電気設備の知識と技術 > 弱電・放送・避雷設備 > 中央監視設備の計画
ビルや施設の設備の自動化、故障の監視・記録といった「エネルギー管理」「施設管理」を行うための機能を搭載した装置を、中央監視設備と呼ぶ。従前の中央監視設備では、専用配線を建物全体に敷設し、多数の分散盤を設けて操作するような大掛かりなものであったが、現在はWindows等を使用したサーバーシステムが主流であり、個人持込のパソコンを接続して監視するなど、汎用性の高い設備が普及している。
受変電設備の操作・監視・計測、照明発停、空調機の操作・監視・計測、火災信号のやり取り、セキュリティ管理などが代表的な機能である。小規模ビルで採用される「警報盤」「空調集中コントローラー」「照明制御盤」等をパソコンにまとめたようなものを想像すれば、理解が容易くなる。
中央監視設備の幹線として、光ケーブルやLANケーブルを施設内に敷設するが、そのままLANケーブルや光ケーブルが、照明器具や空調機に接続されるわけではない。インターフェース統合用の装置を、既存の動力制御盤内、空調制御盤や自動制御盤(CP盤)、個別のリモートステーション盤(RS盤)内に設置し連携する。
照明制御や受変電機器、空調設備、防災設備が同一メーカーになることはあり得ないため、それぞれを接続するためには統合インターフェースが必要である。中央監視という一つのシステムで設備機器を運用させるには、それぞれの機器に統合用のインターフェースを組み込み、中央監視装置で操作できるようにシステムを統合する。
中央監視メーカーが独自のネットワークプロトコルを定義していることが多いが、バックネット(BACnet)という共通プロトコルを使用すれば、メーカーを問わず接続が容易となる。
これはオープンプロトコルとも呼ばれており、BACnetに接続するための「Icont」と呼ばれるコントローラーを設け、中央監視装置に取り込んで統合制御可能となっている。
中央監視設備は、本体装置よりも「制御や監視を行うためのポイント組み込みに対するエンジニアリング費用」のコストが大きくなる傾向にある。そのため、無計画にポイントを組み込むと、ポイント数が多くなり過ぎてしまい、コストアップにつながる。
小規模施設の警報盤を計画するのと同様、必要なポイントが最小限になるよう計画し、ポイント数を削減することが重要である。
動力制御盤で換気ファンを2台、空調機を2台制御している系統で、全機器の故障ポイントを取ると4ポイント必要になるが、動力制御盤故障一括を1ポイントとし、動力制御盤面の故障表示を現地確認する計画とすれば、中央監視側は3ポイント削減できる。
クライアントが「全ての警報を中央監視に表示する」という仕様書を策定している場合、上記の削減方法は許容されないことも考えられる。運用に関わる部分を無許可で削減するのは避けるべきであり、VECDを考えて計画する場合は、施主の意向を事前に十分確認しなければならない。
中央監視では、機器の操作が可能である。操作を伴う設備として代表的なのは「ファンの発停」「遮断器の開閉」「照明のオンオフ」などがあり、スケジュールやタイマー、遠隔手動で操作が必要な装置を確認しなければならない。例として、真空遮断器(VCB)が遠隔操作できないと、中央監視を用いた自動復電制御ができなくなる。
換気ファン等は、操作対象分のポイント数を見込む。照明のオンオフはマグネットスイッチやリモコンリレーを遠隔操作することが求められるため、電灯分電盤に組み込んだマグネットスイッチの個数や、リモコンリレーの台数とパターンに応じた数量を、ポイント数を見込む必要がある。
機器の動作状態や警報を、どこまで表示するかを設定する。ブレーカーの動作、水槽の満水や減水など、故障と判断される内容を中央監視に送信し、建物管理者に知らせ、事故の発生した内容と時間を記録する。
例として受変電設備の場合、遮断器が動作したことは全て故障として表示する。ヒューズが切れたり、漏電が発生するなど数十の故障警報が受変電設備には組み込まれており、これを「全て表示する」または「代表信号1ポイントだけ表示する」のいずれかにより、コストは大きく変動する。
