子時計
子時計は、設備時計(親子時計)システムを構成する端末機器であり、中央管理室等に設置された親時計から送信される電気的なパルス信号を受信して時刻を表示する電気時計である。単独では発振回路を持たず、時計として自立運転することはできない。親時計が生成した正確な基準時刻の信号に完全に追従することで、施設内のすべての時計を一秒の狂いもなく同期させる役割を担う。
親時計との絶対的な時刻同期
親時計はGPS、NTPサーバー、標準電波(JJY)、あるいはテレビ・ラジオの時報など、外部ソースから正確な標準時を取得し、システム全体の基準時刻を生成する。子時計は親時計と専用の配線で結ばれており、この基準時刻に基づく制御信号を直接受信する。
市販の電波時計のように個々の時計が独立して電波を受信し補正する方式では、建物の構造や設置場所によって受信感度にばらつきが生じ、隣接する部屋の間で指示時刻に数秒から数十秒のずれが生じるおそれがある。子時計を用いた有線式の設備時計システムであれば、電波の到達状況に左右されず、施設内に設置された数百台の時計すべてが同一の時刻を表示する強固な同期環境を構築できる。
駆動パルスの仕様と無電池稼働の仕組み
子時計の駆動には、一般的に直流24V(DC24V)の有極パルスが用いられる。建築設備において標準的な「30秒運針」の仕様では、親時計から30秒ごとに約0.5秒間だけパルス電圧が送信される。このパルスを受信するたびに、子時計内部のステッピングモーターが回転し、長針が物理的に半目盛り(30秒分)進む。
パルスは送信のたびにプラスとマイナスの極性が交互に反転する有極式となっており、外部からのノイズによる誤動作を電気的に防止している。また、運針のための動力はすべて親時計からのパルス信号(電流)によって賄われるため、子時計側に乾電池や商用電源(AC100V)を個別に用意する必要がない。これにより、電池切れによる停止リスクや交換の手間を完全に排除している。
高精度な時刻管理が求められる施設での用途
子時計を中心とした設備時計システムは、秒単位での厳格な時刻管理が要求され、かつ多数の時計が設置される建築物において不可欠な設備である。
- 学校施設:チャイムの鳴動と教室の時計を完全に一致させ、授業や試験の進行における混乱を防止する。
- 医療機関:電子カルテの入力時刻、投薬や手術の記録など、医療行為における正確な時間的証拠を保全する。
- 交通機関:鉄道の駅舎や空港において、運行ダイヤグラムに基づく正確な旅客案内を提供する。
これらの施設は鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)で建設されることが多く、外部の標準電波が建物の深部まで到達しにくいという物理的な制約がある。有線式の子時計は、このような電波の遮蔽環境においても確実な時刻表示を担保する。
高所および屋外への設置とメンテナンス性の向上
学校の校舎屋上に設置される塔時計や、公園に設置されるポール時計など、高所に設けられる大型の時計設備においても子時計の仕組みが採用される。これらの場所は風雨に曝される過酷な環境であり、時計の時刻合わせや電池交換といった日常的なメンテナンスを行うために高所作業車や足場を手配することは、多大なコストと転落等の危険を伴う。
これらを子時計として計画し、建物の内部の安全な場所に設置した親時計から有線で制御・給電を行う構成とすれば、万が一の時刻修正や、大規模停電復旧後の時刻合わせも、すべて遠隔(親時計側の盤面操作)で安全かつ速やかに完了させることができる。
配線計画と電圧降下に基づく接続台数の算定
子時計の配線工事においては、AE線(警報用ポリエチレン絶縁ケーブル)の0.9mmや1.2mmなどが広く用いられ、親時計の駆動回路に対して複数の子時計を並列に接続する送り配線方式がとられる。
設計上の重要なセオリーとして、配線距離が長大になると電線の導体抵抗による電圧降下が発生し、末端の子時計に十分な駆動電圧(DC24V)が届かず、運針不良や停止を引き起こすおそれがある。これを防ぐため、親時計の1系統あたりの最大出力電流(例として300mAなど)に対し、子時計1台あたりの消費電流(約12mA)を積算して接続可能な上限台数を算定し、適切な系統分割とケーブル導体サイズの選定を行わなければならない。












