ウィスカ
ウィスカとは何か
ウィスカ(Whisker:猫のヒゲ)とは、金属の表面から自然に成長する、髪の毛よりも細い針状の金属結晶のことである。主に錫(スズ)や亜鉛でめっきされた部品から発生し、長いものでは1~3mm程度まで成長する。
電気を通す性質があるため、制御盤内のような端子間が狭い場所でウィスカが成長すると、隣り合う端子同士を橋渡ししてしまい、短絡事故を引き起こす原因となる。特に「高温多湿」「激しい温度変化」「機械的な振動」がある環境や、応力が加わる場所で成長が促進される傾向にある。
材料選定による根本対策
ウィスカを防ぐ最も確実な方法は、発生しにくい、あるいは発生しない材料を選定することである。各表面処理や素材の特性は以下の通りである。
推奨されるウィスカ対策品は下記の通りである。
- ニッケルめっき:ウィスカは極めて発生しにくいが、下地金属からの発生を防ぐため、適切な厚み(2.5μm以上、推奨は5μm以上)が必要である。
- ステンレス(SUS):SUS304やSUS316などのステンレス鋼自体はウィスカを発生しないため、非常に有効な対策となる。ねじや端子台に使用することで信頼性が高まる。
- 金・銀めっき:ウィスカが発生しない安定した材質である。
- 鉛入り錫合金:環境規制との兼ね合いが必要だが、鉛を含有させることで純粋な錫めっきよりも大幅に発生を抑制できる。
注意が必要な材料は下記の通りである。
- 純錫(スズ)めっき:ウィスカが発生しやすいため、そのままの使用は避けるべきである。
- 電気亜鉛めっき:内部応力が高く、ウィスカ発生リスクが高いため、精密な電気部品への使用は不向きである。
溶融亜鉛めっきは、電気亜鉛めっきに比べて結晶が大きく内部応力が低いため、ウィスカの発生頻度は低い。しかし、完全な対策品ではないため、端子台やリレーといった精密部品には推奨されない。一方で、筐体やケーブルラックなどの構造材としては、電気回路との距離が確保できるため、防錆性能を活かした採用が可能である。
設計と配置による物理的対策
材料選定だけでなく、設計段階で「ウィスカが伸びても届かない距離」を確保することも重要である。
離隔距離の確保として、一般的な端子台の端子間距離では不十分な場合があるため、十分な離隔距離がある製品を選定する。また、異電圧の端子間では、通常規格の1.5倍以上の距離を確保し、安全マージンを持たせる。
配置と熱対策としては、電源系統と制御系統は熱影響のないよう計画し、万一の短絡波及を防ぐのが良い。また、ウィスカは温度上昇により成長が加速するため、変圧器や抵抗器などの発熱機器から離隔して端子台を設置する。
施工時の注意点とメンテナンス
ウィスカは金属への「外部応力(圧力や力)」によって成長が促進される。そのため、配線時は急な屈曲を避け、端子のねじ締めは規定トルクを守り、過度な締め付けを行わないことが重要である。圧着端子には金めっき品などの対策品を使用し、専用工具で正しく施工する。
月次の絶縁抵抗測定で数値が急激に低下した場合は、ウィスカによる微小短絡を疑う。目視点検では拡大鏡を用いて銀白色の針状結晶の有無を確認する。
もしウィスカを発見した場合は、電源遮断後に帯電防止ブラシ等で除去し、イソプロピルアルコール等で清掃する。水系洗浄剤は腐食の原因となるため厳禁である。重要回路の錫めっき部品は、5~7年を目安に計画的に交換を行うことが望ましい。












