電気設備の知識と技術 > 照明設計・電球の知識 > HIDランプの基礎知識
HIDランプは、高輝度放電灯( High Intensity Discharge Lamp )の略称で、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、水銀灯などを総称している。
大光束、長寿命で、ランプ交換の頻度を抑制でき、経済的な照明設計を可能にしている。コンパクトなHIDランプも多数開発されているため、小型スポットライトに採用し、器具が目立たない照明器具が多数製作されている。
HIDランプの発光原理は蛍光灯とほぼ同様であり、ランプを点灯させるためには安定器やイグナイタを必要とする。蛍光灯との大きな違いは、即時点灯と再点灯に時間がかかる。
HIDランプを点灯させるためには、内部に充填されている水銀を完全に蒸発させるための時間が必要であり、数分から十数分の時間が必要である。一度HIDランプを消灯させてしまうと、再度点灯させるまでには点灯に要した以上の時間が必要である。
電圧が低下するなどしてHIDランプが消灯すると、再点灯まで十数分の時間を要する。特性を持っているため、停電時の非常灯に使用するのには適していない。
HIDランプは多様な場所で使用されているが、多くは大光束が必要な用途である。道路照明、公園の庭園照明、高天井の大空間になる工場や倉庫、スタジアムやプールのスポーツ照明などが代表的である。広告や看板のライトアップにも広く使用されている。
HIDランプは、演色性と発光効率を調整することが可能な特徴がある。同じ消費電力でも、演色性を犠牲にして大きな光束を得られ、逆に光束が低くなるが、太陽光や白熱電球に近い、高い演色性を求めることも可能である。
全般照明として使用するだけでなく、紫外線照射用のランプとして使用し、塗装や印刷などへの利用、殺菌や洗浄、植物の育成用という使い方もされており、HIDランプの応用分野は、多岐に渡り広まっている。
代表的なHIDランプとして「水銀灯」「マルチハロゲンランプ」「メタルハライドランプ」がある。それぞれの特徴、利点と欠点、特性について解説する。
水銀灯は、発光管内に水銀とアルゴンを封入し、水銀蒸気圧を数気圧以上に高めて発光させるHIDランプの一種で、可視光を多量に放出するため照明用ランプとして広く普及している。
ランプ種別が非常に多く、汎用性が高いHIDランプである。12,000時間の寿命を持ち、60lm/Wの比較的良好な効率を持っている。保守率が良く、寿命に近づいても70~80%の光束を確保している。
反面、演色性はRa40前後のため、展示照明や演出照明としては不向きな特性がある。通電から発光まで数分の時間を要し、瞬時停電によって消灯すると再度発光するまで数分かかる。特性から、頻繁な入切をする部屋や場所には使用できない。これは他のHIDランプでも同様である。
3900K、4200Kの白色を示す「蛍光水銀灯」と、5800Kの昼白色を示す「透明水銀灯」がある。透明水銀灯は演色評価数が低く、Ra14程度となっているため、色を忠実に再現するという用途には使用できない。
水銀灯のうち、安定器をランプ内に内蔵し、外付け安定器を不要とした「バラストレス水銀灯」という製品もラインナップされている。バラストレス水銀灯は色温度3700K程度の温白色を示し、青と赤を混ぜあわせたような色合いとなる。発光効率が非常に低く、20lm/W前後の値しかないため、大光束を得たい場合には消費電力が課題となる点に注意が必要である。
色温度が4,000K前後と6,000K前後という中途半端な数値なので、HIDランプを蛍光灯や白熱灯と合わせて使うと色違いが発生する。うまく計画しないと色ムラが発生するので、単独で使用することも考慮する。
水銀灯の発光原理、構造、LED照明への交換メリットについては水銀灯・バラストレス水銀灯を参照。
発光管を外管に収容した二重構造となっており、ガラスに石英ガラスを使用することで高温に耐える構造としている。外管は硬質ガラスが採用されており、発光管の保温、酸化防止の役割がある。
