契約電力とデマンド管理 | 受電方式の違いと基本料金

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デマンド・契約電力とは

電力デマンドは、電気を使用する需要家の「最大使用電力」を数値として示したものである。電力会社と電気の需給契約を結ぶ場合、一年を通して最も高い電力が発生する瞬間をデマンドとして設定し、その数値が月々の基本料金となる。

需要家が電力会社と電力供給を契約する場合、受電点にVCTを設置し、需用電力を計測する。デマンドが電力会社との契約より超過すると、翌月からのデマンドを、超過した数値以上とするように指示を受ける。

一度デマンドが契約値を超過すると、その翌月からは超過した最大値に契約電力が更新され、電力の基本料金が高くなる。さらに、その月から一年間は契約電力を下げられないという規制を受けることになる。デマンドが超過しないよう電気機器を運用するだけでなく、電力監視を行い、「強制的に電気機器を停止させる」といった制御を組み合わせながら、デマンド超過が発生しないような取り組みが求められる。

高圧電力を契約した場合、電力会社に支払う基本料金は約1,650円程度であり、1kWの超過でも大きなコストアップとなる。デマンドを超過させない方策として、デマンド監視装置などを設け、契約電力の超過が見込まれた場合に負荷を制限する、といった運用が行われている。

電力会社との契約は、30分間単位の平均電力を契約電力としており、平均電力のうち、一ヶ月の最大値を当該月の最大需要電力として計算している。瞬間的に大電力を使用しても、契約電力を改定することはないという計算方法である。

高圧需要家の場合、契約電力1kWあたりの基本料金は、1,650円前後で推移している。100kWの契約電力を設定すると、基本料金が月々165,000円となるため、できる限り小さな契約電力とすることで、電力コストを低減できる。

トレンドグラフをイメージした写真

設備容量の算出

負荷設備の種類や台数が明確な場合は、数を積み上げて負荷容量を算出するが、基本設計時点では機器類が決定している事が少なく、ほとんどの場合、想定で負荷の積み上げを行う。

想定で検討する場合、過去の類似物件を参考に設備容量を算出する方法や、建物用途による平均的な負荷密度を採用する方法がある。どちらを採用する場合でも、EHP・GHPの種別による空調負荷の有無、ポンプや昇降機の有無、特殊な生産機器類の有無などを確認しておく必要がある。

事務所における原単位の一例

事務所では、近年のOA化により負荷密度が高い傾向にあり、コンセント負荷は60VA/㎡を原単位として計画されている。動力負荷も同様、EHP空調機が主流であり比較的大きな容量を占め、これも60W/㎡の電力を必要とする。

工場・店舗・学校・病院などで大きく負荷容量が変化する。各々の原単位は、実績を元にデータベース化されているため、このデータを採用し概算することも可能である。

負荷設備の種類

負荷には、単相と三相がある。照明やコンセント、小型電動機などは単相電源によって供給され、大型電動機や電熱器などは三相電源から供給するのが原則である。設計照度、冷房・暖房能力など、施設が要求する能力に応じて、電気容量が大きく変動するので、計各自には原単位の考え方を、重点的にまとめておく必要がある。

高圧・特別高圧受電における契約電力の計算方法

契約電力を計算する場合、下記の計算式で契約電力を算出する。

需要率は建物用途によって大きく変動する要素である。事務所やホテル、学校では、変圧器容量に対して40%程度を需要率として計算すると良い。

力率は、高圧受電では基本料金に影響される要素であり、95~100%まで改善するのを基本としている。進相コンデンサの容量と、施設の力率の状況を判断して決定することとなる。

契約電力は、電気の基本料金となるため、小さいほど電気料金を節約できる。過剰・過大な契約にしないよう、慎重な計画が必要となる。

変圧器容量から契約電力を算出する計算方法

構内に設置する変圧器容量に契約電力を算出する方法がある。

構内に合計100kVAの変圧器が設置されている需要家であれば、100 × 0.7 + 5 = 75kW が契約電力として算出される。この計算式では、変圧器容量が大きくなるほど需要率が小さく設定されている。

