絶縁油

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絶縁油

電気機器の絶縁と冷却を目的として使用される油で、引火点は130℃程度、発火点は320度程度の、ガソリンや軽油、重油といった燃料として用いられる他の可燃性液体よりも安全性が高い油が用いられる。絶縁油は変圧器やコンデンサに封入され、周囲の導体や大地との絶縁を確保するために用いられるほか、電流によって発熱する鉄心の冷却にも使用されている。

変圧器に通電すると、負荷状況による加熱と冷却によって鉄心温度が変化し、呼吸作用が発生して酸素や水分の出入りが発生する。絶縁油と空気は直接触れないよう窒素やコンサベータによって遮断されているため、酸化が進行しないよう配慮されている。しかし、パッキンの劣化やシール不良、コンサベータ破れによって絶縁油と空気が触れると、絶縁油内部に水分が蓄積し、酸化が進む。

絶縁油への水分含有や、絶縁油の酸化が著しく進行すると、絶縁油内部にスラッジ(泥状物質)が発生し、コイルや鉄心に付着し始める。スラッジは冷却効果を妨げ、熱による劣化が促進されるため、放置すると絶縁破壊につながるおそれがある。

長期間に渡って使用している絶縁油は、所定の性能を満足しているか定期的な試験を行う必要があり、試験により必要性能を下回る場合は、絶縁油のろ過や入れ替えを行わなければならない。

電気設備の分野で広く用いられている、高圧受変電設備に収容されている変圧器を例にすると、下部に油抜きコックが設けられており、容易に油抜きが可能なよう配慮されている。変圧器を長期間使用している場合、内部の絶縁油を交換すると良い。ただし、電気機器内から油を外部に取り出すと、消防法上の危険物として管理しなければならないため、所轄の消防機関の指導に従って適切管理しなければならないため注意を要する。

特別高圧で用いられる大容量の変圧器では、油入変圧器やモールド変圧器といった一般的な冷却機能を持つ製品のほか、絶縁油を使用せず、SF6ガスを用いたガス絶縁変圧器が広く使用されている。絶縁油を用いた絶縁・冷却機構と違い、油が存在しないことにより保守点検が簡素化するという利点があり、GISとの組み合わせで利用されている。

絶縁油の種類

絶縁油は、成分に応じて1~7種類に分類され、さらに各類に対して何号かに細分化されている。電気設備用の油入変圧器に用いる絶縁油は1種2号が一般的で、絶縁性能が高く冷却効果も同様に高いことが要求される。

JIS 2320 : 2010(追補1)において、電気絶縁油の成分が規定されている。電気変圧器に用いる絶縁油は1種2号が標準とされ、厳寒地以外では1種3号、大容量変圧器では1種4号を主な用途と設定している。

絶縁油の劣化測定

絶縁油の分析は、絶縁油に高電圧を印加して絶縁破壊電圧を測定する「絶縁破壊電圧試験」、酸性成分を中和する水酸化カリウムの量を測定する「全酸化試験」、絶縁油に含有する水分量を測定する「水分試験」などがある。

絶縁油内部に溶解した分解ガスを分析する「油中ガス分析試験」という手法も存在する。変圧器内部での放電や加熱により、絶縁油や絶縁体が熱分解すると、分解ガスとして「水素」「メタン」「エチレン」「アセチレン」などを放出するので、このガス量の大小で健全性を判断する。

絶縁油の劣化測定は初期において3年ごと、長期間使用した変圧器では毎年定期的に行う。絶縁油が劣化しているかを分析するには、変圧器内部の絶縁紙を直接分析して診断する必要があるため、油抜きを伴うため負担が大きい。

例として三菱電機では、絶縁紙のサンプルを絶縁油内に収容して変圧器内部コイルと同じ環境を作り、この絶縁紙だけを点検することで劣化状況を判断する「絶縁紙ポケット」と呼ばれるオプションを展開している。

変圧器内部に絶縁油が長期間封入されていると、水や水分の侵入により劣化が進むため、定期的な交換が必要となる。交換のために、一時的に通電を停止し、絶縁油を取り出すという作業を行う場合、絶縁油は危険物として管理しなければならない。一時的に変圧器の外に絶縁油を取り出す場合、危険物仮貯蔵の手続きを消防機関に届出してから交換するのが通常である。

絶縁油の消防法における規制

絶縁油は可燃性の油であり、消防法上は「第四類・第三石油類」の可燃性液体に分類される。貯蔵や取扱の容量によって規定されており、水溶性の場合は4,000L、非水溶性の場合は2,000Lが指定数量となるため、これを超過しての貯蔵や取扱は、一般危険物取扱所として取り扱わなければならない。

一般取扱所となった場合、消防法に準拠した保管方法や、取扱を行う設備からの保有空地の確保、専用の消火設備の設置など、多くの設備投資を必要とする。

しかし、絶縁油を変圧器内部の冷却・絶縁を目的として使用する場合、これら絶縁油は「電気設備」としての扱いとなり、消防法上の危険物として取り扱われない。ただし、所轄の消防機関によっては、特別な指導を行う場合があるため、事前に十分な協議をし、取扱いを確認しておくと良い。

絶縁油を大量に使用する産業用変圧器の特徴については油入変圧器・モールド変圧器の構造を参照。

 
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