発光管内部には、タリウム・インジウムの金属ハロゲン化物が封入されており、単体金属よりも蒸発しやすく高い光束を得ることが可能で、寿命を長く設定できるというメリットがある。
添加する金属体の種類を選定することで、放電ランプの特徴に変化を持たせられる。ハロゲン化金属にはヨウ化ナトリウム、ヨウ化スカンジウムなども用いられており、色の見え方の改善が図られている。
メタルハライドランプには、外管の破損防止を図った三重管タイプがあり、発光管の破損による外管の破損を防止する。全面ガラスなどが付属していなくても、照明用途として使用できる。
通常は、発光管の外側に外管のある二重管方式となっているが、全面にガラスや金網が付属した照明器具で使用するため、ガラスが破損しても飛散しない。
スタジアム照明や撮影用照明として、1kW~6kWといった大容量ランプも販売されている。特殊用途のメタルハライドランプは一般用途よりも寿命が短く、1,000~3,000時間程度しかない。特殊な機能や性質をもたせたランプは、寿命、光束、効率などいずれかの性能を犠牲にしていることが多く、選定時には注意が必要である。
白熱電球やハロゲンランプと違い、電圧を印加するだけ点灯せず、安定器など点灯装置が必要である。メタルハライドランプを安定放電させるためには、蛍光灯のように、ランプ電極間の電子の移動を促進させ、ランプ電圧の変動に伴った制御を行い、ランプが安定放電した時点で電力を一定にするという複雑な制御が求められる。
メタルハライドランプは光学機器用としても活用されている。プロジェクターやOHP、光ファイバー照明の光源として使用されるが、一般照明用途よりも寿命が短くなる傾向にある。これら光学機器の光源としては400W程度の出力を持つ中型メタルハライドランプが、主に採用されている。
ランプ寿命は比較的長く、9,000~12,000時間を確保している。水銀灯用の安定器で点灯できるため、ランプを交換するだけで容易に照明環境を変化できる。
水銀灯と同じ安定器が使用可能で、発光効率や演色性を改善したHIDランプである。メタルハライドランプのカテゴリに分類される。水銀灯よりも高い光束を得られるが、寿命が3,000時間~6,000時間程度短くなってしまい、かつ保守率が良くないため、初期照度と末期の照度に差が大きく、点灯直後には明るく感じ、数ヶ月も使用すると暗く感じてしまうというおそれがある。
金属そのものは蒸気圧が低いが、ヨウ化物のようなハロゲン化物として水銀蒸気内に封入することで、高い蒸気圧を示す。高圧放電ランプの中心部では、アークによって発生する熱の影響でハロゲン化物が解離し、石英ガラス管の表面に近づくと、ハロゲンと再結合して金属ハロゲン化物に戻るという、ハロゲンサイクルが利用されている。
ナトリウムのアルカリ金属は、高い蒸気圧を維持できる性質があるが、石英ガラスを侵食するおそれがある。しかし、ハロゲン化物にすることで石英ガラスの侵食が無くなり、ガラス管内に支障なく封入できる。
メタルハライドランプと同様に、発光管の内部に複数の金属原子を封入し、金属上記の放電による発光を利用したHIDランプである。複数のハロゲン化金属を利用しているため、マルチハロゲンという名称が付けられている。照射する対象の色を表現する性能となる演色評価数は65~70を示し、水銀灯より比較的高い数値を示す。
マルチハロゲンランプは、一般の水銀灯安定器で点灯できるものと、専用安定器で点灯させるものがあるので、選定には注意が必要である。点灯方向もランプによって定められており、下方向、上方向、水平方向、全方向の四種類を、照射角度に応じて使い分ける。
寿命が短いことから、稼働時間の長い工場では、長時間点灯によりランプの交換頻度が多くなり、経済性が悪くなる。ランプ毎に照明の点灯方向の制限があるので、下向きに使う場合・横向きと言った条件によっては、ランプが適合しない場合があるので、器具選定の際には注意を要する。
マルチハロゲンランプやメタルハライドランプを設置する場合、照射角度に注意する。全周360度どの方向を向けても良い照明器具というのは稀で、放熱性能などを維持するため、照射角度がランプによって定められている。
