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電気設備の知識と技術 > 受変電設備の基礎知識 > キュービクルの補強と振動防止の対策とは

 2024.3.31

キュービクルの耐震補強

キュービクルの耐震対策には「機器を振動させないこと」「機器が振動しても破損しないこと」「機器が振動することを前提にした補強」という3つの要素がある。

振動させない方策は、躯体への強固な固定のほか、振動を吸収する防振装置など、多くの手法がある。振動の発生を許容し、揺れても問題がないように建物側で対策するのも、防振対策のひとつである。

効果的かつコストが大きくならない手法を検討し、合理的な提案を行なうのが重要である。

機器を振動させない対策

機器を振動させないためには、本体をアンカーボルトによって固定し、剛構造とするのが有効である。アンカーボルトでベース架台を固定し、かつ接続する配管や配線に振れ止めを行う。振れ止めはXY方向に入れることで全方向からの揺れに対応できるが、布袋方法によってはまったく効かないことがあるので、振れ止めの方向のほか、実際に手で揺らして確認するのも効果的である。

建築物の上部に設置するほど、揺れが共振によって大きくなるため、振動の周波数が小さくなる地上階や中間階にキュービクルを配置することで、揺れの影響を小さく抑えられる。建築計画上屋上に設置されることが多いため、必ずしも採用できる手法ではない。

アンカーボルトで機器を固定する場合、アンカーボルト強度を計算し、想定する地震力でアンカーボルトが破損しないことを検証しなければならない。

機器が振動しても破損しない対策

機器が振動しても破損しない対策として「機器部材の強度を高めるため支持点を増やす」「駆動部を持つ機器を減らす」「造営材の強度を高める」という手法がある。

過電流継電器や電力量計は、誘導型とすると回転駆動部が地震によって損傷し、誤動作するおそれがある。電子部品を用いた静止型を採用すれば、振動に対しての誤動作を防止できる。誘導型の計測機器は総じて振動に弱く、過電流継電器では遮断器の誤作動を引き起こし、電力量計では計測不良といった問題を引き起こす。

機器が振動することを前提とした対策

機器が振動することを前提条件とし、揺れを吸収する対策が考えられる。接続配管にフレキシブル継手を採用して振動吸収したり、防振ゴムや防振架台で振動を食い止めることも可能である。どちらの場合で、アンカーボルトでコンクリートに強固に固定し、地震力が集中しても破損しないことが前提である。

キュービクル本体に対しては、下記のような対策を講じることで、地震に対して強くなる。

受変電設備だけでなく、電力会社からの引込ケーブルも損傷しないよう対策が必要である。

風圧対策

キュービクルや分電盤は屋外に設置することが多く、地震だけでなく、突風や強風による衝撃にも晒される。風を長期に渡って受けると、電気機器を固定するねじに緩みが発生し脱落のおそれがあり危険である。風圧による不測の張力の発生により、接続部や内部電線に負担が掛かり、電線の抜けや被覆損傷が発生するおそれがあるため、風に対する対策も重要である。

電線の抜けや被覆損傷を放置すると、機器内部で露出した電線と機器が接触し、地絡事故となる。風によってキュービクルや分電盤に飛来物が接触したり、露出しているケーブルが飛来物によって切断されるなどすれば、これも電気事故につながる。

強風時に点検・操作しない

原則として、台風の強風時は、分電盤やキュービクルを操作してはならない。盤の扉を開けると、風にあおられて扉の丁番やストッパーが破損する。風が強い際に扉を開けることが必須条件の場合は、扉の強度を計算し、風を受けても破損しないよう厚い鋼板を使用する、観音開きとして扉面積を小さくする、ストッパーを強固な材料にするといった対策が必要である。

風圧力の計算方法

扉を開いた盤類の強度計算をする場合、扉のストッパーに受ける「せん断応力」と「水平曲げ応力」が、盤を構成する鋼材の許容応力を満足するかを確認する。

日本建築学会の基準によれば、鋼材のせん断応力は13.5 × 10^7 [N/㎡]、曲げ応力は24 × 10^7 [N/㎡]となる。

風が盤の扉に当たった場合、 P = 1 / 2 ρV^2Cp の風圧力が発生する。ρ : 空気密度(1.25)、V : 空気の速度m/s、Cp : 抗力計数(2)である。

扉に掛かる風圧力は、風向きに対して直角となった瞬間が最大である。扉に掛かる力は FA = P × A1 である。P : 風圧力、A1 : 扉の受圧面積 ㎡ として計算を行う。

扉ストッパーのせん断応力は FA / A [N/m㎡] で示される。FA : 扉に掛かる風圧力[N/㎡]、A : 扉ストッパーの断面積㎡ である。この数値が 13.5 × 10^7 [N/㎡] 以下になることを確認する。

扉ストッパーの水平曲げ応力を確認し、鋼材が破損しないように設計を行う。この他、扉本体の強度、ヒンジ強度などを確認し、風圧発生時に扉が破損しないような計画を行わなければならない。

キュービクルや分電盤を製作するメーカーに対しては、所定の風圧条件を元に、扉強度やヒンジ・ストッパーの強度を算出してもらい、安全であることを確認する。

台風時の風圧力対策

台風時は、風速20m/s以上の強風が発生し、飛来物が屋外電気設備に接触することで破損する事例が多く、樹木の倒壊による破損の事例もある。電気設備の支持が弱ければ、風圧力によって支持材が外れたり、破損してしまうことも考えられる。

台風時の強風対策としては、屋外電気設備周辺の飛散物除去、電線類の地中化、電気設備の支持固定増強、防風壁・防風網の設置などが考えられる。

騒音による振動対策

キュービクルから発生騒音は、変圧器本体やコンデンサ、リアクトルへの通電時に発生する「うなり音」が主体となる。遮断器やマグネットコンタクターの操作音なども騒音源のひとつであるが、これは頻繁に発生するものではない。キュービクルの騒音対策では、変圧器から発生する騒音に対して重点的に対策する。

500kVA程度の変圧器から、約40~45dB程度の騒音が常時発生し、かつ負荷電流が大きいほど大きな騒音源となる。空気伝搬による騒音は、変圧器の外側を覆っている鉄箱によって減衰するので、直接聞こえる騒音はあまり問題にならない。騒音が気になる環境であれば、キュービクル外部をコンクリート壁で囲い、グラスウールを貼り付けることで高い遮音性を得られる。

マンションやホテルなど、夜間・深夜に就寝を伴う建物用途では、変圧器の振動による躯体伝搬音が、大きなクレームにつながる。

躯体伝搬における振動対策

変圧器やコンデンサ、リアクトルは、電磁力によって振動を発生させ、構造体を伝わって振動を与える。空気伝搬による騒音対策よりも、振動による躯体伝搬の騒音への対策が重要である。

変圧器本体の振動を躯体に伝えないよう、防振ゴムや防振スプリング防振架台を変圧器下部に挟み込むのが有効である。コンクリート躯体を浮床構造として、建物本体と完全に縁切りするという手法もある。

変圧器の下部に防振ゴムを挟み込み、躯体への振動を遮断する方式が一般的であるが、より高い防振性能が必要であれば、スプリング付きの防振装置を変圧器下部に設けると効果的である。スプリング付きの防振装置は大変高価であり、コスト面での負担が大きくなる。

かつ、変圧器下部に200mm程度の防振装置が挿入されるため、キュービクルの高さ寸法が大きくなるという欠点がある。

 
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