電圧の種類・単相電源と動力電源とは

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電圧とは

電圧は、基準点からの電位の差である。電圧の高さは電位の位置エネルギーと同意で、送電時においてはP = IRで示される電流・電圧の関係式により、同じ電力を送る場合は電圧が高いほど電流が小さくなるため、発熱によるロスが少なくなり、電力を遠くまで送ることが可能である。

電圧を理解するために、水圧と比較説明される。水圧が高ければ遠くまで水を送り出す事が可能であるが、強度の高い配管でなければ水圧に負け、破裂する。

同様に、電力ケーブルで高電圧を送電する場合、耐電圧性能の高いものを選定しなければ絶縁が破壊される。水圧と電圧は非常に似通った性質を持っている。

電圧と電流

電流とは、電路に流れる電子の量である。大きな電流を流すことで、モーターは高速で運転し、白熱電球は明るく点灯する。しかし、電子が電路を流れた場合、電気抵抗があれば電流は熱となる。人体に電流が流れれば感電となり、火傷やショック症状を引き起こす。

単純に「電圧が高いほど危険」というわけではなく、人畜が感電して危険を伴うのは、主に電流が原因となる。ドアノブなどで発生する衝撃や痛みは数万ボルトの高電圧であるが、いくら電圧が高くても電気容量が小さいため、十分な電流が継続的に流れないため致命傷にはならない。

一般に、30mA以上の電流が流れると人体に対して非常に危険であり、50mA以上の電流では、感電によって死亡するおそれもある。電力会社から送られる電源はもとより、発電機や蓄電池など、十分な電気容量のある電源から、40V以上の電圧が人体に印加されると、人体に大きな電流が流れ、重篤な被害が発生する。

前述のように、静電気は10,000V~20,000Vという高い電圧であるが、ドアノブに触って致命的な感電事故にはならない。静電気は電圧が高いものの電流が微弱なため、小さな刺激を受けるだけである。

そのほか、ライターの着火に使用されている「圧電素子」も、数千ボルトの高電圧を発生させてガスに着火する仕組みをもつ部材であるが、発生する電流は微弱なため、人体に圧電素子からの電流を流しても、小さな痛みを伴う程度で、感電することはない。

静電気の電圧で大きな電流を流せないのは、これを水位に例えると容易に理解できる。電圧を水位高さに置き換え、水位高さ10,000~20,000mから水滴を落としても、水量が少ないため危険はないが、高さ100mから継続的に大量の落水があれば、衝撃が大きくなる。

電源を入れたテスターの写真

電圧の種類

電気設備で使用される電圧として、直流と交流がある。電圧が高くなるほど危険性が増し、保安のための措置のレベルが上がっていくため、低圧、高圧、特別高圧という3種類に区分して管理される。

低圧・高圧・特別高圧の区別

低圧受電は交流電源であり、3φ400V、3φ200V、1φ200/100V、1φ100Vといった区分の電圧を、必要に応じて選択し受電する。業務用の需要家では、3φ6,600Vの高圧受電を行う。工場物件では、6,600Vではなく3,300Vという電圧で受電する場合もある。

さらに大規模な物件であれば、特別高圧受電である。都市部では3φ22,000Vのスポットネットワーク方式が普及しているが、地方都市では3φ33,000Vや3φ66,000Vなど、特別高圧による送電線や配電線から受電を行う。

低圧の電気方式

一般家庭では、交流100Vの電気機器が一般的であり、壁に設置されているコンセントは100Vを供給する製品が一般的である。契約アンペアが30Aに満たない小規模な住宅では、単相2線式による1φ100Vのみを供給することもある。

エアコンやIHクッキングヒーターなど、比較的大容量の電気機器を設置している住宅の場合、100Vでは機器を動作できないため、単相2線式よりも効率が良い、単相3線式の受電を行う。業務用の回転機械やエレベーターが設置したければ、三相3線式による3φ200V電源の受電も考えられる。

