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電気設備の知識と技術 > 新エネルギー発電の知識 > 風力発電設備の設計と問題点

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風力発電設備とは

風力発電設備は、風によるエネルギーをプロペラに伝達し、回転させることにより起電力を生み出す発電方式である。風力を利用することで、化石燃料を使用することなく、また風力という無尽蔵なエネルギーの利用と言う点から、二酸化炭素発生量の削減が期待されている。

風は、太陽熱の温度差によって発生する現象であり、広義な意味合いとすれば、太陽熱利用エネルギーともいえる。従来から風を利用した設備は数多くあり、風を受けて進む帆船や、風で風車を回転させて製粉を行うなどで利用されてきた。

風力によるエネルギーは、太陽熱を得られる限り存在する、無尽蔵に発生する再生可能エネルギーであり、二酸化炭素や排気ガスが発生することなく、クリーンな発電設備として注目されている。風の運動エネルギーの40%程度を電気エネルギーに変換できる高効率なシステムが確立されており、安定した風を得られる環境であれば、発電設備として利用できる。

風力発電の普及意義

風力発電設備を含む、自然エネルギーを用いた発電設備の導入が進むことで、化石燃料の燃焼や、原子力資源を用いた発電設備を少しでも削減し、環境負荷の低減を図ることや、発電設備の多様化によるエネルギーの安定供給が目的とされる。

海外から多くのエネルギー資源を輸入しているのが国内のエネルギー事情であるが、日本国内独自の発電設備の開発は、エネルギー確保の安全性を高めることができ、安定供給という点では非常に重要である。

自然エネルギー分野の雇用促進

新技術を開発し、エネルギーの安定供給が可能となれば、そのエネルギーを発電する設備を新造し、運用・管理する企業を必要とするので、新規市場が開拓され、雇用促進につながる。高い経済効果が得られれば、競争による設備コストの低下も見込めるため、より安価なエネルギー生産が期待できる。

非常用電源としての活用

風力発電は太陽光発電と比べて、風まかせの発電のため、安定した電源とはならない。しかし蓄電池と組み合わせて電力を貯蔵すれば、災害時の非常事態であっても、電力供給ができる可能性がある。

分散電源の構築はスマートグリッドの基本でもあり、太陽光発電、風力発電、燃料電池や蓄電池などを組み合わせて、自立型のエネルギー利用が可能である。

風力発電の風車写真

風力発電設備の種類と特徴

風力発電を行うための風車は、レシプロ飛行機のようなプロペラを持つものや、垂直にねじれた形状のものなど、発電量や騒音の大小に応じて、多数の種類がある。

風車の形状は多数あり、プロペラ型、サボニウス型、ダリウス型、オランダ型などが代表的である。それぞれのプロペラ形状により、発電効率や風を捕捉する性能、騒音値などが違っており、設置場所や用途に合わせて選定する。

風力発電設備には数多くの問題点がある。風力発電はエネルギーの発生が安定せず、大容量な発電を期待するには、非常に大きなローターやブレードを設置しなければならない。

風が吹かない時間はまったく発電しないため、発電時間が不規則で、地域によってばらつきが大きいため、各種蓄電池に蓄電して、風の大小にかかわらず安定した放電を行う、という使用方法でなければ、ピークカット用途として使えない。

プロペラの回転音が騒音問題となる事例も多く、プロペラから発せられる低周波音は近隣に住む人達に、低周波による騒音公害を与える可能性がある。高速で回転するプロペラは、鳥の動物に接触するおそれがあり、付近の生態系を破壊する原因になる可能性もある。

数多くのデメリットを勘案した場合、個人ユースで風力発電設備を導入するメリットが少なければ、提案や検討を行わないという判断も必要である。

水平軸型風力発電設備(プロペラ型)

風力発電設備の風車選定として、もっとも多く普及しているのはプロペラ型のものである。3枚の羽根(ブレード)によって風を捕捉して回転動力を生む。発電効率が良く、低風速でも自己起動が可能で、ブレードを大きくすれば1,000kWを超える大出力な発電装置を計画することもできる。

