土被り
土被り(どかぶり)とは、地中に埋設された管路やトラフ、あるいは直接埋設されたケーブルの上端から、地盤面(地表面)までの垂直距離を示す用語である。電気設備や通信設備、給排水管などを地中化する際、地表面の車両通過による輪荷重(圧力)を分散させ、また将来の掘削工事による重機やつるはしでの物理的な損傷を防ぐための設計基準となる。
適切な土被りを確保し、管路の上部に埋設標識シート(警告テープ)を敷設することで、他工事による誤掘削のリスクを低減し、地中送配電網の安全性を維持する。
地中電線路の埋設方式と原則的な土被り規定
日本の電気設備に関する技術基準の解釈において、地中電線路の施工方法は主に「直接埋設式」と「管路式」に大別され、それぞれに対して土被りの最小寸法が規定されている。
- 車両その他の重量物の圧力を受けるおそれがある場所(道路や駐車場など)においては、原則として1.2m以上の土被りを確保する。
- 車両の重量物が通過することがないと判明している場所(歩道や植込み、敷地内の空地など)においては、0.6m以上の土被りとする。
直接埋設式の場合、ケーブルをトラフなどの堅ろうな保護物で覆うか、外部からの物理的衝撃に耐え得るがい装ケーブルを使用しなければならない。ただし、実務において直接埋設式が採用される事例は少なく、ケーブルの入れ替えや増設が容易な波付硬質合成樹脂管(FEP管)などを用いた管路式が一般的に採用される。
管路式における緩和規定と実務設計のセオリー
管路式を採用し、かつ車両などの重量物の圧力に耐える堅ろうな電線管(鋼管や十分な強度を持つ硬質合成樹脂管など)にケーブルを収容して埋設する場合、電気設備技術基準の解釈上は前述の「1.2m以上・0.6m以上」という厳格な土被りの規定は緩和され、地表面からの具体的な埋設深さの数値規定は除外される。
極端な解釈をすれば地表への露出に近い浅埋設も可能であるが、バックホウやユンボで引っ掛けてしまった場合は容易に破損してしまうため、設備設計の実務においてはの他業者による掘削事故を防ぐため、十分な強度を持つ管路であっても標準的な0.6m程度の土被りを確保し、上部に埋設表示を行うのが基本である。
埋設標識シートによる防護措置と明示
地中埋設工事においては、土被り寸法を確保するだけでなく、掘削時に埋設物の存在を知らせるための「埋設標識シート」を電線路の上部に敷設する。
シートは一般的に、低圧から高圧配電線ではオレンジ色または赤色系統が用いられ、対象となる電圧階級や管理者名が印字されている。高圧や特別高圧の重要な幹線においては、土被りの中間位置と、管路の直上付近の2箇所にシートを敷設する二段敷設などを採用し、バックホウなどの重機で掘削した際に、管路本体を損傷する前にオペレーターがシートを引っ掛けて視認できる構成とする。
寒冷地における凍結深度と凍上対策
北海道や東北地方などの寒冷地において地中埋設配管を設計する場合、電気設備の基準とは別に「凍結深度」という気象・土木条件を考慮しなければならない。凍結深度とは、冬季において地中の水分が凍結する深さの限度を示す。
地中の水分が凍結すると体積が膨張し、地表面が隆起する「凍上(とうじょう)」という現象が発生する。電線管が凍結深度よりも浅い位置(土被りが不足している状態)に埋設されていると、凍上の強力な土圧によって管路が変形、圧壊し、内部のケーブルが断線するおそれがある。そのため、寒冷地では地域の行政が定める凍結深度(例:0.6mから1.2mなど地域により異なる)よりもさらに下部に電線管が位置するように、十分な土被りを確保する計画とする。
他の地下埋設物との離隔距離
土被り寸法の確保と同時に、地中空間では他のインフラ設備(上水道、下水道、都市ガス管、通信線路など)との相互干渉を防ぐための離隔距離が求められる。
電気設備技術基準において、低圧または高圧の地中電線が、弱電流電線(通信線)や水管、ガス管と接近または交差する場合、原則として0.3m以上の離隔距離を保つ必要がある。特別高圧の場合はさらに厳しくなり、0.6m以上の離隔が求められる。限られた地中スペースにおいて、規定の土被りと他設備との離隔距離の双方を満たすため、事前の試掘調査や埋設物探査による正確なルート計画が不可欠となる。