対地電圧の制限

十分な電気容量を持つ発電機や蓄電池からも感電するおそれが高く、高電圧ほど危険性が増くなる。30V程度の感電であれば、人体を流れる電流は微小であり、致命的な損傷を受けることは稀であるが、100Vを超える電圧で感電すれば、人体を流れる電流が大きくなり、致命傷である。

感電被害を防止するため、電気設備技術基準において「屋内配線として敷設して良い電圧の上限値」を対地電圧として定めている。対地電圧とは、電源線と接地線との電圧の差である。

単相3線式の場合、電圧表記は「200/100V」であり、200Vを得ることができるが対地電圧は100Vである。単相3線式では、黒・白・赤の3本線で電源供給するが、白を中性線0Vとして、黒-白は+100V、赤-白は-100Vと考えるため、対地に対してはどちらも100Vとなる。これにより、黒線と赤線の電位差は200Vであるが、人体は中性線と同電位の0Vであり、黒または赤の一方の線を原因として感電した場合、100Vの電圧が人体に印加されることになる。

200Vの電気機器は動作させつつ、感電に対しては100Vまでという安全性を確保している。対して、三相3線式である3φ200Vの電源の場合、黒・白・赤の3線は全て200Vが印加されているため、対地電圧は200Vである。

日本国内では、住宅の屋内電路の対地電圧を150V以下とするように制限されている。これは戸建住宅に限らず、寮やマンションといった生活を営む部屋を含むものとされており、動力電源は共用部やエレベーター等に限られることになる。電気設備技術基準や内線規程では「対地電圧を150V以下に抑えること」という規制が明記されており、これが法的な対地電圧の制限となる。

人体に容易に触れないよう安全性を強化した敷設方法であれば、対地電圧の基準が緩和され、300Vまでの電圧が許可される。また150Vを超える電路は、人が容易に触れない高さに敷設することや、過電流遮断器や漏電遮断器で保護するといった安全性の強化を図れば、対地電圧300V以下で使用できる。

なお、住宅に付属した店舗や工場などは、コンプレッサーやファン、モーター等を搭載した加工器具など200V以上の動力電源を必要とすることが多いため、150Vの制限は適用されていない。また、単独で運用する2kW以上の大型電気機器については、三相200Vを使用できる緩和規定があるが、基本的に住宅内で用いる機器は単相機器であり、実例はあまりないと考えて良い。

建物で使用する電圧の種類と特徴

単相2線式 1φ105V

2本の電線で、単相105Vを供給する配線方式である。建物内に取り込まれる電線は2本しかなく、電力会社が供給する変電所からの電源は3線式であるため、負荷容量が偏る「不平衡」が発生することになる。電力会社では配電線の不平衡を防止するため、小規模住宅など限られた規模の需要家に対してのみ供給している配電方式である。

照明やコンセントのほか、小型の家電のみが設置されているワンルームマンションなどに採用されることが多い。負荷の不平衡は、本来単相三線式が完全に平衡していれば中性線(白線)に電流が発生しないが、不平衡状態では中性線にも電流が流れることになり、電力損失につながってしまう。

かつ、ブレーカーは3線をそれぞれ単独で保護しているため、赤線または黒線のいずれかに大きな電流が流れた場合、まだ電流を流すことができる電路であっても遮断されるという状況が生まれる。不平衡により赤相側、黒相側の電圧も同時に変動し、機器の正常運転にも支障を来すことがある。

このように不平衡状態では電路の使用効率が著しく低下するため、最大限の効率を得るために不平衡を防止しなければならない。

単相3線式 1φ210/105V

3本の電線で、単相の105Vと210Vを共に供給できる配線方式である。105Vは照明やコンセント、家電に使用し、210VはルームエアコンやITクッキングヒーターといった大容量な電気機器への電源供給に用いる。

多くの需要家が単相3線式で受電しており、30A程度の小規模から、10kVAを超えるような大容量まで対応している。

三相3線式 3φ210V Y-Δ(スターデルタ)

