ロンワークス(LONWORKS)
LONWORKSの基本概要とオープン化
LONWORKS(ロンワークス)は、アメリカのエシェロン社が開発した、LonTalk(ロントーク)通信プロトコルを用いて機器の制御や管理を行う分散型ネットワークシステムの総称である。主に建築物の空調、照明、防犯、防災などの自動制御システムにおけるフィールドバスとして広く採用されている。
従来のビル自動制御システムは、特定のメーカーが独自の通信プロトコルで機器を構成するクローズドなシステムが主流であった。LONWORKSは標準化されたプロトコルを用いるオープンシステムであり、異なるメーカーの機器やセンサー、アクチュエータを同一のネットワーク上に混在させて相互接続することが可能である。
これにより、機器故障時の代替部品の調達の選択肢が広がり、特定メーカーへの依存(ベンダーロックイン)を回避してシステム設計の自由度を確保する。
システム階層とBACnetとの連携
日本国内の中央監視システムの構築においては、システム全体の階層を分けて異なるオープンプロトコルを適材適所で組み合わせる設計が一般的である。中央監視装置や各フロアのコントローラ間を結ぶ情報系のメインバス(幹線)には、データ転送能力の高いBACnet(バックネット)が採用されることが多い。
一方で、末端のセンサーやバルブ、照明器具などを直接制御するフィールドバス(支線)には、機器間の細やかな通信に適したLONWORKSやCC-Linkが用いられる。メインバスとフィールドバスは専用のゲートウェイやルーターを介して接続され、プロトコル変換を行うことで、BACnetとLONWORKSがシームレスに連携するビルディングオートメーションシステムを構築する。
ニューロンチップと自律分散制御
LONWORKSの特徴は、「ニューロンチップ(Neuron Chip)」と呼ばれる専用のLSIを用いた自律分散制御アーキテクチャにある。DDC(ダイレクトデジタルコントローラ)による集中制御方式では、中央の制御装置にアナログ配線でセンサーやリレーを集約するため、配線長が長くなり、中央装置がダウンするとシステム全体が停止するリスクがあった。
LONWORKSでは、ネットワークに参加する各ノード(照明器具や空調ユニットなど)にニューロンチップが組み込まれている。チップ内部にはLonTalkプロトコルと制御プログラムが内蔵されており、各ノードが自律的に判断して通信を行う。中央監視装置を介さずにノード同士が直接データをやり取りできるため、一部の機器が故障してもシステム全体のダウンを免れる堅牢な制御網を構築できる。
通信仕様とネットワークトポロジー
物理的な通信媒体や配線方式については用途に応じて複数の仕様が存在するが、建築設備分野においては「FTT-10A(Free Topology Transceiver)」と呼ばれるツイストペアケーブルを用いた通信方式が標準的である。通信速度は78kbpsであり、バス型、スター型、リング型などを組み合わせた自由な配線形態(フリートポロジー)が許容される。
1つの通信チャネルあたり最大64個のノードを接続でき、ルーターを追加することでネットワークの拡張が可能である。ノード間でやり取りされるデータは「ネットワーク変数(NV)」として定義される。標準ネットワーク変数型(SNVT)と呼ばれる共通のデータ形式(温度、湿度、オンオフ状態など)を用いることで、メーカーが異なる機器間であってもデータの意味を正確に解釈し、連動動作を実現する。
建築設備における適用範囲と管理手法
実際の建築設備においてLONWORKSは、多岐にわたる用途で導入されている。主な適用例を以下に示す。
- 照明設備:スケジュール制御、照度センサーと連動した調光、人感センサーによる点滅制御。
- 空調設備:VAV(可変風量装置)の制御、FCU(ファンコイルユニット)の温湿度管理、給排気ファンのインバーター発停制御。
- 衛生設備:給排水ポンプの運転状態監視および発停制御、水槽の水位監視。
- 計量管理:電力量計、流量計などの積算データの収集とデマンド監視。
これらの機器の設定やメンテナンスを行うためのインターフェースとして、専用のネットワーク管理ツールが用いられる。近年ではWebサーバー機能を内蔵したインターフェースユニットが広く普及しており、専用ソフトウェアを持たない汎用のWebブラウザからでも、パラメーターの変更やネットワーク構成の確認が可能な環境が構築されている。












