電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > ハンドホールの選定・埋設管路の設計
ハンドホールは、地中管路埋設工事においてケーブルの挿入、撤去を行うための中継用として使用される地中箱である。現場でコンクリートを打設して構築することが稀にあるが、民生用であればほとんどの場合、工場製作によるプレハブ方式が採用される。
架空配線を行う場合、落雷や風雪による電線の物理的損傷のおそれがあり、長期間太陽光に晒されるとケーブルの紫外線劣化のおそれもある。電柱や架空配線は意匠性が悪く、景観を悪化させる一因となる。これを解決するため、地中にFEP管やPE管、金属管などを埋設して電線路とするが、地中埋設管の敷設距離が長くなるとケーブルを通線することが困難となり、ケーブル引き替えのメンテナンスも難しくなる。
都心部では架空配線が認められていない場所も数多く、公園や道路の街灯、信号機に配線する場合、埋設管ロの構築が必須となる。計画では、一定間隔にハンドホールを設け、容易に電線を通線でき、かつメンテナンスに支障がない計画とすることが望まれる。
工場で生産したプレハブハンドホールは、品質(強度・形状)が安定している。多様な大きさがラインナップされているため、用途に合わせた選定が可能である。
工場生産品であれば、配管敷設用のノックアウトや、鉄蓋との接合面の精度が高いため、防水性能の向上が期待できる。高さ調整金具なども製品化されており、レベル調整も容易なため、工事現場ではほとんどがプレハブのハンドホールを使用している。
ハンドホールはコンクリートで構成されているため、現場打ちコンクリートで製作すると品質がばらついてしまい、所定の設計強度を得るための管理が必要となる。しかし、プレハブの製品であれば、工場生産のため所定の設計強度の確保が容易で、品質の安定を期待できる。コンクリート設計強度は30N/sqが一般的であり、埋設用のコンクリートとしては十分な耐久性能を持っている。
ハンドホールは、通線工事を容易に行えるような設置計画とする。電力や通信引込柱の直近や、建物への導入部、埋設管路の曲がり部分は、通線の支障となりやすい部分であり、ハンドホール設けてケーブルの通線が容易に行えるよう配置する。直線が長く続く部分では、ハンドホールを30m程度に1箇所設ければ、通線が容易である。
多数のケーブルを一箇所のハンドホールで処理しようとすれば、埋設深さが2m~3mなど、非常に深くなる場合がある。計画では、ハンドホールの内部に入るのにも危険が伴うため、タラップを設け、安全にハンドホール内部に入られるよう配慮する。
ハンドホールを施工する場合、施工後の沈下を防止するため下部を転圧し土を圧密にする。この際大きなサイズの石などが残っていると、転圧不良となりハンドホールが沈下するおそれがあるので、取り除くべきである。
ハンドホールは、内部への水の侵入が問題となる。ハンドホールへの水の侵入は「上部蓋から」「電線管貫通部」「枡ジョイント部」などいくつか考えられる。
ハンドホールの蓋は防水パッキンの付いた製品とし、地上面からの浸水を防止する。ハンドホールを貫通する電線管はエポキシ樹脂などで貫通部の止水を行い、かつ電線管の接続部からの浸水を防止するため、電線管同士の接続も止水処理を十分に施す。ハンドホールを構築する枡を重ねる場合、重ね部分に止水用のシールを施す。
しかし、沿岸部では地下水位が極めて高く、高い水圧によりハンドホール内部への浸水が止められない場合がある。地下電線路の水を完全に除去する場合、共同溝を設け、排水ポンプ・換気ファンなどを設置すれば、屋内に近い環境を作られるが、コストとの関係上困難なことが多くなる。
地下水位がハンドホールよりも下位にある場合、ハンドホール下部に水抜き穴を設けることで水が溜まった場合に外部へ排水できる。既製品のプレハブハンドホールであれば、下部にキャップ付き水抜き穴が設けられている製品も有るので、計画によって活用すると良い。地下水位がハンドホールよりも上位にある場合は、逆に水が進入する原因となるため水抜き穴を設けてはならない。
