高圧ナトリウムランプ
高圧ナトリウムランプの基本構造と発光原理
高圧ナトリウムランプは、発光管の内部に封入された高圧のナトリウム蒸気中のアーク放電を利用して発光する高輝度放電灯(HIDランプ)である。ナトリウム蒸気は高温かつ反応性が極めて高いため、一般的な石英ガラスでは浸食されてしまう。そのため、発光管の材質には耐熱性と耐食性に優れた透光性アルミナセラミックスが採用されている。
発光色は色温度2,000Kから2,100K程度の暖かみのある黄白色(オレンジ色)を呈する。電気エネルギーを可視光線に変換する効率が極めて高く、水銀灯などの他の放電灯と比較して発光効率に優れ、ランプ寿命末期までの光束維持率も良好である。
演色性と発光効率のトレードオフ
高圧ナトリウムランプの最大の欠点は演色性の低さである。一般的な高効率型の製品では平均演色評価数(Ra)が20から25程度と極めて低く、照射された物体の色がすべて黄色やオレンジ色にくすんで見えてしまう。そのため、商品や展示物の本来の色を正確に表現する必要がある商業施設の屋内照明や展示照明には適していない。
この欠点を補うため、ナトリウム蒸気圧をさらに高めて演色性をRa60から80程度まで改善した高演色形や演色改善形の製品も開発されている。しかし、演色性を高めるほど発光効率や定格寿命が低下するというトレードオフの関係にあり、用途に応じて効率と演色性のバランスを考慮した機種選定が行われる。
始動特性と再始動メカニズム
高圧ナトリウムランプの点灯には、電流を制限するための安定器と、始動時に高電圧のパルスを発生させる始動器(イグナイタ)が必要である。電源を投入しても即時点灯することはできず、発光管内のナトリウムが完全に蒸発して規定の明るさに達するまでに数分間のウォームアップ時間を要する。
また、点灯中に停電や電圧降下などで一度消灯すると、発光管の温度と内部圧力が高くなっているため、そのままではイグナイタのパルス電圧でも再始動できない。ランプが冷却されて内部の蒸気圧が下がるまで、約3分から5分程度の再始動時間を待つ必要がある。ただし、水銀灯の再始動時間(約10分から15分)と比較すると復帰は早い傾向にある。
透過性能と誘虫性の低さを生かした用途
高圧ナトリウムランプの放つ黄白色の光は波長が長く、大気中のチリや水滴による散乱を受けにくいという光学的特性を持つ。霧や排気ガスの中での透過性能が高く、視認性を確保しやすいため、高速道路のインターチェンジやトンネル内の照明として広く採用されてきた。
また、昆虫が走光性を示す紫外域や青色系の短波長光をほとんど含まないため、水銀灯や蛍光灯と比較して誘虫性が極めて低い。この特性を生かし、公園灯や街路灯、果樹園の防蛾照明など、虫の飛来を抑制したい屋外照明設備においても重宝されている。
ツイン管による長寿命化とLED照明への移行
道路照明などの高所作業を伴う保守現場では、ランプの交換費用が大きな負担となる。これを軽減するため、1つの外管ガラスグローブ内に2本の発光管(ツイン管)を並列に収容した製品が存在する。
- 一方の発光管が寿命を迎えると、自動的にもう一方の発光管が点灯を引き継ぐ構造となっている。
- 点灯のたびに2つの発光管が交互に始動する製品もあり、単管タイプと比較して定格寿命を2倍(約24,000時間)に延長し、メンテナンスの周期を大幅に伸ばすことが可能である。
長年にわたり屋外のインフラ照明を支えてきた高圧ナトリウムランプであるが、近年では環境負荷の低減とさらなる省エネルギー化が求められている。演色性が高く即時点灯が可能で、調光制御も容易な高効率LED照明への置き換えが国や自治体の主導で急速に進められている。
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