の発生源となりやすく、大量導入時には受変電設備への悪影響や、漏電遮断器の不要動作(誤作動)を引き起こすリスクがあるため、高調波対応品の選定やフィルタ設置等の対策が必要となる。

高調波問題とノイズ対策

電子安定器から発生する高調波電流(特に第5・第7次高調波)は、配電系統を通じて変圧器や進相コンデンサに流入し、過熱や焼損、異音の発生を引き起こす原因となる。JIS C 61000-3-2等の規格に基づき、回路設計時には高調波流出電流計算を行い、ガイドラインの許容値以下に抑制しなければならない。

また、電子安定器は常時微弱な漏洩電流(I0)を対地間に流しているため、絶縁監視装置がこれを地絡と誤検知する場合がある。設計段階で、高調波対応かつ低漏洩電流タイプの安定器を選定するか、回路分割により1回路あたりの台数を制限する措置が不可欠である。

PCB含有リスクとLED化への移行

昭和52年(1977年)3月以前に製造された業務用安定器には、絶縁油として有害なPCB(ポリ塩化ビフェニル)が使用されている可能性があり、これらは法律に基づき厳格な処分期限が設けられている。

近年はLED照明の普及により、安定器の交換(メンテナンス)を行うケースは激減している。既設灯具をLED化する場合、安定器を介さずに電源を直結する「バイパス工事」を行うか、灯具ごと交換する方法が一般的である。古い安定器を残したままLED管のみを装着する方法は、安定器の劣化による発火事故のリスクが残存するため、電気設備技術基準の観点からも推奨されない。

蛍光灯の点灯方式や種類の詳細については蛍光灯の種類と点灯の仕組みを参照。

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