ライトアップ
照明器具により、建築物や工作物の輝度をより大きくする設計手法またはシステムの総称。単に暗闇を照明器具によって照らすという実用的な目的だけでなく、景観デザイン性の向上、経済の活性化、人々の心理的充足感を生み出すといった役割がある。昼間とは異なる「光の演出による造形美」を創出でき、建物のテクスチャや立体感が強調される。
スポットライトや投光器を用い、建物やモニュメント、橋、樹木などを照射することで非日常感や賑わい感を演出する手法であり、外壁や植栽を照らす演出が多くの建物で採用されている。
ライトアップによって得られる非日常感は、照射対象の物語性を際立たせ、ブランド価値を向上させる効果が期待できる。光は人を惹きつける強力な誘引力を持ち、滞在時間の延長を促すといった効果もある。
太陽から放たれる光は、上空から地面方向に照射されるのが自然な方向であるが、ライトアップは下面から上方向に行われるのが一般的である。夜間に下方向から照射された対象物は、非日常的な景観を創り出し、高い演出効果を得られる。
大規模なイルミネーションイベントなどは、宿泊客の増加や周辺飲食店への直接的な経済波及効果が期待できる。近年では、LED技術の向上により、フルカラーの調光や動きのある演出が容易となった。これにより、季節やイベントに合わせた柔軟な景観形成が可能となっている。
省エネルギーと光害への配慮
ライトアップは必要な照度確保を行うのを主要な目的としておらず、演出の手法として行われる。機能的な明るさを得るための照明器具ではないため、省エネルギーという観点からすれば多用を避けるべきであるが、賑わい感を得るために欠かせない手法であることから、長寿命かつ省電力の照明器具を使用することが求められる。
ライトアップによって照射される光は、多くが上空に向けられる。照明器具の光を天空に向けるのは、「星が見えなくなる」といった「光害」の大きな原因となるため、上空に漏れる光の総量を規制することも、照明設計の重要な要素となる。ライトアップの光は建物や植栽にのみ照射するよう角度調整し、できる限り天空に向けて照射しないよう注意する。
過剰な光は動植物の生態系や近隣住人の生活、天体観測に悪影響を及ぼすことを理解し、照明器具にルーバーやカバーを取り付けるなどにより漏れ光を抑えるなど、環境に配慮した設計が求められている。
照明設計の基礎知識や技術の解説については照明設計の基礎知識と設計手法を参照。