自然に発生する「風」は、地上から高いほど強く吹く特性があるので、風車の設置位置はできるだけ高くしたほうが発電量は有利となる。風車によって取得できるエネルギーは、風車の受風面積に比例するので、大きな風車ほど大きな発電量を期待できる。

500kW級の大型発電機のプロペラのブレード幅は、30m以上の非常に大きな形状となっており、タワー部分とあわせると、高さ100mを超える。

プロペラ型の発電機には、いくつかの欠点がある。水平方向に流れる風を受け止めてプロペラを回転させるという機構のため、風向制御をしなければ効率的に発電できず、複雑な機構を組み込む必要がある。

ブレードが高速で回転すると、周辺に騒音被害を与えることも懸念される。騒音は風切音のほか、振動を建物に伝えることも考えられ、屋上に設置した風車の振動が、躯体伝搬で建物内部に伝わることも懸念され、騒音被害になるおそれがある。

発電装置がブレードの中心部分付近にあるため、点検が困難というのも問題点のひとつである。発電機など重要な点検対象が高所にあるため、点検コストが高いというデメリットもある。

ブレードは一定速度で回転しているため、飛んでいる鳥類が接触する事故も懸念される。「バードストライク」と呼ばれる事象であり、風車の下部に多数の鳥類が落下しているといった事案もあり、自然環境の悪化を招くとして非難されることもある。

垂直軸型風力発電設備(サボニウス型)

街路灯に併設された小型風車として、サボニウス型風力発電設備も広く普及している。駆動部を垂直軸にすることで、風向に影響されることなく駆動部を回転させて発電できる。湾曲した円筒に風が当たると、片方は風を補足し、もう片方は風を受け流すことで、一方向の回転エネルギーが生まれる。サボニウス型の風車は、風のエネルギーの「抗力」を電気エネルギーに変換する。

風向の制御が不要なため、どのような方向からの風であっても安定した発電ができるのが利点で、都心部など風向きが変わりやすい環境に適している。

サボニウス風車は回転速度が遅く、駆動音がほとんど発生しないため、騒音に配慮しなければならない条件においても有利である。これも、都心部での設置に適した特性である。しかし、発電効率はあまり高くなく、数十から数百ワット程度しか発電できない。

1台あたりの出力が小さく、大出力を望めないが、微風でも捕捉して回転する起動性の良さ、どの方向からの風でも回転するため風向制御が不要であること、発電機が地上近くにあることのメンテナンス性の良さなどから「環境啓発」を目的として、街路灯の一部に組み込んで設置される事例が多い製品である。

発電効率が悪く数十ワットしか発電しないため、サボニウス風車で発電した電力でモーターなどを運転させるのは困難である。負荷が小型照明のみであれば、サボニウス風車による電力だけで点灯させることも期待できるが、多くのメーカーは風力発電だけに頼らず、太陽光パネルを併設し、かつ蓄電池も組み込んだ商品を提供している。風力発電だけでは、数日風が吹かない日が続くと不点灯となるため、照明器具としての性能が満足できないためである。

サボニウス型の風車を採用する場合、発電設備としての性能を求めるのではなく、環境啓発用のモニュメント的な用途と考えれば良い。発電効率を重視は、発電設備としての性能を求めるなら、サボニウス型ではなく「プロペラ型」の風車を選定するのが望まれる。

垂直軸型風力発電設備(ダリウス型)

縦方向に、湾曲して伸びる羽根が風を補足し、回転する風車をダリウス風車と呼ぶ。設置コストが小さく、風向にかかわらず発電できるため、風向制御機構が不要である。

発電機が地上に設置されるため、発電機が故障した場合の点検・修理が容易という運用上のメリットがある。設置コストが安価で、強風でも騒音が小さいという利点から、都心部での設置にも耐える。

サボニウス風車よりも高効率であるが、プロペラ型の風車より発電効率が低いという中間的な発電能力を持っている。

ダリウス風車は、自力で回転始動できないため、別の風車を用いて電力を供給するか、電力会社からの電力を供給する必要がある。風だけで始動開始しないため、始動装置が必要になるのが欠点である。