ランプを傾ける場合は適合する方向とし、適合外の方向に向けないよう注意を要する。適合外の方向に向けて照射すると、異常発熱により期待寿命を満足できなかったり、焼損事故が発生する危険性がある。
SC形は、マルチハロゲンランプの内部にスカンジウムやナトリウムのヨウ化物を封入したランプである。高効率で寿命が長く、3,800~4,600Kの白色光を放つ方式である。大出力で長寿命を実現でき、競技場など大光束が必要な場所に適している。色ばらつきが少なく、ライトアップに向きるが、50Hz地区ではランプのチラツキが発生する。水銀灯に比べ、高い発光効率を持っている。
大出力のランプが製造されており、400~1000W級の大光束ランプがラインナップされているため、屋外競技場や景観照明に適している。色温度は3,800~4,300Kの、昼白色・温白色に近い白色を放つ。
ヨウ化ナトリウム、タリウム、インジウム、リチウムを封入し、それぞれが放つ発光スペクトル「赤・緑・青・紫・橙」を混光することで、強い白色を出す方式である。比較的低出力で問題ない、工場の天井や屋内競技場に適しており、高照度でもちらつきの発生が少ないといわれる。
水銀灯と比べて高い発光効率を持ちるが、SC形のマルチハロゲンランプよりも効率が悪いという欠点がある。SC形よりも出力が小さい商品が主力で、100~400W程度となるため、屋外スタジアム照明等には適していない。色温度はSC形と同様、4,300K程度のさわやかな白色を示す。
ランプ電極間の絶縁を破壊し、放電経路を作るためにイグナイタという装置が使われる。イグナイタは、電極の余熱を行わずに放電ランプを始動させるためのパルス電圧を発生させる装置である。イグナイタの働きにより、放電経路にパルス電圧を印加し、電子の移動を促進させる。イグナイタにはコンデンサとトランスが内蔵されており、高いパルス電圧を発生させる仕組みがとられている。イグナイタは、蛍光灯のスターターと違い、電極に余熱を与えずにランプを点灯させる。
ランプに放電経路が確立しても水銀蒸気は完全蒸発の状態ではないため、ランプ電圧が低く所定の輝度・光束・演色性が確保されていない。点灯後15~20秒経過すると、ランプ内部の水銀蒸気が上昇しランプ電圧が高くなる。2~3分経過すると、ほぼ安定した電圧を維持できる。安定状態となったランプは、ランプ電力が一定になるよう安定器を用いて制御され、消灯までの間、一定の電力・電圧・光束を維持する。
HIDランプの一般的な特徴であるが、電圧が変動することによる立ち消えが発生することがあるため、電源回路の電圧管理に注意が必要である。5%異常の急激な電圧変動が発生すると、ランプが立ち消えるおそれがある。
照明器具には、安定器にイグナイタが内蔵されているものと、照明器具にイグナイタが内蔵されているものの二種類がある。安定器にイグナイタが内蔵されている器具は、ランプ直近でパルス電圧を発生させるため、安定器から照明器具までの配線にパルス電圧が印加されず安全である。配線長を長くできるという利点がある。
安定器にイグナイタが内蔵されている場合、安定器から照明器具までの配線に高いパルス電圧が印加されるため、配線長の制限、絶縁体にキズが付いている場合の絶縁破壊の危険性など、施工によって安全性が左右される。設備費は安価になる傾向がある。
HIDランプの発光原理は、発光管の内部に充填された水銀やアルゴンといった金属蒸気に対して、放電による光の放射が利用している。
ランプ始動時には、加熱された電極から熱電子が放出され、発光管内の金属蒸気に電子が接触して、可視光線となる。蛍光灯と違い、HIDランプは金属蒸気圧や温度が高いため、可視光線を大量に放出できるという特徴がある。
蛍光灯では、高効率インバーターを利用したHf蛍光灯であっても、5,000~6,000lmの光束を確保するに留まるが、HIDランプであれば消費電力に比例して、数万~数十万を超える大光束を得られるランプを製作できる。
大光束を得られるという利点から、スタジアムやゴルフ場といった大空間用途のメイン照明に広く利用されており、投光器やスポットライトの光源として幅広く利用されている。