需要率は、照明・空調・昇降機などそれぞれ用途に応じて数値が違っている。負荷設備の容量が明確であれば、個別負荷の容量を積算して計算することで、より精度が高くなる。

受電方式の違いと特徴

受変電設備を設計する場合、負荷設備の規模に応じて、低圧・高圧・特別高圧のどの電圧を採用するかを計画しなければならない。設置する変圧器の容量・台数、変電所の大きさなど、建築物の意匠デザインにも影響を及ぼすので、精度の高い設計が求められる。

一般的に、契約電力50kW未満の場合「低圧」、50kW以上2,000kW未満の場合「高圧」、2,000kW以上の場合「特別高圧」の電圧で受電する。

低圧受電の場合、需要家でそのまま使用できる低い電圧が供給されるため、財産分解点に区分開閉器を設けるのみで良いが、高圧や特別高圧受電の場合、6,600Vや66,000Vという高電圧を、照明やコンセントなどで使用できる電圧まで変換する受変電設備を設けなければならない。

受変電設備は、開閉器や遮断器、変圧器や計器類がひとつの箱内に収容された「キュービクル式受変電設備」が主流となる。

受電方式の種類と特徴

受電方式には、1回線受電、本線予備線受電、ループ受電、スポットネットワーク受電がある。

特に需要な設備がない限り、1回線受電を行うのが一般的であるが、信頼性を求める場合、小規模な需要家であっても2回線受電を要望されることがある。建物が必要とする信頼性に応じた選択を行う。

1回線受電方式

電力会社から1回線の電力を受電する方式である。電力会社の配電線事故が発生した場合、電力会社が復旧するまで停電する。受電方式としてはもっともシンプルであり、安価に構築できるのが特徴である。

本線予備線受電方式

電力会社の配電線から、2回線の電源を受電する方式である。電力会社の配電線の1本が停電しても、予備線側に切り替えることに停電時間を短時間に抑えられる。

2回線受電するための設備、回線を切り替えるための設備が必要になるため、1回線受電方式よりもコスト増である。

本線予備電源受電方式

電力会社の配電線から、2回線の電源を受電する方式であり、かつ2回線をそれぞれ別の変電所の系統から受ける方式である。

本線と違う変電所から電源供給を受けられるので、落雷など変電所規模の大規模停電が発生しても、供給変電所を切り替えることで復電できる可能性が高くなる。

本線予備線方式よりも高額な引込負担金を求められる可能性がある。

ループ受電

他の需要家を含めて、配電線をループ状に構築することにより、常に2回線受電する方式である。ループを構成する片側の回線が故障しても、もう片側からの電源供給が継続する限り、無停電を継続できる。

他の需要家へのループ電流が、自身の施設へ流れ込むことになるため、遮断器容量が大きくなり、コスト増となるという欠点がある。

スポットネットワーク受電方式

首都圏・大都市で採用される受電方式で、配電線を3回線受電する方式である。高信頼な受電方式であるが、奥数の変圧器や開閉器を設ける必要があり、設備コストは非常に高い。

隣接する需要家との保護協調を含めた設備が必要であり、大規模ビルなどでの採用が多くを占めている。主に都心部でのみ整備されている配電方式であり、受電電圧は22kVである。ほとんどが、契約電力2,000kWを超える大規模施設に限定される。

デマンド制御とピークカット

デマンド制御とは、需要家が使用する電力量を監視し、デマンドが契約電力を超えないように負荷設備を制御するシステムである。人が計器を眺めながら、負荷が増加しては切り離すといった運用は非現実的であり、デマンド制御装置を設置し、契約電力の超過が見込まれた時点で、一部の負荷を自動で切り離すといった制御を行う。

デマンド制御装置による自動制御

デマンド制御装置は、現時点使用電力と負荷状況を常時監視し、デマンド値が契約電力を超過しないように負荷制御を行うものである。デマンドが契約電力を超過することが予測された場合、負荷を切り離すか負荷容量を制限しなければ、契約電力の変更を余儀なくされる。

予測電力が契約電力を超過することが判明した場合、警報を発することで管理者に警告したり、負荷を自動的に切り離す制御を行う。デマンド制御装置を用いて負荷を制限すれば、予期せぬデマンド超過を防止できる。

負荷の自動制御

デマンド制御装置は、超過予測時に切り離す負荷を登録しておくことで、負荷を自動的に遮断する。強制的に電源を遮断するだけでなく、温度設定を変更して電力を緩和するといった制御も可能である。調整対象負荷は通常、空調機が選ばれる。