前述した動力制御盤のように、故障代表信号を1ポイントだけ中央監視装置に取り込み、何が故障したかの詳細は現地で確認するようにすれば、ポイント数を大幅に削減できる。ただし、変電所が数多く配置されていたり、変電所と監視場所が遠いといった計画では、故障発生後の即時対応に支障をきたすおそれがあるため、中央監視装置に警報を個別表示するのが良い。
電力量計や水道メーターを中央監視装置で計量・計測し、エネルギー管理を行うことも中央監視設備の重要な機能である。無計画に軽量してもデータが有効活用できないため、どのメーターを、どう区分して集計するかを決めなければならない。
電力量計は遠隔計量に対応するが、水道メーターは現地読みとするといった使い分けも考えられ、設計者から施主に対して提案を行うと良い。
中央監視設備における「非常」と呼ばれる状態は、「火災」と「停電」である。
火災は、建物利用者の避難が優先される。火災を広げる可能性がある空調や換気を停止させ、消火設備や警報設備が適正に動作するよう制御しなければならない。
停電は、多くの設備が動かなくなり、操作や表示を行うべき機器から応答が帰ってこなくなる。設備が管理から脱落することで、「操作を指示しているのに返事が来ない」「状態が表示されない」といった事象が発生し、これは「状態不一致」という故障警報で表示される。
停電では、この状態不一致が全設備に発生し、システムが過負荷となりストップしてしまうおそれがある。そのため、停電による状態不一致は表示を抑制し、停電中でも動作しなければならない重要設備を、問題無く制御するよう設計されている。
中央監視設備に火災信号が入力された場合、中央監視装置が火災制御モードに切り替わり、非常モードでの動作となる。排煙設備の動作を阻害する換気設備、空調設備を停止させる。避難に係る制御も同時に実行され、電気錠制御盤に火災信号が伝送され、電気錠で制御されている扉は一斉に解除される。
火災発生による停止信号は、中央監視の中では最上位の命令であり、タイムスケジュールによる自動運転が設定されていたとしても、火災信号からの命令が上書きされる。
火災制御中にスケジュール設定の時刻になったとしても、機器類が運転を開始されたり、停止するといったことはない。人の手により、火災状態が解除され、火災状態が解除されない限り火災制御モードは継続される。
火災鎮火後は、人の手によって火災復旧を行う。復旧後は、火災時に停止した状態まで制御機器類は自動復帰し、定常状態に戻る。
停電時の中央監視設備は、停電中の制御、自家発電設備が運転している時の動作、復電動作の三点が主体となる。停電中は、中央監視設備で制御するべき機器類が、全て応答なし、かつ状態不一致となるため、これら警報が表示されないよう抑制制御が行われる。
自家発電設備が運転する場合は、遮断器の動作やダブルスローの動作などが自動化され、必要な範囲に電力が供給されるように制御される。停電復旧後も、定常状態のスケジュール運転に復旧するよう自動制御されるのが通常である。
中央監視設備で施設の電気機器類を監視する場合、一般的には、モニタに表示された画面を管理する。システム上での監視になるため、警報が発生した場合には、強制的に関連画面に移行させたり、ワーニング表示を画面上にポップアップさせたりして、注意を促す。
中央監視装置は異常警報を表示し、ベルを鳴動させる機能を持っているが、重要な系統が施設内にありシステムモニタ上の異常警報管理だけでは不足と考えられる場合、アナンシェータと呼ばれる集合表示灯を設置する。プロセス異常などが中央監視設備に発生した場合、アナンシェータはLEDランプを点灯させ、警報や音声信号を発して注意を促す。
中央監視設備にアナンシェータを組み込んだ場合、本体の設置コストが高くなるため、アナンシェータと同様の機能をシステム内に組み込み、システム画面のひとつとして構築し、アナンシェータ本体を設置しないという方法もある。