長期間、所定の風速が得られなければ、電力を消費するだけとなるため、長期に渡って安定した風速が得られる環境でなければ採用できない。

風力発電の利点・メリット

風力発電は、太陽光発電と同様、無尽蔵に利用できる自然エネルギーを利用した「再生可能エネルギー」のひとつである。

日常的に発生する「風」を捉えて、電気エネルギーに変換して利用する。

他の自然エネルギー発電よりも、風力発電が優位と考えられる点を解説する。風まかせの発電設備として、安定した発電量や品質を求めるのが困難とされている風力発電であるが、数多くの利点がある

面積あたりの出力が高い

太陽光発電と較べて、風力発電は接地面積に対する発電量が大きく確保できる。メガワット規模の太陽光発電設備を設ける場合、数千~数万㎡の設置面積を必要とするが、風力発電は自立ポール1本で構築した風車で発電するため、単位面積あたりの発電量は大きくなる。

数百kWクラスの大容量の風車はブレードの大きさが数十mにもなるため、ポール設置面積に対して空中に大きなスペースを必要とする。3kW程度の小型風車であれば、照明ポールと同等のサイズで設置可能である。

有害物質の排出がない

風力発電は、自然に発生している「風」をエネルギーにしており、化石燃料の燃焼に伴うCO2やNoXといった有害物質の放出がない。空気環境を汚染しないクリーンな発電設備して、環境負荷の低減に寄与する。

高い設備利用率を持つ

太陽光発電は日射を必要とする設備であり、夜間まったく発電せず、雨天や曇天など日射が制限されている時間帯の発電も行われない。定格出力に対して、10~15%程度の設備利用率となる。

風力発電は、風が吹けば発電するという特性から、24時間を通して発電機会がある。日本国内の陸上の風力発電は、設備利用率20~30%程度に留まるが、洋上風力発電の新技術であれば、さらに10%程度上積みされた設備利用率が期待できる。

火力発電や原子力発電は70~80%の設備稼働率を持って運用されているため、これらと比べると大変低い数値であるが、環境負荷が低く、放出するCO2が少ないという利点があるので、ここでは優位性として記載する。

環境啓発のモニュメントとして活用

空気環境を汚染しない発電設備を設けている事業者として、周辺地域に対して環境貢献をPRするという側面がある。風力発電設備は未だ高コストが続いており、設置コストと発電量が均衡せず、減価償却ができない。

発電設備であっても、環境に配慮した事業者として投資していることをアピールし、イメージアップにつなげるということも可能である。

風力発電の欠点・デメリット

自然エネルギーを利用し、CO2の発生が少ないとされる風力発電であるが、数々の問題点がある。

一定以上の風速が安定して得られる環境でなければ、安定発電が行われない。風力発電の定格出力は10m/s程度を基準としているのが一般的で、日本国内でこれだけの風速を安定して得られる場所は、山間部や洋上の一部を除き、ほとんどない。

都心部では風が弱く、平均3m/s程度の風速しか得られない。かつビルの影響で風向も安定しないため、定格出力に対して10~20%程度を発電量として見込むのが限界である。

日本は台風が多いので、大きな発電量が見込まれると思われがちであるが、25m/sを超える強風が吹いた場合、風車の過回転による破損を避けるため、ブレーキ機構を作動させている。

これは「カットアウト風速」と呼ばれ、風車の回転に対して強制的な機械ブレーキを掛けたり、風を補足しないよう羽根の角度を倒すなどして、風車が回転しないような措置を行い、本体を保護している。

強風が吹いたとしても、強すぎると発電には活かさないというのが実情である。

安定した出力を得られない

風力を利用した発電設備であり、風が強く吹けば多くの発電が行われ、無風であれば発電量はゼロである。1年を通しての総合値であれば一定の発電量が見込まれるが、電気は「使う瞬間に必要な発電量」を得る必要があり、風車だけで安定した電力を得るのは不可能である。

安定した電力利用を図るには、火力発電など追従性の高い発電設備を並列して稼働させるか、蓄電池に蓄電して放電する、揚水発電を用いて位置エネルギーとして蓄えるといった工夫が必要となり、風力発電だけでは自立電源として成立しない。

風力発電による発電量の発電量は下記の計算式で示される。

記載の通り、風力による発電量は「風速の3乗に比例」する。風速が2倍になれば発電量は8倍、3倍になれば27倍にもなる。風速が得られない場所では発電量は著しく低下する。