HIDランプは、セラミックや石英ガラスを用いたメタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、水銀ランプに分類される。メタルハライドランプは、タリウム・インジウムといった金属とヨウ素の化合物が充填される。高圧ナトリウムランプは名称の通りナトリウムが充填されており、水銀ランプも同様に水銀が充填されている。
安定器は、HID照明を安定して点灯させるために必要な照明器具の付属機器で、HIDランプの放電を開始し、ランプ点灯後は放電を安定させるために必須の装置である。
点灯させるHIDランプの種類に応じて、適合する安定器を選定しなければならない。安定器の種類として「一般型」「低始動電流」「パルス始動形」があり、高性能な安定器ほど本体価格が高くなるが、効率が良く、消費電力や電流が小さくなるため、電源や配線もスリム化できる。
安定器は、天井裏、屋上など過酷な環境に設置されることが多く、故障が発生しても気付かれないことがあり、発火や焼損による事故が火災につながるおそれがあり危険である。安定器本体には多重に安全装置が組み込まれており、発火事故を防止している。
安定器は「サーマルプロテクタ」と呼ばれるヒューズで保護する。安定器のヒューズには、異常電流の発生で動作する「電流ヒューズ」と、異常温度で動作する「温度ヒューズ」が直列に接続され、どちらの要素を主とする事故であっても保護できるよう配慮されている。
安定器内蔵のヒューズは、溶断した瞬間に電路が遮断される。異常電流や異常温度の原因を取り除いたとしても、復帰は不可能となり、安定器本体は交換となる。
一般型安定器は、特殊な回路構成を伴わない標準仕様のHID安定器である。回路が簡単で安価であるが、入力電流が大きく、始動電流も同様に大きくなる傾向にある。
低力率と高力率の製品があるが、効率の良い高力率を選定するのが一般的である。高力率安定器は、低力率の安定器に比べて入力電流が60%まで低減できるので、配線への負荷を軽くし、経済性や安全性を高められる。
一般型安定器は水銀灯のほか、メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプにも適合する。メーカーの適合表やカタログ・仕様書に記載されている内容をもとに、安定器とランプの整合を図ると良い。
始動時の入力電流を小さくし、配線やブレーカーへの負担を低減できる安定器である。HID照明は、安定状態に移行した際の電流と比べ、始動時の電流は1.6~1.8倍の大電流が流れる。
低始動電流型の安定器を使用すると、始動電流は1.4倍程度まで低減される。電源設備や配線の負担を小さくし、設備費の低減を図ることができる。改修工事などで安定器を交換する場合、一般型から低始動電流型に交換すれば同一配線系統で、より多くの照明器具を点灯させられるといったメリットがある。
定格電圧から外れた電圧が供給されても、安定した点灯を維持できる安定器である。電圧変動に対し、一般型安定器よりも電力変動が小さいため、明るさの変化を小さく抑えられる。
電源容量が大きな設備を設置している工場など、電圧が大きく変化する環境に適した安定器である。
水銀灯やマルチハロゲンランプなど、HIDランプの特性として「低温環境に強い」という利点がある。周囲温度-40℃といった極寒状態でも放電が可能で、高い耐候性がある。
しかし、周囲温度が著しく低い環境では、期待寿命を維持できなかったり、所定の光束を確保できないといった問題が発生するため、注意が必要である。-40℃の環境でマルチハロゲンランプを使用した場合、寿命が20%程度短くなるとされている。
寒冷地では、光束も同様に低減する。照度計算を行う場合は、計算上の光束を減じて計算しなければ、所定の照度が確保できないといった不具合につながる。
照度や寿命の低下が懸念されるような寒冷地では、高圧ナトリウムランプなどより低音に対して強いランプを採用することを検討しても良い。高圧ナトリウムランプは演色性が悪く、照射対象をオレンジ色に見せてしまうため、照明環境の用途によっては、採用できないことに注意が必要である。
