ネオン変圧器
ネオン変圧器の役割と磁気漏れ特性
ネオン変圧器は、ネオン管を点灯させるために用いられる専用の変圧器である。ネオン管は放電灯の一種であり、放電を開始するためには数千Vから15000Vという非常に高い始動電圧が必要となる。
ネオン管には、放電が始まると急激に電気抵抗が低下し、電流が一気に増大しようとする「負性抵抗特性」がある。通常の変圧器を接続すると、過大電流が流れて即座に焼損してしまうため、ネオン変圧器には磁気漏れ変圧器(リーケージトランス)という特殊な構造が採用されている。これは、二次電流が増えると漏れ磁束が増加し、自動的に二次電圧を降下させることで電流を一定に保つ「定電流特性(垂下特性)」を持たせたものである。
電圧区分と法的規制・届出
ネオン管灯設備は高電圧を扱うため、火災予防の観点から法的な規制を受ける。一般的に使用される二次電圧6000Vから15000Vの高圧ネオン変圧器を使用する場合、設置にあたっては火災予防条例により、所轄の消防長または消防署長への「ネオン管灯設備設置届出書」の提出が義務付けられている。
こうした手続きの煩雑さや安全面のリスクを低減するために開発されたのが、二次電圧を安全なレベルまで抑制した低電圧ネオン変圧器や、インバーター制御の電子式変圧器である。これらは一定の基準を満たせば届出を省略できる場合があるが、自治体の条例によっては電圧に関わらず届出を求めるケースもあるため、計画段階での所轄消防への事前協議が不可欠である。
電子式安定器と調光制御
かつての鉄心とコイルを用いた巻線型変圧器は、重量が重く大型であったが、半導体技術を用いた電子式ネオン変圧器の普及により、大幅な小型軽量化が実現した。
電子式は高周波で点灯させるため、ちらつきが少なく明るさが均一になるほか、入力電圧の制御による調光や、高速点滅といった演出が容易に行える利点がある。これにより、商業施設の看板やアミューズメント施設の演出照明として多用されてきた。
LED光源への移行と現状
近年では、高電圧による火災リスクや感電事故、ガラス管の破損といったネオン管特有の課題を解消するため、LEDを光源とした「LEDネオンチューブライト」への置き換えが実施されている。
LEDネオンは、樹脂製のチューブ内にLED素子を実装したもので、DC12Vや24Vといった低電圧で駆動でき、長寿命かつ省エネルギーである。本物のネオン管が持つ独特のガス発光の質感やレトロな雰囲気を意図的に求める場合を除き、一般的な建築設備のサイン照明として、新規に高圧ネオン変圧器が採用される事例は極めて稀となっている。