環境破壊が深刻となる

風車の回転による振動や騒音に居住環境の悪化が懸念される。振動音や風切音を発生させる風車の回転が、いつ発生するかわからないという環境は、居住環境の悪化を引き起こす。これが訴訟の原因となった事例もある。

デンマークなど、多数の風力発電設備を有する国でも、騒音や振動により、陸上から洋上に風車をシフトさせている。風力発電が与える環境への影響は大きく、訴訟リスクを高めるというリスクを理解しなければならない。

大規模風力発電設備の風車は、数十メートルのブレードを使用しなければならず、この回転するブレードに鳥類が接触する「バードストライク」という事象も、環境破壊につながる。

風力発電設備の構成機器と仕組み

風力発電設備は、風力エネルギーを機械的なエネルギーに変換するための「ブレード」と「ハブ」、これらを組み合わせた「ロータ」、発電機に動力を伝達するための「伝達軸」「増速機」「発電機」、制御装置を組み込んだ「ナセル」というように、多数の構成機器が存在する。

風力発電機の本体以外には、発電した電力の周波数や電圧を調整して安定電源に変換する「パワーコンディショナー」、長距離の送電を行うために高電圧へと変換する「変圧器」など、送電部分においても多数の機器が必要となる。

以下、風力発電の本体となる「風車」を構成する機器の特徴について解説する。

ブレード

風車の羽根部をブレードと呼ぶ。自然に吹いている風を受け止める風車の主要かつ重要な部品であり、ブレードの大きさがそのまま発電量に比例する。

羽根の枚数で回転数が制御できるのが特徴で、羽根の枚数が少ないと回転速度が速くなり、騒音が発生する原因となる。現在のプロペラ型風車においての主流は、3枚の羽根を組み合わせたものである。ブレードの材質は、ガラス強化プラスチックが多く採用されている。

ブレードは大きいほど多くの風を補足できるため、大型の発電機ほどブレードサイズが大きくなる。定格出力がメガワット級の大型風車のブレードは、直径60mという大型風車である。さらに、3メガワット級の風力発電では直径100mもの巨大風車となる。

ハブ

ブレードを固定する部分のことで、ブレードで受けた風力エネルギーによる回転力を、発電機のローター軸部に伝達する。ハブはブレードの回転速度を制御するための機構が搭載されている。

ピッチ角を制御する「可変ピッチ制御機構」、ブレードの向きを風向きに合わせて回転させる「ヨー駆動機構」などを組み込んだ高機能な風車もある。

ハブによって速度調節ができないと、台風の極めて強い風速でブレードが回転した場合、回転力に耐えきれずにブレードが折れて落下する事故につながる。ブレード長さが数十メートルにもなる大規模な風車では、ブレード破損による被害が甚大となり、周辺環境に及ぼす影響も大きくなるため、大変危険である。

発電機

ロータに生じた風力エネルギーを、電力に変換する。ブレードの回転速度と、ブレードの大きさに応じた容量の発電機が採用される。

大きさ数十センチメートルの小型風車は、発電量3kW程度と非常に小さいが、ブレード長さが30mを超えるような大規模な風車では、発電量は1,000kWを超える。

内燃機関で駆動する発電機はエンジンと発電機を組み合わせた「同期発電機」が用いられるが、風力発電用の発電機は風によって著しく変動する発電特性にあわせて、周波数制御が不要な「誘導発電機」が採用されている。

ナセル

風力発電用ポールやタワーの上部に設置する、風力発電設備の心臓部である。増速機と呼ばれる「ブレードの回転を発電機の発電速度に変換」するための装置が内蔵されている。増速機は「ギアボックス」とも呼ばれている。

ギアボックスのほか、電力を生成するための「発電機」、ヨー制御やピッチ制御をコントロールするための「制御装置」など、発電機の心臓部ともいえる重要装置が格納されており、風車の胴体部を構成している。ここに電力ケーブルや通信ケーブルを接続し、発電した電力を送電したり、発電に必要な情報を通信ケーブルで収集する。

