増幅器(ブースター)
伝送損失の補償と信号品質
増幅器は、テレビ受信アンテナで捉えた放送信号を電気的に増幅し、同軸ケーブルの伝送損失や、分配器・分岐器による挿入損失を補償するための機器である。ブースターとも呼ばれる。
テレビ共聴設備において、アンテナから末端のテレビ端子までの距離が長い場合や、多数の部屋へ分配する場合、信号レベルは物理的特性に従って減衰する。受信レベルが低下すると、地上デジタル放送ではブロックノイズが発生し、最悪の場合は受信不能(ブラックアウト)となる。増幅器は、この減衰分を見込んであらかじめ信号レベルを持ち上げ、システム全体のレベルダイヤグラムを適正に維持するために不可欠な機器である。
S/N比と設置位置の重要性
増幅器の選定と設置において最も重要な概念は「S/N比(信号対雑音比)」である。増幅器は入力された電気信号を忠実に拡大する装置であるが、信号(Signal)だけでなく、同時に混入しているノイズ(Noise)も等しく増幅してしまう特性を持つ。
したがって、C/N比の悪化を起こしている微弱な信号を増幅しても、画質は改善されないどころか、増幅器内部で発生する熱雑音が加わり、品質はさらに悪化する。これを防ぐため、増幅器は可能な限り「アンテナの直下」に設置し、ノイズが混入する前の純度の高い信号を増幅するのが鉄則である。アンテナから離れた場所で減衰した信号を増幅しても、S/N比は回復しない。
定格出力と利得調整
増幅器には、性能を示す指標として「利得(ゲイン)」と「定格出力レベル」がある。利得は入力信号を何dB持ち上げられるかを示す値であり、定格出力レベルは歪みなく出力できる上限値を示す。
「利得が高ければ高いほど良い」ということはなく、出力レベルが定格を超えると、信号波形が歪み、複数のチャンネル同士が干渉する「相互変調」が発生する。デジタルの場合、これは致命的なビット誤り率の増加につながり、画面がフリーズする原因となる。施工時には、レベルチェッカーを用いて入力レベルを測定し、内蔵のアッテネーター(減衰器)や利得調整ボリュームを操作して、定格出力範囲内に収める調整作業が求められる。
周波数帯域と4K・8K対応
増幅器は、増幅対象となる周波数帯域に応じて選定する必要がある。地上デジタル放送(UHF)、BS・110度CS放送、FM放送など、それぞれの周波数帯に対応した機種を用いる。かつてのアナログ放送時代や初期のBSデジタル対応品は、周波数帯域の上限が2150MHzや2600MHzであったが、現在の新4K・8K衛星放送は3224MHzまでの広帯域を使用する。
古い増幅器をそのまま使用すると、この高い周波数帯域がカットされてしまい、一部のチャンネルが受信できないトラブルとなる。改修工事においては、増幅器だけでなく、分配器や壁面テレビ端子も含めて3224MHz対応品(SHマーク付き製品など)へ更新する必要がある。また、この帯域はWi-Fi等の無線LAN電波と干渉しやすいため、シールド性能の高い高シールドタイプの増幅器を選定する。
電源供給と重畳方式
増幅器を動作させるためには電源が必要である。屋内用のラインブースターであればAC100Vコンセントから直接電源を取るものが多いが、屋根上やマストに取り付けるプリアンプ型の場合、電源配線を別途敷設するのは施工上困難である。
そのため、室内に設置した電源部(PS)から、信号線である同軸ケーブルにDC15Vの直流電気を乗せて送る「重畳給電方式」が一般的である。この際、電流通過型ではない分配器やテレビ端子が途中にあると電気が遮断され、増幅器が動作しないため、伝送経路上の機器はすべて電流通過型(通電型)で統一する。