運転している空調機を停止させたり、温度設定を上げる・送風運転に切り替えるといった制御を行い、消費電力を低減させデマンド超過を防止するのが基本となる。

デマンドが大きくなるのは、空調がフル稼働している昼から夕方に掛けての時間帯であり、空調機の能力を低下させることは、環境の悪化につながるおそれがある。

パルスピック(パルス検出器)の用途

デマンド制御のための信号は、取引用計器となる電力量計のパルス出力を入力する方法、パルス検出器を介して電力量のパルスを入力する方法、取引用計器とは別に、私設メーターを用いて電力量を測定したパルスを入力する方法などがある。

私設メーターを用いる方法では、電力会社が使用しているパルスと違う方法での検出となり、測定数値に誤差が発生する可能性がある。電力会社からパルス提供を受けられる場合には、専用のパルスピックを設けて、デマンド監視装置に入力することが望まれる。

パルスピックは、電力会社の取引用計器と同じパルスを使用して、電力管理を行うための装置である。電力会社からパルスを受けられれば、精度の高いデマンド管理を行える。

パルス検出器は、電力会社の取引用計器から直接パルスを受信するため、発信装置とデマンドメーターの間など、パルス回路の部分に貫通形CTを設置し、検出器で増幅させて受信するのが基本となる。

負荷のピークカット

ピークカットとは、「負荷が最も大きくなる瞬間の電力を小さくする」方法の総称である。ピークカットを考える場合、氷蓄熱やNaS電池の導入が効果的である。

最も負荷が大きくなる瞬間に、氷蓄熱槽からの熱量を利用したり、NaS電池から蓄電電力を放電してピークカットに充てるといった対策により、デマンド超過を防止できる。

ピークカット設備として、太陽光発電設備、コジェネレーションシステムなども活用できる。太陽光発電設備は、デマンドが冷房負荷である場合、最も外気温が高くなる天気の良い昼間に効率良く発電できる。空調機の消費電力が最も高くなる時間に、太陽光発電設備からの電源供給でピークを受け持つことが可能となる。

電力会社から電力を購入せず、太陽光発電やコージェネレーションシステムから電力を供給できれば、ピークカットとして有効に働く。なお、風力発電設備は、風が吹かない限り発電しないため、ピーク発生時に発電する確証がなく、ピークカットとして有効に働かない。

自家発補給電力契約

自家発補給電力契約とは、需要家が電力会社からの電力と、自家発電設備からの電力を併用して運用する場合に適用可能な契約のひとつである。自家発電設備が故障したり、メンテナンスをするなどで必要電力が不足した場合、その不足分を電力会社が全て供給することを保証するという、保険的な意味合いの強い契約種別になっている。

例として、2,000kWの電力が必要な需要家において、1,000kWを電力会社から購入し、1,000kWを自家発電設備から賄う運用をしている場合で解説する。

2,000kWの需要が発生している時間帯に、1,000kWの自家発電設備が故障すると、供給可能電力が1,000kWとなってしまい操業停止となってしまう。自家発電設備が停止した場合は、半分の能力で操業できるのならば良いが、そのような需要家は稀である。

電力会社から購入する契約電力を1,000kWで契約していたとしても、自家発電設備が故障したり、長期メンテナンスに入る場合、1,000kWで対応できる体制がなければ、運用が不可能となる。自家発補給契約を締結しておけば、「一時的に不足分の電力を供給する」ことが可能となり、不慮の故障やメンテナンス時であっても、通常通りの電力が利用できる。

自家発補給電力契約のコスト

自家発補給契約は、通常の業務用電力契約と同じく、契約電力による基本料金と、従量による電力量料金に分けられており、その両方が電気料金として請求される。

自家補給電力として契約した電力は、約1,350円程度が基本料金となる。基本料金は月毎の支払いとなり、毎月点検や補修が行われることがなければ、使用月の20%の基本料金で良いとされている。

100kWの自家発補給電力契約を結んだ場合、設備を点検した日は約135,000円の基本料金となるが、不使用月は約27,000円の基本料金に抑えられる。

従量による電力量料金は、定期検査や定期補修として事前に決められた時期に電力供給を受ける場合、約14.5円/kWh程度の電気料金になるが、定期検査や定期補修以外に急遽電力を供給しなければならない場合は、約17~18円/kWhという高い単価が請求される。

 
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