風力発電設備の設計手法

風力発電設備を設計、計画する場合の注意点を解説する。風力発電設備には、2~3kW程度の小型製品から、電力会社の発電所にも利用されている数メガ規模まで様々であるが、ここでは数メガ規模の製品ではなく、需要家内に設置される程度の風力発電設備に関して解説する。

住宅用途や、ビルなどの業務施設の道路や屋上に設けられる風力発電は、プロペラ型で3kW程度の発電量を見込めるものから、照明器具一体として静音性を重視したサボニウス型などがあるが、どれも風況の良くない都心部では、大きな発電量を望めないため、環境啓発のモニュメントとしての位置付けが強くなる。

風力発電設備に必要な風速

風力発電設備は名前の通り、風を捕捉できなければ発電できない。都心部の風速は3m/s程度しか得られないため、都心部に設置されている風力発電設備で、実用化できるだけの発電量を確保できているものは、ほとんど存在していない。

最も発電効率の良い「プロペラ型」の風車は、発電を開始する「カットイン風速」が 2~2.5m/sと比較的高い。3m/sの風では風車が回り始める程度であり、定格出力を臨むのは困難である。風速1~2m/sでは、回転を始めることもなく静止状態であり、発電の開始すらままならない。

定格出力を得るには、12.5m/sもの強風を安定的に受けなければならない。風力発電で安定した発電を行うには、風況調査が欠かせない。

海岸沿いや山間部など、常時風速7.0m/s以上の安定した風を得られる環境であれば、十分な発電量を見込める。都心部でこのような強風は難しく、十分な発電量を得られる風速とはいえない。

風力発電設備を計画・提案する場合は、設置場所の数年に渡る風況を十分調査し、安定した電力が確保できるかシミュレーションしなければならない。もし発電量が得られない場合、設置を求める施主(クライアント)に対しては「風車が回転しないことがある」「所定の発電量が確保できない」といったリスクが許容できるか確認しなければならない。理解を得られなければ、風力発電そのものの計画を中止する判断も有り得る。

風力発電設備の雷保護

風力発電設備は発電設備に該当し、20kW未満の場合、一般用電気工作物に該当する電気設備として扱われる。建築基準法上は「建築設備」として扱われるため、地表面から20mを超えた場所に設置する場合、避雷設備で風車本体、構成するタワーなどを全て落雷から保護しなければならない。

風力発電設備の損傷事台風による強風でのブレード損傷、鳥の接触(バードストライク)によるブレード損傷のほか、落雷による損傷も大多数を占める。強風での損傷対策は各メーカーともに対策しており、規定以上の風速があった場合には発電を止め、風を受けないようにブレードを側面に向ける対策がされているが、風車本体への落雷を、風車本体のみで防ぐのは困難である。

事務所ビルの設計時に求められる小型の風車であれば、避雷針を設けることで直接的な落雷を防ぐ計画を行う。風車への直接雷を避けたとしても、雷電流の通り道は「誘導雷」として異常電圧や電流の発生源となり、接続された各種ケーブルを通じて、風車に搭載された発電機や通信機器を破損することが考えられる。誘導雷の侵入経路には、SPDと呼ばれる避雷器を設けて、雷電流を大地に逃がす工夫が必要である。

落雷は都心部だけでなく、山岳地帯、洋上など、あらゆる場所で発生している。日本国内の落雷は、夏期よりも冬季の方がエネルギーを大きく得られ、被害が大きいとされており、年間を通じて落雷による被害に晒される。

落雷についての詳細は直撃雷・誘導雷の特徴と安全対策を参照。

風力発電設備設計の注意点

風力発電設備を設計する場合、問題点を理解した上で、クレームや事故が発生しないよう計画しなければならない。風力は都電の大きな問題点は「騒音」と「発電品質」の2点である。

風車の振動対策を行う

風力発電設備を計画する場合、原則として地上設置とし、できる限り建物への固定を避けるべきである。屋上などで、風車を建物躯体に支持固定すると、プロペラの回転による振動騒音が建物内部に伝搬して、居住者からのクレーム問題が発生するおそれがある。