HIDランプはワット数やランプ種別に合わせて安定器が作られているため、適合しないランプと安定器を組み合わせると、ランプ破損、寿命低下、焼損の事故につながる。
安定器の適合だけでなく、電圧変動や周波数の間違いなどでも、正常動作せず事故につながるおそれがある。
適合しない安定器を用いるのは、著しい寿命の低下、ランプ破損といった事故につながるおそれがあり、大変危険である。下記に、安定器不適合により発生する不具合について解説する。
安定器よりもランプのワット数が小さい場合、安定器が大容量なため、ランプが過負荷点灯状態となり、ランプの破損につながる。
安定器よりもランプのワット数が大きい場合、ランプの能力まで電流供給ができないため、ランプを調光して使用しているのと同じ状態となり、ランプの点灯異常、光色異常、ちらつきなどが発生し、ランプ寿命が短くなる。
周波数50Hzの電源装置に60Hz用の安定器を接続すると、安定器の温度上昇につながり、寿命が短くなる。
周波数60Hzの電源装置に50Hz用の安定器を接続すると、ランプの安定点灯までの時間が長くなり、ランプが暗くなる。寿命も同様に短くなる。
過電圧では、ランプが極端に明るく点灯し、寿命が短くなる。安定器の異常な温度上昇につながり、破損のおそれが高くなるというリスクもある。
不足電圧では、安定点灯までの時間が長くなり、ランプが暗くなり、立ち消える可能性が高くなる。ランプの寿命は同様に短くなる。
HID照明には水銀灯、メタルハライドランプ、マルチハロゲンランプ、高圧ナトリウムランプなど、多種多様なランプのラインナップがあり、それぞれ寿命が大きく違っている。下記に、代表的なランプの寿命を記載する。同じランプでも出力によって寿命が違うため、メーカーカタログや仕様書でそれぞれ確認が必要である。
HID照明は安定器が内蔵されており、寿命は8年~10年である。耐用年数を超過した安定器は絶縁性能が低下しており、異常発熱による発煙や発火のおそれが高くなる。
安定器が劣化すると、HID照明の不点灯、異常電流によるブレーカートリップといった事故につながる。安定器口出線の劣化、配線劣化による絶縁性能の低下、ソケットの劣化なども、安定器において劣化しやすい部分である。
安定器は定期的に交換しなければならないが、安定器交換の頃には、灯具本体も10年近く使用されているため、器具交換が避けられない可能性がある。近年はLED光源が著しく高効率化しており、長寿命、省エネルギーであり、積極的なLED化が進められている。
HID照明は広範囲に照度を確保するため、街路灯や道路照明として、照明ポールの頂部に設置することが多くなる。ポール本体も照明器具同様、紫外線や塩害、衝撃によるキズなどで腐食が進行するので、定期的な再塗装や、補修が必要である。
気象条件や設置場所によって大きく変化するが、腐食、金属疲労によっても劣化し、ポールの倒壊や照明器具の落下など、大きな事故につながる。
通常のメンテナンスがなされているポール照明であれば、数年程度での腐食は考えられないが、塩害地域に敷設していたり、より長期間経過した照明ポールは、劣化が進行し腐食が広がる。ポールの再塗装などを実施すなど、安全性能を満足できる管理が必要である。
ナトリウムランプはHIDランプの一種で、セラミック発光管内部にナトリウムを封入し、ナトリウム蒸気内の放電を発光利用した電球である。発光管の内部圧力に高圧ナトリウムランプと低圧ナトリウムランプに分類される。
ナトリウムランプは色温度2,000K前後の赤みの強い光を放ち、その光は霧や粉塵の透過性が良いため、道路照明やトンネル照明として多用されている。発光効率と寿命を重視した「効率本位形」と、演色性を高めるために発光効率と寿命を犠牲にした「演色改善形」「演色本位形」のナトリウムランプが広く使用されている。
公園、道路、トンネルの照明として広く普及しており、消費電力に対して得られる光束が多く、煙や霧を透過する強い光の性質が、安全確保のための照明として適している。演色性を高めると、効率が悪くなり寿命が短くなるという性質もあるため、用途によって製品を使い分ける。
