単相
単一の位相を持つ交流電源
単相(Single-phase)とは、電圧の位相が単一の波形で構成される交流電路の方式である。主に一般住宅の照明やコンセント、小規模店舗の家電製品、事務機器などの電源として広く普及している。電圧は100Vまたは200Vの低圧電路として供給され、三相電源と比較して配線や機器の構造が単純であるという利点がある。
単相電源は、時間とともに電圧の大きさと方向が周期的に変化するが、三相電源のように複数の位相差を持たない。そのため、単独では回転磁界を発生させることができず、大型の動力設備を効率よく駆動させることには適していない。主に抵抗負荷であるヒーターや、単相駆動が可能な小型の換気扇、通信機器などの供給源として利用される。
交番磁界と単相誘導電動機の始動
単相電源を電動機(モーター)の巻線に印加すると、磁界の向きが一定方向に反転を繰り返すだけの交番磁界が発生する。三相誘導電動機であれば、各相の位相差によって自然に回転磁界が生まれて自力で回転を始めるが、単相誘導電動機の場合は、静止状態から回転を始めるための「始動トルク」が自ら発生しないという物理的制約がある。
この課題を解決するため、単相誘導電動機には補助的な始動回路が組み込まれている。代表的な方式として、主巻線とは別に始動用コイルを設け、電気抵抗の差を利用して位相をずらす「分相始動方式」や、コンデンサを用いて意図的に電流の位相を90度近く進めることで擬似的な回転磁界を作る「コンデンサ始動方式」が挙げられる。特にコンデンサ始動方式は、始動トルクが大きく効率も良いため、コンプレッサーやポンプなど負荷の重い機器にも広く採用されている。
単相2線式と単相3線式の配電形態
単相電源の配電方式には、用途や規模に応じて「単相2線式」と「単相3線式」の2種類が存在する。単相2線式は、電圧線と接地された中性線の合計2線で給電する方式であり、主に照明器具や小容量のコンセント回路に使用される。
一方、現在の一般住宅やオフィスビルで主流となっているのが単相3線式である。これは単相変圧器の二次側巻線の中点から中性線を引き出し、その両端の電圧線(第1相、第2相)と合わせた計3線で供給する方式である。中性線と各電圧線の間からは100Vを取り出し、電圧線間からは200Vを取り出すことができる。これにより、同一の配電盤から照明用の100Vと、エアコンやIH調理器などの大出力機器用の200Vを同時に得られる利便性を備えている。
中性線欠相の危険性と保護
単相3線式において技術的に最も留意すべきは、中性線の断線、いわゆる「中性線欠相」による異常電圧の発生である。何らかの原因で中性線が断線すると、100V用の負荷が直列に接続された状態となり、それぞれの負荷のインピーダンス比に応じて電圧が不均等に分圧される。この際、負荷が軽い側の回路には100Vを大幅に超える過電圧が印加され、家電製品の焼損や火災の原因となるおそれがある。
このような事故を未然に防ぐため、単相3線式の主幹遮断器には、中性線の欠相による過電圧を検知して瞬時に電路を遮断する機能を持った「単3中性線欠相保護付遮断器」を選定することが、電気設備の保安基準において強く求められる。












