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遅れ電流

誘導性負荷による位相の遅れ特性

遅れ電流(Lagging Current)とは、交流回路において電圧の位相に対して、電流の位相が時間的に遅れて推移する現象を指す。白熱電球や抵抗器などの「抵抗負荷」では電圧と電流の位相は一致するが、コイル(インダクタンス)を含む「誘導性負荷」においては、電流の変化を妨げる逆起電力が発生するため、電流の立ち上がりが電圧よりも遅れる物理的特性を持つ。

理想的なコイル単体であれば位相は90度(π/2)遅れるが、実際の電気機器(電動機、変圧器、溶接機など)は抵抗成分も含んでいるため、電圧と電流の位相差(力率角 θ)は 0 < θ < 90° の範囲となる。この位相のズレが、電力効率を低下させる根本的な要因となる。

無効電力の増大

電動機を回転させるなど実際の仕事に寄与するのは有効分のみであり、無効分は機器と電源の間でエネルギーが行き来するだけで消費されない「無効電力」となる。遅れ電流が大きい(力率が悪い)ということは、無効電力の割合が増大し、皮相電力(変圧器や電線に流れるトータルのエネルギー)が無駄に肥大化していることを意味する。

配電線路における電圧降下と電力損失

遅れ電流の増大は、配電系統に対して「電圧降下」と「電力損失」という二重の悪影響を及ぼす。

配電線路の電圧降下近似式は e ≒ I(Rcosθ + Xsinθ) で示されるが、遅れ力率(sinθ > 0)の状態では、線路リアクタンス X と無効電流成分の積が電圧降下を助長する。これにより、受電端電圧が低下し、照明のチラつきや電動機のトルク不足を招くおそれがある。また、無効電流分も含めた全電流が電線を流れるため、電線抵抗によるジュール熱(I²Rロス)が増加し、送電効率が著しく悪化することも懸念される。

進相コンデンサによる補償原理

遅れ電流による弊害を解消するため、負荷と並列に進相コンデンサ(Static Capacitor)を接続すると良い。コンデンサはコイルとは逆に、電圧に対して90度進んだ電流を流す特性を持つ。

この「進み電流」を人為的に注入することで、負荷が発生させる「遅れ電流」を打ち消し、電源側から見た合成電流の位相差を縮小させることができる。これを力率改善と呼び、電力会社が定める力率割引制度の適用による経済的メリットだけでなく、設備容量のゆとり確保や電圧安定化という技術的メリットをもたらす。

進み力率、遅れ力率と力率改善については力率改善と進相コンデンサ容量計算を参照。

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