オレンジ色の光を放つHIDランプである。概ね2,200K前後の光で電球色よりも赤みが強く、たき火に近い色味の光である。道路照明等に使用することを目的とした「効率・寿命」を重視したタイプ、商業施設等で使用することを目的とした「演色性」を重視したタイプなど、用途に応じて数種類が販売されている。
効率重視形のナトリウムランプは、全ての照射対象物の色をオレンジに見せてしまう、演色性の低さがあるので、演出用として使用する場合はその特性を十分に理解すべきである。
高圧ナトリウムランプの光は霧やほこりなどを良く通すため、道路照明用として採用されている。寿命は約24,000時間を確保しているため、ランプ交換の煩雑さを低減することが可能で、所定の照度確保に最適であることが理由である。
効率重視形高圧ナトリウムランプは、HIDランプの中でもトップクラスの高効率なランプである。ランプ内部に始動器が内蔵されているため、一般水銀ランプの安定器で点灯させることが可能である。主に、道路照明やトンネル内照明に利用されている。
点灯効率や寿命の長さを最優先しており、効率は非常に良好であるが、演色性は極めて悪く、照射対象を全てオレンジ色にしてしまう特性がある。照射対象物の色を再現するための光としては、まったく適していないランプである。
しかし、少ない消費電力で大光束を得られ、寿命が長く、排気ガスや霧の透過性も良好であり、安全を求める照明としては非常に良好な性能を持っている。演色性は悪いが、強いオレンジ色の光を放つので、オレンジ色の暖かみのある色合いを求めたライトアップに使用できる。
効率本位型高圧ナトリウムランプよりも大きく演色性を改善しているが、定格寿命が短く、発光効率が悪くなる。効率本位型と同様、赤みの強い光色で発光する。
水銀灯の安定器でランプを点灯できるので、水銀灯からナトリウムランプに交換することで、同等の明るさでも省エネルギーを図る事が可能である。経済性を求めるだけでなく、作業などで一定の演色性が必要な場合に使用するのが良い。
メタルハライドランプやセラミックメタルハライドランプなど、高効率で演色性の良い、光束の大きな白色光源も販売されているため、演色改善型の高圧ナトリウムランプを使用する機会は限定される。
大空間の照明手法として、体育館など天井が高く広い空間では、白系のメタルハライドランプと赤色の高圧ナトリウムランプを組み合わせたカクテル照明として照射すると、演色性の改善が図ることができる上、自然な光色を演出できる。
演色本位形高圧ナトリウムランプは、色温度を2,500~2,800K程度まで高め、かつ演色評価数Ra85という高い演色性を確保することにより、照射対象の本来の色を再現できる。高い演色性をもとめられる、店舗のベース照明としての可能性を持つ高圧ナトリウムランプである。ロビーやホールの照明としても利用可能である。
高い演色性を確保するが、効率本位形の高圧ナトリウムランプと比べ、発光効率と平均寿命が非常に悪いという欠点がある。光束維持率も、効率本位形より劣っており、光束と寿命という点からすると性能は劣っている。
演色本位形は専用安定器で点灯させるタイプの高圧ナトリウムランプなので、寿命が長く高い演色評価数を持つ、セラミックメタルハライドランプの方が設置しやすく、効率本位形の高圧ナトリウムランプを新規案件の照明設計に含むことは少ないといえる。
低圧ナトリウムランプは、光源の中でも最も高い効率を持ち、水銀灯の3倍、蛍光灯の2倍ともいわれる高効率な照明用ランプである。温度の影響を受け難く、煙や霧の透過率が高い、照射対象のコントラストがはっきりするという理由から、道路灯やトンネル灯の光源として適している。低圧ナトリウムランプは欠点がいくつかあるため、設置場所が限定される。
寿命が9,000時間と短いのが難点である。色温度は1,700Kという非常に低い値を示しオレンジイエロー色に発光するが、照射対象の色は全てオレンジ・イエロー色である。照射対象の色を表現する事は不可能で、演色評価数Raはマイナスとなる。