多くの浸水対策を施しても、下部に水が溜まってしまうことがある。電力ケーブルや通信ケーブルは、水中に敷設する場合に屋内敷設よりも劣化の進行が促進されるため常時水没するのは好ましくない。ハンドホールを常に乾燥させるのは困難なため、ハンドホールの底部にケーブルが擦らないよう、ブロック等で浮かせるといった施工が考えられる。
ハンドホールの鉄蓋には破壊荷重が設定されており、重量物がハンドホール上部に載った際、破壊されない強度のある製品を選定する。車両重量物が通る場所にハンドホールを設置する場合は、80kN(8,000kgf)の蓋を選定し、人のみ通行する部分の蓋は、20kN(2,000kgf)とするのが一般的である。
工場や物流倉庫など、大型トレーラーが通行するような部分では80kNの製品でも破壊されるおそれがあるので、場所には設置しないことを原則とし、やむを得ない場合は200kN(20,000kgf)など、大きな荷重に耐えられる鉄蓋を選定すると良い。
50Tラフタークレーンは、輪圧が10T(100kN)近くなるため、80kNの仕様でも耐えられない。耐荷重を超えた鉄蓋は、曲がるような壊れ方をせずばらばらになる特徴があるので、ハンドホールやマンホール内部のケーブルや機器類に破片が直撃すると、ケーブル断線や機器損傷のおそれがある。
ハンドホールは、フックがあれば誰でもあける事ができるので、特別高圧電線路や、重要通信経路となる部分のハンドホールでは、容易に開けられないようロックすることも検討する。ハンドホール内部に対してセキュリティが必要な場所であれば、鍵付きの製品を選定することも考慮すべきである。高圧や特別高圧の送電・配電路となる部分のハンドホールなど、重要な経路となる場合はセキュリティに対する検討が必要である。
ハンドホール内部に水が侵入しないよう、防水処置が施されたハンドホールである。ゴムパッキンが蓋の周囲に取り付けられており、水の浸入を止めることが可能である。防水フタには、簡易防水仕様と完全防水仕様があり、水の浸入を抑えたい程度により、蓋の仕様を選定する。
蓋の上部に建築仕上げを施せるものは、化粧蓋と呼ばれる。インターロッキングなどが敷設され、意匠上配慮されている空間に鉄蓋を置くのは、デザインを崩してしまう原因となるため、化粧蓋が用いられる。インターロッキング用はH=70、タイル用はH=40程度の充填深さが確保されているため、仕上げに合わせて選定する。
他にも、ハンドホールが著しく深くなる場合、蓋にタラップを設けること、落下防止や盗難防止用として使用するチェーン付き、前述した鍵付きなど、設置場所や用途に応じて多様な選定が可能である。
受電点から建物までの電路やハンドホール間に採用されている地中埋設管路は、景観の向上に寄与するため都心部では数多く採用される工法であるが、浸水や、地震・不等沈下による接続配管の屈曲といったおそれもあり、適切な設計が望まれる。
地中電線路はケーブルの通線ができ、必要に応じて引き抜きができる電線管サイズを選定し、かつケーブルから発生する熱に対して、十分な放熱性能を持った大きさにしなければならない。地中電線路には波付硬質合成樹脂管(FEP)が広く使用されており、建物への導入部は防水鋳鉄管等を介して躯体を貫通する。地上設置の分電盤などがある場合、地中から立ち上がる部分はFEPから厚鋼電線管に異種管接続を行う。
引込み管は600mmより下部とし、電力会社との協議により埋設深さを決定する。地表から1,200mmという数値が指定される。舗装されている場所であれば、舗装下面から300mmより下部に敷設する。寒冷地など特殊環境では、凍結深度より下部に配管を埋設する。
埋設配管を建物に導入する部分、地中管路が屈折する部分、道路など公道エリアを横断する部分には、埋設標を設けて埋設管路があることが容易にわかるよう配慮する。直線部分においては30m程度毎に1箇所の埋設標を設置する。
地中埋設管路の上部には、標識シートを埋設することで、下部に電線管が埋設されていることが明確である。誤って重機等で電線管路を損傷しないよう、電線管路の上部に「下部に電線管あり」という表示を行い、注意を促すべきである。
地中管路は、通線するケーブルサイズに応じた大きさの管路を構築する。通線するケーブルの仕上外径によってサイズが変化するが、電力ケーブルは仕上外径の1.5倍、通信ケーブルは仕上外径の2.0倍以上の内径を持つ電線管を選定する。
