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電気設備の知識と技術 > 新エネルギー発電の知識 > 系統連系・逆潮流

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系統連系とは

太陽光発電や風力発電などで発電した電力を、電力会社から受電する電力と接続する技術を系統連系と呼ぶ。系統連系では、自家発電した電力でまかない切れない負荷電力を電力会社線からの供給で補完でき、さらに余剰電力が発生した場合は電力会社線への電気の逆流も可能なため、発電設備の負荷率を最大100%まで引き上げられる。

系統連系を行う場合、電力会社が供給する電力と同様の品質が要求されるため、太陽光発電や風力発電で発生した電圧が過電圧や不足電圧になったり、周波数上昇や低下が発生すると、電力会社の系統全体の品質に悪影響を及ぼす。

これら不具合を検出する継電器を設置して、電圧や周波数の異常を検出した際には即座に電力会社系統から切り離す必要がある。これを解列と呼ぶ。

系統連系は、電力会社の電力系統に発電設備を接続することを示しており、電力会社の配電線に対して電力を送り込むかは別問題である。電力会社の配電線に電力を送り込む場合、逆潮流という技術を理解する必要がある。

太陽光発電パネルの下部に設置されたパワーコンディショナーの写真

逆潮流

系統連系状態の電路において、消費する電力よりも自家発電する電力が多くなると、その余剰電力は電力会社の線側に戻っていく。これを逆潮流と呼ぶ。電力会社はその逆潮流されて電力を他の需要家に供給できるため、電力を供給する一需要家が発電所として機能する。

自前の発電設備から逆潮流を行う需要家は、電力会社と契約することにより、逆潮流した分の電力を一定の電気料金で買い取ってもらえる。

発電設備から発電した電力のうち、構内で消費できなかった余剰の電力は、電力会社の配電線を通して使い切られるため、負荷率を常に100%とできるという利点がある。発電設備を休ませることなく最大効率で運用できる。

太陽光発電や風力発電で発電した電力の売単価は、受電契約と同等の電気料金である。一般住宅では従量電灯契約が一般的であり、自家消費分として電力会社からの購入金額を抑えることで、平均的に32円/kWh程度のコストダウンを図ることができるが、近年の売電価格は下落しており、FIT制度に登録した場合16円/kWhの買い取り単価となっている。高圧受電の需要家ではさらに電力の単価が安く、10円~12円/kWh程度の買取価格まで下落した。高圧需要家では、逆潮流による売電メリットはかなり小さいといえる。

太陽光発電設備の電力買取価格は頻繁に変動しており、平成21年11月から平成22年度までに電力会社へ契約申し込みを実施した場合、住宅用10kW未満で48円/kWh、非住宅用は24円/kWhの買取価格となっていたが、平成23年度に新たに契約申し込みをした場合は、住宅用10kW未満は42円/kWh、非住宅用は40円/kWhとなった。

しかし、令和4年時点で、住宅用10kW未満は16円/kWh、非住宅用は10円~12円/kWhまで下落し、電力会社へ売電するよりも自家消費するメリットが大きくなっている。このことから、戸建住宅であっても据置型蓄電池を設けるなどして、自家消費率を高める工夫がなされるようになっている。

バンク逆潮流

バンク逆潮流は、大規模な発電設備が需要家側に設けられた場合に発生する問題のひとつである。電力会社の変電所のバンク単位で、高圧系統から特別高圧系統に向かっての電気の流れ(潮流)が発生することで、配電線の電圧品質の悪化や、保護協調の不良を発生させる原因となる。

バンク逆潮流に対応できない変電所では、電圧の異常変動を防止するため、逆潮流に対応した電圧調整を行う自動電圧調整装置を導入するといった対策を行う。保護協調に対しては、接地形計器用変圧器や事故検出用のOVGRを設けるといった対策を行う。

これら工事負担は接続する発電事業者に請求されることになり、各電力会社に負担金額の単価が定められている。

発電電力の品質安定化

需要家側から電力会社線に逆潮流する場合、同じ系統に接続されている他の需要家へ悪影響を及ぼさないため、電力品質を一定以上に確保しなければならない。電圧や周波数などが、電力会社が決めた規定値以上に変動した場合、自動的に電路を遮断する装置を設ける。

