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ノップがいし(碍子)

ノップがいし(碍子)の概要と特徴

ノップがいしとは、昭和初期から高度経済成長期にかけての木造住宅で主流であった「がいし引き工事」に使用される、磁器製の絶縁支持物のことである。英語の「Knob(ドアノブ、つまみ)」に形状が似ていることからその名がついた。

本体は白色の陶磁器で作られており、中心に固定用のネジ穴が貫通している。側面には電線を保持するための溝が設けられており、ここに絶縁電線(IV線)を沿わせて固定する構造となっている。現代の住宅配線では、施工が容易で防火性に優れたVVFケーブル(フラットケーブル)による配線が主流となったため、新築の実用設備として採用されることは極めて稀である。

がいし引き工事の施工ルールと離隔距離

ノップがいしを使用した配線工事(がいし引き工事)は、電線が露出した状態で設置されるため、感電や漏電火災を防ぐために電気設備技術基準および内線規程によって離隔距離が定められている。

  • 電線相互の間隔:6cm以上確保すること。
  • 造営材(壁・天井)との離隔:2.5cm以上確保すること。
  • がいしの支持点間距離:2m以下とすること。

これらの数値は、電線がたるんで接触したり、湿気によってトラッキングが発生したりするのを防ぐための安全基準であり、施工時には必ず遵守しなければならない。

古民家の天井照明に配線するノップ碍子

施工技術:バインド線による結束

ノップがいしへの電線固定には、インシュロックなどの樹脂製バンドではなく、バインド線と呼ばれる被覆付きの金属線(またはIV線の被覆等)を使用する。

がいしの溝に電線を合わせ、バインド線を用いてたすき掛けをするなどし、強固に結束しなければならない。結束が緩いと地震などの振動で電線が外れ、短絡事故につながる恐れがある。かつては電気工事士の技能試験における必須課題であったが、現在ではノップ碍子への施工を行ったことのある職人も少なくなっている。

現代における用途と意匠的価値

機能面ではVVFケーブル配線に取って代わられたが、近年ではその独特のレトロな形状や、碍子の持つ無機質な美しさが再評価されている。

古民家カフェのリノベーションや、インダストリアルデザインを取り入れた店舗内装において、あえて配線を露出させる「見せる配線」としてノップがいしが採用されるケースが増えている。この場合、新品の部材を入手して施工することになるが、前述の通り施工には熟練技術が必要となるため、対応可能な電気工事業者は限られる傾向にある。

他設備との離隔と保安上の注意

がいし引き工事を行う場合、他の設備配管との位置関係にも注意が必要である。特にガス管との接近は厳しく規制されている。

電気設備技術基準において、電線とガス管等の弱電流電線以外の工作物とは、原則として10cm以上の離隔距離を確保しなければならないと定められている。もし構造上10cm以上の距離が確保できない場合は、相互の間に絶縁性の隔壁(セパレーター)を設置するか、電線を十分な長さのある難燃性絶縁管(がい管など)に収めることで防護措置を講じる必要がある。

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