受変電設備の単線結線図や、空調・熱源機器の運転・動作状態を一度に確認するために、大型のグラフィックパネルを中央監視室に設置する場合もある。
グラフィックパネルは非常に高価であり、セットアップ費用も必要である。設備増強や更新に伴うシステム変更の際に、グラフィックパネル画面の書き換えが発生するためコストが大きくなる。
グラフィックパネルを設置せず、37インチや42インチの中型液晶ディスプレイを設置し、設備機器系統図を表示することで、グラフィックパネルの機能に替えるという方法も採用される。
リモートステーションは、中央監視装置に至る配線の中継点となる場所に設置する盤で、末端の電気機器と中央監視装置を接続するための橋渡しとして使用される。
中央監視室から末端の電気機器に直接電線を接続すると、信号線の本数が過大になり効率が悪いため、各所EPSにリモートステーションを配置し、中央監視主装置から各所EPSまでを光ケーブルやUTPケーブルで敷設することで、データ集約によって配線本数を削減し、施工の合理化を図る。
リモートステーション(RS盤)から末端電気機器までは、メタルケーブルを使用するなど、制御監視対象の電気機器に応じたケーブル種別を敷設し、これも配線の合理化が図られる。リモートステーションと電気機器は1対1の関係になり、中央監視室とリモートステーションの間は、光ファイバーやUTPケーブルによる多重伝送となる。
コントロールパネル(Control Panel)の頭文字をとった盤で、主に空調・換気設備の自動制御を行う機能を持った自動制御盤である。RS盤と連携し、中央監視装置からの命令に応じて、空調機や換気設備の自動運転・故障監視・計測を行う。
機器制御のためのタイマーや温度計・湿度計などが内蔵されており、電気機器の計装や自動制御が行われる。
中央監視設備のモニタ上では、換気ファンやファンコイルユニットの空調機運転はもちろん、施設全体の受電遮断器の操作までを行える。
重要度の高い機器をマウスクリックで操作するのは危険であり、誤操作で主遮断器を動作させてしまうといったヒューマンエラーによる事故を防止するため、重要機器操作画面の閲覧制限や、操作制限を行うことも考える必要がある。
受変電設備の操作用コンソールを別に設け、専用キーを差し込まないと受変電設備の操作ができないようロックする、といったヒューマンエラー防止方法もある。コストアップになるが、必要機能と考えて施主提案することも設計者の業務として重要である。
中央管理室は建築基準法で規定された、施設を管理するための部屋であり、防災センターは消防法で規定された、施設を管理するための部屋である。考え方と用途の違いについて解説する。
中央管理室は1,000㎡を超える地下街を設ける場合(排煙と換気を中央管理室で管理しなければならない。)、中央式の換気設備を設置する場合、非常用エレベーター設備を設置する場合のいずれかに該当した場合に、設置しなければならない。
設置場所は建築物の管理事務所や守衛室など、施設の管理者が常時滞在する、避難階・直下階・直上階でなければならない。
防災センターは消防法に規定され、11階建て以上で延床面積10,000㎡を超える場合、5階建て以上延床面積20,000㎡を超える場合には、設置しなければならない施設である。延床面積50,000㎡を超えた場合、総合操作盤が設けられている中央管理室の場合にも、防災センターとして運用しなければならない。
建物高さが31mを超え非常用エレベーターを設けた事務所において、延床面積が10,000㎡を超えていなかった場合、中央管理室があっても防災センターが必要ないことがある。この場合、防災センターを設置せず、中央管理室のみの建物として運用していく。
防災センターとして該当しない運用であれば「防火管理体制指導マニュアル」の準拠や「防災センター要員」への法的規制・指導が事実上ないため、管理コストを緩和できる。
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