多条敷設する場合、電線管の断面積に対し、ケーブルサイズが32%以下となるように計画すると、容易に引替えができる合理的な管路となる。
種別 | サイズ | 仕上外径 | 厚鋼電線管 | 配管用炭素鋼鋼管 | 硬質塩化ビニル管 | 波付硬質合成樹脂管 |
---|---|---|---|---|---|---|
600V CV-2C | 2.0 | 10.5 | 28 | 25 | 28 | 30 |
3.5 | 11.5 | 28 | 25 | 28 | 30 | |
5.5 | 13.5 | 28 | 25 | 28 | 30 | |
8 | 15.0 | 28 | 25 | 28 | 30 | |
14 | 16.5 | 28 | 25 | 28 | 30 | |
22 | 19.5 | 36 | 32 | 36 | 30 | |
38 | 24.0 | 42 | 40 | 42 | 40 | |
60 | 29.0 | 54 | 50 | 54 | 50 | |
100 | 37.0 | 70 | 65 | 70 | 65 | |
150 | 43.0 | 70 | 65 | 70 | 65 | |
200 | 50.0 | 82 | 80 | 82 | 80 | |
250 | 54.0 | 92 | 90 | 82 | 100 | |
325 | 60.0 | 92 | 90 | 92 | 100 | |
600V CV-3C | 2.0 | 11.0 | 28 | 25 | 28 | 30 |
3.5 | 12.5 | 28 | 25 | 28 | 30 | |
5.5 | 14.5 | 28 | 25 | 28 | 30 | |
8 | 16.0 | 28 | 25 | 28 | 30 | |
14 | 17.5 | 28 | 25 | 28 | 30 | |
22 | 21.0 | 36 | 32 | 36 | 40 | |
38 | 25.0 | 42 | 40 | 42 | 40 | |
60 | 31.0 | 54 | 50 | 54 | 50 | |
100 | 40.0 | 70 | 65 | 70 | 65 | |
150 | 46.0 | 70 | 80 | 82 | 80 | |
200 | 54.0 | 82 | 90 | 100 | 100 | |
250 | 58.0 | 92 | 90 | 100 | 100 | |
325 | 65.0 | 104 | 100 | 100 | 100 | |
600V CVT | 14 | 21.0 | 36 | 32 | 36 | 40 |
22 | 24.0 | 36 | 40 | 42 | 40 | |
38 | 28.0 | 42 | 50 | 54 | 50 | |
60 | 33.0 | 54 | 50 | 54 | 65 | |
100 | 41.0 | 70 | 65 | 70 | 65 | |
150 | 47.0 | 82 | 80 | 82 | 80 | |
200 | 55.0 | 92 | 90 | 100 | 100 | |
250 | 60.0 | 92 | 90 | 100 | 100 | |
325 | 66.0 | 104 | 100 | 100 | 100 | |
6.6kV CVT | 22 | 42.0 | 70 | 65 | 70 | 65 |
38 | 46.0 | 70 | 80 | 82 | 80 | |
60 | 50.0 | 82 | 80 | 82 | 80 | |
100 | 57.0 | 92 | 90 | 100 | 100 | |
150 | 65.0 | 104 | 100 | 100 | 100 | |
200 | 72.0 | - | 125 | 125 | 125 | |
250 | 76.0 | - | 125 | 125 | 125 | |
325 | 85.0 | - | 150 | 150 | 150 |
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