定格出力が1kW程度の小型風車でも、台風時のように強い風が吹き、カットアウト風速に至らない高速回転が発生すると、大きな振動と騒音を発生させる。風速によって発電量が上昇するのが風力発電の特徴であるが、発電を停止する「カットアウト風速」は20~25m/sに設定されており、あまりにも強い風が吹く場合はブレーキが掛かり、ブレードが回転することはない。

風速20m/sを若干下回るような風速では、ブレードが高速回転し、大きな電力を生み出すものの、大きな騒音が同時に発生する。騒音は空気伝搬と躯体伝搬を伴い、プロペラが高回転することによる高周波音が発生する。防振ゴムなどによって躯体から絶縁して、建物へ振動を伝えない対策が必要である。

住宅が近くにある場所に風力発電設備を設置した事例においては、深夜のプロペラ回転音によって眠れなくなったというクレームや、低周波音によって体調不良になったというクレームが頻発しており、自然エネルギーによる社会問題ともなっている。

自然エネルギーを利用した発電装置として、風力発電のほかに太陽光発電設備があるが、これは発電に際して騒音を発生させることがない。風力発電は、発電に際して大きな騒音が伴うため、騒音の抑制が重要課題となっている。

風況調査による風速確保の確認を行う

風車設置場所の風況調査は、風力発電の計画でもっとも重要である。風況によって年間予測発電量が大きく左右されるので、風力発電設備を設置する地域の平均風速や、風の方向などを、十分把握する必要がある。

建物の風下に風車を設置すると、ビル風によって風車に当たるべき風が乱される。風況調査で示された風量を得られないおそれがあり、発電効率の悪化につながる。そもそも、日本国内の平均的な風速である3~4m/sでは、定格電力1kWの風力発電設備を設置したとしても、数十ワットの発電量しか期待できないのが実情である。

多数のプロペラ風車を隣接させない

風力発電設備を隣接して多数設置する計画の場合、風車同士の離隔距離を十分確保することが重要である。プロペラ形の風力発電の場合には、さらに配慮が必要である。

複数のプロペラ風車を隣接して並べると、ひとつのプロペラ風車が風を捕捉して回転を始めると、その風車近辺の風の方向が変わる。近くにプロペラ形風車があれば、乱された風の影響で適正にブレードを回転させられず、発電効率が悪化する。

強すぎる風速での保護機能を持たせる

風力発電設備は、強すぎる風を補足するとブレードが破損する。風の力で風車を回転させ、回転運動を発電機に伝えて発電させているため、風が強過ぎればエネルギーが過大となり、ハブやローター部が故障したり、損傷を受ける可能性も高くなる。

風力エネルギーは「風を受ける面積」に対し「風速の3乗に比例」したエネルギーを生み出す。風を受けるブレード面積や、空気の密度が一定とした場合、風速が2倍になると、風力エネルギーは8倍にもなる。

風が強いほど大きな発電量を確保できるため「風が強いほど効率が上がるので良い」と考えがちであるが、実際には3~20m/s程度の風速が、風車を安全に運用できる範囲となる。

台風など、風速25m/sを超えるような突風を受けた場合、ブレードの回転が安全速度を超えた速度となり、ハブやローター部分が損傷したり、本体が吹き飛ばされる危険性があるので「強すぎる風を捕捉しても回転しない」といった保護装置が必要である。

通常、風車は「カットアウト風速」と呼ばれる、発電できる風速の最大値が定められている。強すぎる風を捕捉した場合、風車が破壊されないようにブレードの向きを変えたり、ブレーキを掛ける機構が働くように作られている。強風は大きな発電量を得られるが、風車本体の破損とも隣り合わせであり、風速25m/sがその境界となる。

風力発電の系統連系

風力発電設備から生み出される電力は、電力会社の電力と系統連系して運用するのが一般的である。風力発電だけで自立した電源とするには、安定した風が吹くだけでなく、蓄電池に電力を蓄え、風がない時間帯でも電力が使えるよう計画しなければならない。

風力発電設備で生み出された電力は非常に不安定であり、常時定量の電力を期待できない。商用電源が供給されている系統に連系させて、風が吹かない時間帯の電力をカバーするか、風力発電設備から蓄電池を充電して使うのが一般的である。

