スロッシング
スロッシング現象のメカニズム
スロッシングとは、受水槽、オイルタンク、プールなど、液体を貯蔵している容器に外部から振動が加わった際、容器内の液体が共振し、液面が大きく波打つ現象のことである。
特に問題となるのは、地震によって発生する「長周期地震動」との共振である。高層ビルや巨大な石油タンクなどは、数秒から十数秒という長い固有周期を持っている。地震波の中にこれと同じ周期の揺れが含まれていると、共振現象によってエネルギーが増幅され、震度が小さい地域であっても、タンク内の液体だけが激しく揺れ動く事態が発生する。この液面の揺動は長時間続くことが特徴であり、構造体への負担を増大させる。
タンク本体と構造への被害
スロッシングによって発生する流体力は非常に大きく、タンクの側壁や天井板を破壊するほどの衝撃力を持つことがある。過去の大地震では、石油タンクの浮き屋根(液面に浮かせて揮発を防ぐ蓋)が揺動によって傾き、沈没したり破損したりすることで火災発生の原因となった事例がある。
また、波打った液体が通気管やマンホールから外部へ溢れ出す「溢流(いつりゅう)」も重大なリスクである。引火性の液体であれば火災の延焼につながり、化学薬品であれば環境汚染を引き起こすため、防油堤の設置や、タンク上部の空間(エアドラフト)を十分に確保する設計が求められる。
水位制御への悪影響と対策
建築設備分野における受水槽や膨張タンクでは、スロッシングによる波立ちが水位センサーの誤動作を引き起こすことが課題となる。
タンク内部には、給水を制御するためのボールタップや、水位警報を発する電極棒、フロートスイッチが設置されている。液面が大きく揺れると、実際の水量は変化していないにもかかわらず、センサーが「満水」と「減水」を交互に検知してしまい、ポンプの頻繁な発停となるチャタリングや、警報の誤発報を招く。
こうしたトラブルを防ぐため、センサーの周囲を円筒状のカバーで覆う防波管(スロッシングガード)を設置し、局所的に波立ちを抑える物理的な対策を行う。また、制御回路側においても、検知信号が一定時間継続しなければ動作させない「オンディレイタイマー」を組み込み、一過性の揺れによる誤動作をキャンセルする電気的な対策を併用するという対策も取られる。
内部構造による揺動の抑制
タンクの形状や内部構造もスロッシングの発生に影響を与える。対策として、タンク内部に防波板(バッフルプレート)を設置し、液体の流動抵抗を増やすことで減衰効果を高める手法が採られる。消防車やタンクローリーなどの移動タンク貯蔵所においては、走行中の振動による重心移動を防ぐため、この防波板が設けられている。