3本の電線で、三相210Vを供給する配線方式である。黒・白・赤の全ての電線間で210Vを確保できる。三相電源は「動力電源」とも呼ばれ、回転機械に対して効率良く回転力を与えられるため、モーター類への電源供給に適している。

単相電源はその名称のとおり、位相が1つのため回転方向への力を生み出せないため、モーターを回すには特殊な始動装置が必要である。三相電源は120度ずつ位相をずらした3本線を使用しており、電源を供給すると自然と回転方向への力が加わる。これは回転磁界による特性であり、モーター類は容易に回転できる。

動力電源はほとんどが業務用であり、家庭用の電気機器として供給することはほとんどない。

三相3線式 3φ415V Δ-Y(デルタスター)

3本の電線で、415Vを供給する配線方式である。考え方は3φ210Vと同様で、位相が120度ずつずれているので、回転磁界によりモーター類の回転特性が良好である。

電圧が高く、より高いトルクを発生できるので、大型の電動機への電源供給に適している。50kW~100kWといった大型電動機は、3φ200Vの動力電源では電流が大きくなってしまい、始動時の負担が大きくなるため、電圧を上げて電流値を低く押さえるのが合理的である。

415Vの電圧を使用できる電気機器は、多くが特注生産品であり、故障時の部品交換や設備改修に時間を要すことがある。210V機器よりもメンテナンス性が悪くなることも考えられるので、計画時には十分な注意が必要である。

三相4線式 1φ210/105V、3φ210V Y-Δ(スターデルタ)

4本の電線で、単相210/105Vと三相210Vを供給する配線方式である。変圧器の共用により設備スペースの縮小が図ることができるため、業務用施設や工場での採用が主流であるが、特殊用途を除いて新規採用はほとんどない。

三相4線式 3φ415V、1φ240V Δ-Y(デルタスター)

4本の電線で、単相240Vと三相415Vを供給する配線方式である。210V/と同様、特殊用途に限られた配電方式であり、新規採用の実績はほとんどない。

動力電源とは

一般に動力電源と呼ばれる電源は、三相3線式の電源を示す。3本の電線でそれぞれ位相が違う電源を供給する電源方式で、回転機械に都合が良い電源である。

一般家庭では動力電源を引き込むことはない。多くは工場などで使用するモーターの電動機や、大型の電熱器、業務用の大型空調機など、大きな電気容量を必要とする電気機器や、回転機械を使用する場合に、動力電源が必要である。

動力から電灯を取る方法と注意点

動力は位相がずれた3本線であり、2本で使えば単相である。三相3線式3φ210Vの3本線のうち、2本の電線を取り出せ210vとして利用できる。これを単相210Vの機器に接続すれば、単相負荷は正常動作する。単純に、2本線を使用するだけで、特殊なトランスは必要ない。

高圧受電している需要家であれば、電気料金の契約は動力を主体としたデマンド契約なので、動力電源から電灯電源を確保することに対して、電力会社や需要家内の「不平衡」に注意すれば、これが問題にはならない。

低圧で動力契約している場合、動力の電気料金は電灯電源よりも安価なため、電力会社では「動力から電灯を得る」という行為を禁じている。

動力電源は従量料金を安価に設定しており、電灯として使用すると電気料金が安くなる。電力会社に不利益が発生するため、契約違反として約款に記載されている。

動力電源に電灯を接続しているのが発見された場合、電気の供給を停止されたり、違約金の支払いを求められるなど、何らかの措置を取られることが考えられる。

動力210Vから単相105Vを得ることはできないため、変圧器を使用しなければならない。電力会社と動力契約を結び、変圧器で210Vから105Vに降圧し、単相105V負荷を確保する行為は契約違反になりのすので注意を要する。これを悪用した「節電器商法」なる手法が流行したこともある。

電圧を下げる節電手法

正規の電圧は100V前後であるが、これを95V~90Vに降圧して負荷への供給電圧を落とし、節電するという方法である。電気料金が削減できるものもあるが、機器の寿命を短くしてしまうものもあり、注意が必要である。

 
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