風力発電設備で発電される電力は、風の強さに比例するため、風が強ければ大きな電力が発生し、風が落ち着いたら発電量が低下する。電力供給は「風まかせ」ということになり、電圧・周波数・発電電力量の維持が極めて困難である。

日本国内は、日常的にはあまり風が吹かず、台風など天気が荒れた場合には非常に強い風が吹くという特徴がある。ほとんどの時間帯を電力会社から購入した電力を用い、一時的に風が強い時間帯は「カットアウト風速」を超えてしまい発電せず、といったことも予測され、安定した発電が困難である。

系統連系の注意点

電力会社に風力発電からの電力を系統連系する場合、太陽光発電と違い、日負荷がまったく予測できないため、出力変動や、頻繁な並解列の繰り返しによる電圧フリッカが発生する。

動作により、他の需要家に悪影響を及ぼすことが判明した場合、発電設備を設置する事業者は、電圧変動を抑制する設備を導入するか、並解列の頻度の低減を求められる。

電力会社の配電線を補強するか、専用線にすることで周辺需要家への悪影響を予防する方法もあるが、電力会社側の設備変更は時間やコストが必要であり、早期対応が望めないことも多く、連系不能となることもある。

系統連系の技術については系統連系・逆潮流を参照。

風力発電の新技術

風力発電は、高い風速が安定して確保できる「良好な風況」が求められるため、山岳地帯や海岸など、日常的に強い風が吹く場所が、設置に適した場所とされている。

日本国内の都市部など、平野部分は風況が悪く、平坦な陸地エリアでは高い風速が確保できない。平均的に3~4m/sの風速では、本来の発電量をまったく確保できないため、常に強い風が吹く場所の選定は大きな課題のひとつであった。

ここで、海洋や湖上に風車を設ける「洋上風力発電」が注目されている。

洋上風力発電とは

洋上であれば、人が住んでいる地域から遠く離せるため、騒音による問題を軽減可能で、景観上の問題もクリアされる。しかし、海底に基礎を構築することによる環境への影響や、風車と鳥類の接触によるバードストライクによる懸念は解決されず、環境破壊を誘発するとした反対も根強いのが現状である。

洋上風力発電は、自然エネルギーによる発電に関心の高いヨーロッパを中心に普及しており、イギリスやデンマークにおいては数メガワット規模の大容量発電が既に行われている。

海底まで100mを超えないような、比較的浅い場所であれば、海底に基礎を構築して固定するが、それ以上に深くなる場合、浮体式洋上発電と呼ばれる、海底に基礎を造成せず、風車を洋上に浮かべ、重りとなる重量物を海底に沈めてワイヤーで張力を掛ける方式も採用される。

洋上風力発電の利点

洋上は風が安定して強く、陸上よりも高い発電量を期待できる。陸上では、高度が高いほど風速が強いという特徴がより強く表れるが、洋上は高度による風速変化が比較的小さく、高光度まで風車を立ち上げなくても、一定の発電量を確保できるため、設置費の低減が図ることができる。

風速の乱れが小さいというのも利点のひとつで、強い風と弱い風が断続的に吹き付けると、部品の疲労が大きくなり、メンテナンスコストの増大につながる。風速の乱れの小ささは、運用コストの低減を期待できる。

洋上風力発電の問題点

洋上風力発電の問題点として、風車の主装置となる発電タービンが、陸地からアクセスできる場所に設けられないため、設置工事やメンテナンスに多大なコストを要することが挙げられる。

船舶やヘリコプターを用いて風車にアクセスし、大容量の発電機をメンテナンスするため、陸地に設ける設備よりも大きな運用コストが必要とされ、かつ海洋は塩分を含んでいるため、電気機器の設置場所としては極めて過酷である。

発電した電力を送電するための海底ケーブル敷設や、発電情報や故障情報を得るための光ケーブルも同時に敷設が必要であり、機器コストのほか、ケーブル敷設コストも過大となる。基礎造成やバードストライクによる環境への影響も、考慮しなければならない。

洋上風力発電の国内での対応

日本国内では、NEDOにより「福岡県北九州市」と「千葉県銚子市」で、洋上風力発電の実証試験が準備されている。既に着床式洋上発電導入ガイドブックという名称で、ガイドラインが策定されている。

 
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