電力の品質確保は、資源エネルギー庁が提示している「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」と呼ばれる指針に合致するよう求められる。このガイドラインは昭和61年に策定され、何度もの改定を経て、平成27年4月にも改定が行われた。電力自由化に伴う多様な発電設備業者の扱いにも適合しており、このガイドラインを満足するよう計画することが求められる。現在最新のガイドラインは令和5年4月1日版である。

電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン

パワーコンディショナーによる電力の安定化

太陽光発電設備を系統連系する場合を考えてみる。太陽光発電設備から発電される電力は直流の電源であり、そのまま交流である電力会社の電線に接続できない。ここで、直流の電源を「パワーコンディショナー」と呼ばれる電力変換装置を通して、交流電源に変換する。パワーコンディショナーでは、交直変換にあわせて、電圧の調整や、周波数の安定化もあわせて行う。

パワーコンディショナーからは安定した電力が供給されるが、電圧や周波数の値が大きく変動した際には、電路を切り離すことで健全性を保つ必要が有る。電源の安定性が乱された場合に、これらを開放する安全装置がパワーコンディショナーに内蔵されている。太陽光発電や風力発電によって発電された不安定な電力は、パワーコンディショナーを経由することで、一定以上の品質を保った電力に調節されている。

電圧変動の対策

電力会社の配電系統は、電気事業法の定めにより「標準電圧100Vに対して101±6V以内」「標準電圧200Vに対して202±20V以内」に電圧を維持する。自家発電設備からの逆潮流を受けた場合であっても、この電圧を維持する必要があるので、系統連系をする発電設備の設置者は、電圧を著しく乱さないような対策を講じる必要がある。

逆潮流によって系統側の電圧が適正値を逸脱するおそれがある場合、進相無効電力制御機能(発電装置から系統に向かって無効電力を制御して電圧を調整する機能)や出力制御機能(発電装置の出力を制限して電圧を調整する機能)を搭載し、電圧の変動を抑制する。

瞬時電圧変動の対策

発電設備が並列運転を開始したり、解列した瞬間に大きな瞬時電圧変動を引き起こす。近年はOA機器や半導体を多用した設備の普及が著しく、電圧変動によって故障や機能停止を引き起こすおそれがあるため、瞬時電圧変動についても抑制が求められる。

電圧変動に対しては、配電線の増強、限流リアクトルの設置、専用連系線への振替えなどが対策として考えられる。

単独運転の防止機能

電力会社の系統に逆潮流する発電設備では、単独運転を防止する方策を講じられなければならない。単独運転とは、発電設備を連系している系統が、事故などで系統電源(電力会社の発電設備)から切り離されているとき、太陽光発電設備や自家用発電設備などから、電力会社の配電線・送電線に対して電力供給が行われている状態である。

電力会社が管理している系統に事故が発生した場合、安全のために事故点を発電設備から切り離し、保守員が点検に向かう。ここに、需要家側の自家用発電設備から電源が供給されてきた場合、保守員に対して感電の危険が及ぶ。停電状態と思っていた事故点に対して電力を供給してしまうことで、保守員を危険に晒すおそれがある。

単独運転を防止するため「過電圧継電器(OVR)「不足電圧継電器(UVR)」「過周波数継電器(OFR)」「不足周波数継電器(UFR)」の4要素を安全装置として使用する。これは多くがパワーコンディショナーに内蔵されている。

保護継電器の原理

単独運転状態が発声すると、発電設備の出力と必要負荷のバランスが崩れることで、電圧や周波数が変動する。この変動を保護継電器で検出し、単独運転状態を防止するというのが一般的な考え方である。この保護には「OVR」「UVR」「OFR」「UFR」が用いられる。

一例として「無効電力が均衡し、かつ負荷に供給すべき有効電力に対し発電能力が大きい」場合、解列によって電圧上昇と周波数上昇が発生する。これはOVRとOFRにより解列可能である。

