電気設備の知識と技術 > 電線・ケーブルの種類 > CVケーブルの寿命と劣化原因・診断方法
2024.3.31
CVケーブルは他の塩化ビニル系のケーブルと比較して耐候性が高いため、屋外露出配線が可能である。ただし、直射日光を強く受ける場所であれば、風雨や紫外線によって被覆が劣化するため、屋内敷設の場合と比較して期待寿命は短くなる。
屋内敷設を行い、許容電流を超過しないよう電流の流し方を管理しているのであれば、20~30年の寿命を期待できる。直射日光や風雨を受ける屋外で使用する場合は、15~20年まで期待寿命を短く設定すべきである。さらに、短絡事故などの大電流が流れたケーブルは、著しく性能が劣化するため数年で異常検出となる可能性がある。
使用年数に限らず、絶縁抵抗測定や耐圧試験により著しい絶縁抵抗値の減少が見られたり、耐圧試験時に異常なキック現象が発生するのであれば、寿命と判断し交換を計画しなければならない。
CVケーブルの劣化要因は、過電圧や過電流といった電気的要因だけでなく、衝撃や振動による機械的な要因、高温下に曝されることによる性能の低下、薬品や油による化学的要因などが挙げられる。
水トリー現象とは、CVケーブルを構成するポリエチレンに対して発生する劣化現象である。水が常時存在する環境で長期間ケーブルに通電した場合、ケーブル内外の突起や隙間、空隙や製造上発生する異物によって、本来一定であるべき電界が不整となり、この不整部分を起点にして、絶縁物の内外に向かって枝が伸びるように劣化が進行する。これが樹木のように見えることから「水トリー(water tree)」と呼ばれている。
水トリーによる劣化現象は、外導水トリー、内導水トリー、ボウタイ状水トリーの3種類がある。外導水トリーは、外部半導電層の突起から内部へ侵食する劣化、内導水トリーは内部半導電層の突起から外部へ侵食する劣化である。ボウタイ状水トリーは、絶縁体内部の空隙や異物から侵食する劣化である。
水トリー現象は1980年初期以前に生産された、古いCVケーブルに多発している劣化事例のひとつである。水トリーの発生により絶縁劣化が著しくなり、絶縁破壊事故の原因となるため、ケーブルの絶縁抵抗測定や漏れ電流測定の劣化診断を定期的に行い、ケーブルの保全を行うのが重要である。
近年では、絶縁体の界面突起を減少させることで、電界局部集中による水トリーの発生を抑える技術が開発されている。内部半導電層・架橋ポリエチレン絶縁体・外部半導電層の三つを同時に押し出す「三層同時押出」による加工法が確立し、水トリーの発生は克服され、水トリーを原因とした事故はほぼ発生していないとされている。
水トリー対策が施されたケーブルは「E-Eケーブル」として販売されており、電力会社が敷設する外線分野では、このケーブルが用いられている。対して需要家内における民生用ケーブルでは、二層押出の「E-Tケーブル」がまだ利用されており、水トリーによる事故が克服されていない。コスト面では不利であるものの、事故防止の観点からE-Eケーブルの採用が求められることが多い。
水トリーについては水トリー現象にて解説している。
水や熱、電気的なストレス以外にも、物理的損傷によって耐用年数が短くなるケースがある。CVケーブルに限らず、ケーブル類はアリによる被害を受けるおそれがある。
シロアリの被害が多い地域では、地中電線をシロアリに喰われ、心線が露出して地絡事故を引き起こすといった事故が発生する。防蟻ケーブルを採用したり、トラフ内に防蟻剤を含んだ砂を充填するなど、シロアリ対策を施すと効果的である。がい装ケーブルを使用することもシロアリ対策として有効である。
CVケーブルを健全な状態で維持するためには、劣化診断が欠かせない。ケーブルに対して定期的に絶縁抵抗測定による診断を実施し、健全性を確認するのが効果的である。
電路を停電させ、絶縁抵抗計によってケーブルの一端から試験電圧を印加し、ケーブルの絶縁抵抗値を測定する。内線規程では1メグオーム以上、国土交通省の基準では5メグオーム以上の絶縁抵抗値を維持するよう定められている。
新品であれば、100メグオーム以上の絶縁抵抗値が確認できるが、数十年使用したケーブルでは、数十メグオームまで絶縁抵抗値が低下することもあり得る。新品を測定し、100メグオーム未満の数値が計測されるようであれば、絶縁性能が低下している原因を確認しておくと良い。
絶縁抵抗測定を行う場合、ケーブルに500Vの電圧を印加して測定を行う。負荷を切り離してケーブルのみに電圧を印加できれば問題ないが、電路に電気機器、コンピュータの電子機器が接続されていると、500Vを印加することによって破損するおそれがある。測定精度が悪くなるが、125Vレンジで電圧を印加すれば機器の故障は回避できる。