単独運転状態になった場合、電圧や周波数に異常を生じる。この変動を継電器によって検出し、遮断器などによって解列するのが基本的な保護方法である。

正常な運転状態から単独運転に移行した場合、電圧や周波数が変動することを前提とした機能を有しているが、電圧と周波数が均衡してしまい、これら保護リレーが働かないといった事態も想定されるため、この方式だけによらず、単独運転検出装置を設けることが規定されている。

あらゆる事故状態を想定し、どんな事故に対しても安全に電路を解列できるよう、設備計画を進める必要がある。

更なる単独運転の検出機構

単独運転中の系統において無効電力と有効電力が乖離していれば、各種継電器が動作し単独運転を防止する。しかし、無効電力・有効電力ともに均衡していると、解列によって電圧と周波数が共に変動しないことがあり、これら継電器で保護することが不可能な場合がある。ここで、解列点において「能動的方式」と「受動的方式」によって単独運転を検出する。

能動的方式は、系統に対して電圧や周波数の変動を与え、単独運転が発生した際にこの変動がより大きくなることを検出する方式である。従来は外部抵抗や制御系を用いていたが、検出時間が長いことや、能動的方式を行う発電設備が多数連系している系統では、有効に検出しないおそれがあった。

新しい技術として「ステップ注入付周波数フィードバック方式」と呼ばれる方式が開発されている。電力系統の周波数変化率を検出し、周波数変化を助長するよう無効電力を注入することで単独運転を検出する。

受動的方式は、単独運転発生時の特徴的な電圧位相跳躍、3次高調波電圧歪みの急増検出、周波数変化率などを検出することでゲートブロックし、発電設備を停止させる機構である。これらを組み合わせることで、電力品質の高水準化が図られている。

電力買取用の電力量計の設置

逆潮流した電力量の数値によって電力会社との売買契約が成立するため、計量法に基づいた検定付き電力量計の設置を行う。電力量計は、需要家側から流れてくる逆向きの電力を計測できるものが使用される。電力会社から電気を買う場合、引込点に契約用の電力量計が設置されるが、この部分に太陽光発電の逆潮流分を測定できるメーターを設置する。

逆電力継電器の設置

逆電力継電器は、系統連系を行っている需要家において電力会社の配電線に電力を戻さない、つまり逆潮流をしない契約をしている場合に設置する安全装置である。逆電力継電器は系統連系点に対して逆向き電力が発生した場合に信号を発信し、遮断器等を動作させて発電設備を切り離す。

逆潮流を一切許容しない電路構成となるため、発電した電力は全て構内消費することとなる。電力会社に対して、発電電力を送ることは不可能となる。

系統連系に掛かる費用負担

系統連系を電力会社の配電線と行う場合、需要家から電力会社への接続申込みを行う。接続の申し込みに際しては、1地点1検討にあたり210,000円を調査料として支払う。

この調査費の振込みが完了次第、電力会社は受電側としての技術的検討を行う。この調査料は全国一律であり、電力会社毎の違いはない。

調査における系統連系の接続可否

系統連系における接続申込みののち、3ヶ月以内程度で電力会社から接続可否の回答を受ける。配電線の余力が十分であれば支障ないが、連系点の配電線の容量不足や距離の問題、電力会社が連系制限を設けている系統であるなど、接続が拒否されたり、多額の工事負担金を求められる場合がある。

電力会社の配電線に接続するために、配電線側の設備増強を伴う場合には、発電側事業者に費用負担義務が発生する。電力会社が工事負担金の見積を提示すことになるが、その金額の算定根拠や工期の長さは、電力会社1社によるものであり、他社比較といった仕組みが存在しないため、協議に時間を要する一因となる。

蓄電池の有無

蓄電池設備は、太陽光発電や風力発電で発生した電力を、夜間や非常時に使用したい場合に設置する。

太陽光発電は日射がある時だけ発電し、風力発電は風がある時だけしか発電できないため、電力は天気まかせ、風まかせとなる。発電した電力を夜間使用したり、停電の非常時に使用したい場合は、蓄電池に電源を蓄え、必要な時間に放電するというシステムを構築する。

蓄電池は設置コストも運用コストも高くなり、電力会社が供給する安定した安価な電力で充電するのが一般的である。通常時に太陽光発電設備や風力発電設備で蓄電池を充電するのは極めて不経済である。

電力会社から電力を購入できる環境にあるなら、商用電源を使用して蓄電池を充電し、停電時など電力会社が電力を供給できない状況になったら、自家発電設備から電力を供給して充電するといったシステムにするのが合理的であろう。

は電力会社が電気を供給していない、山岳地帯や海上などで電源が確保したい場合には、蓄電池設備の設置が有用である。電力会社が電気を供給している都心部エリアや街区のエリアでは、通常時に自家発電設備から蓄電池を充電することにメリットがない。

みなし低圧系統連系とは

系統連系は、低圧・高圧・特別高圧どの電圧で受電する需要家でも可能であるが、電圧が高いほど危険なため、電路を保護するための保護装置が多くなる。しかし、高圧需要家で系統連系を行う場合でも、5~10kWといった小規模な発電設備を設置することも多く、保護装置が過大になることが考えられる。

これに対応し、みなし低圧連系という制度がある。みなし低圧連系は、電力会社との契約電力が比較的大きい場合、小規模から中規模の太陽光発電設備や風力発電設備を高圧連系の保護装置をもって保護せず、低圧系統連系と同様の保護装置で系統連系してもよいという緩和措置である。

高圧受電の需要家において、太陽光発電設備や風力発電設備を設けた場合には、高圧電源に対して系統連系するため、低圧の系統連系で設置される保護継電器の他、地絡過電圧継電器(OVGR)を追加で設置する。

低圧の系統連系ではOVGRの設置義務はない、みなし低圧連系をすることで、保護装置は低圧と同様まで簡易化できるから、OVGRを設置しなくても良い。OVGRの設置コストを削減でき、受変電設備への設備負担を軽減できる。

通常、みなし低圧連系を適用したい場合「発電設備の容量が受電電力の5%程度で、常に発電設備からの電力を構内で消費できること」という条件を満たせば、管轄する電力会社との協議に高圧系統連系を低圧系統連系とみなせる。

1,000kWを契約電力としている需要家で、10kWの太陽光発電設備を設置した場合、太陽光発電設備の比率は1%であり、この条件を適用できる。

FRT機能とは

太陽光発電設備が大量に連系されている系統が一斉に解列すると、接続されている電力系統に著しい外乱を与え、電力品質を大きく低下させてしまう原因となる。大規模の解列が発生した場合、電圧変動、周波数変動が発生し、配電線に接続されている他需要家への電力品質の低下を引き起こすおそれがある。これを防止するため、事故時運転継続要件としてFRT( Fault Ride Through )と呼ばれる機能が規定されている。

現行の「電力品質に係る系統連系技術要件ガイドライン」では、不足電圧の発生による発電設備の解列が規定されているが、電力系統の乱れによって解列をするべきか、または運転継続をするべきか規定されていない。今後広く普及されると予想される太陽光発電設備の電力品質確保を求めるため、FRT要件が規定されている。

JEAC 9710-2010 2011年追補版では、低圧連系する発電設備のFRT要件として、電圧変動に対する動作と周波数変動に関する動作が規定されている。

電圧低下によるFRT要件

「残電圧20%以上で、継続時間が1秒以内といった、瞬時電圧低下に対してゲートブロックせず運転継続を行い、電圧の復帰後0.1秒以内に、電圧低下前の80%以上の出力に復帰する」「残電圧20%未満で継続時間が1秒以内の電圧低下に対してはゲートブロックで対応し、電圧復帰後1秒以内に電圧低下前の80%以上の出力に復帰する」

周波数変動に対するFRT要件

「ステップ状に+0.8Hz(50Hz地域)または+1.0Hz(60Hz地域)、3サイクル間継続する周波数変動では運転継続する」「ランプ状の±2Hz/sの周波数変動では運転継続する。上限51.5Hz・下限47.5Hz(50Hz地域)または上限61.8Hz・下限57.0Hz(60Hz地域)とする」

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