ランプは二重管構造となっており、ナトリウム蒸気が蒸気圧0.1~0.5Paで封入されている。始動補助としてネオンやアルゴンが混合されており、これにより始動電圧が低下する。
発光管にアルミナセラミックが使用され、発光管を高温とすることで、発光効率がより高くなる。ランプ効率は100[lm/W]以上という高効率を示し、わずかな電力でより多くの光束を得られる。
セラメタの場合、メタルハライドランプなどで問題となる点灯方向の制限がない。上向き、横向き、下向きと、自由に角度調整できるため、ライトアップ用としても有利なランプである。演色評価数も非常に良く、70W形ではRa90程度、150W形ではより高くRa95程度を示す。商品の色を忠実に見せるのに適したランプである。
色温度は3,000K(電球色)、3,500K(温白色)、4,300K(昼白色)から選択でき、多様な用途に適合する。寿命も12,000~16,000時間と長いので、2年~3年はランプ交換が不要となり、メンテナンス費の削減につながる。
セラメタの欠点として、ランプ単価が高いためコストアップにつながる。一般的なセラメタ70Wで15,000円程度、セラメタ150Wでは17,000円程度であり、水銀灯やマルチハロゲンランプよりも高価である。
セラメタプレミアは、従来のセラメタと比較してランプ効率が110lm/Wと高く、サイズがコンパクトであり、セラメタを使用した照明器具よりも、本体を小型化できる。
主に、ダウンライトとしての利用が多く、店舗照明等で広く使用されている。製品ラインナップとして、35形、70形、100形の3種類があり、小型器具から大型器具までカバーされている。
ダウンライト以外にも、小型スポットライトにも広く利用されており、商品への投光や建築物のライトアップなど、多彩な用途に適合する。セラメタ同様、ランプ単価が高い点には注意が必要である。
水銀灯と同様の形状をしたセラミックメタルハライドランプである。ランプ効率が110lm/Wと非常に高いのが特徴である。水銀灯は55lm/Wしかないため、単純比較して倍の性能を持っており、水銀灯と同一の照度を得るために必要な電力を、およそ半分まで削減できる。
ランプ寿命も18,000時間と長く、ランプ交換に掛るメンテナンス費を低く抑えられる。色温度は4,100Kの昼白色のみとなる。セラメタHは一般水銀灯やマルチハロゲンランプを点灯させるための水銀灯安定器を利用できるため、ランプ交換だけで大きな省エネ効果を発揮できる。
定電流始動型の安定器を利用すると、始動時の電流を小さく抑えられるため、多数のランプを接続できることになり、配線コストの低減にもつながる。
セラメタやセラメタプレミアと違い、セラメタHは点灯方向の制限があり、下方向の照射しか適合しない。セード型の吊り照明やダウンライトなどしか使用できないため、ランプ選定には注意が必要である。色温度は4100Kの白色1種類しか選択できないため、既存照明の色温度を変更できない場所では、採用が制限される。
セラメタHの製品ラインナップは、190形から360形の比較的大型サイズが揃えられており、工場や倉庫、体育館など、大空間を大光束によって照射する用途で、広く用いられている。
35W~250WまでのラインナップがあるHIDランプの一種で、コンパクトな形状をしているため、外壁のライトアップやスポットライトによる投光など、大光束が必要なシーンに適している。
ランプが小型なため、灯具を小型にしたい場合に採用される。演色性はRa80以上を確保しており、照射対象の色表現は良好である。口金はピンタイプで、G12口金となる。
セラメタと似た性質を持っており、セラメタと同じ安定器で点灯でき、口金のサイズも同じである。同じ色温度・出力の製品を選んでも若干色味が違うので、混在させると色違いがはっきりわかるので、統一させるようにすべきである。
35Wまたは70WのHIDランプで、ランプに反射板を持たせ、光の角度を選択できるようにしている。スポットライト用として使用される。ダイクロイックミラー付きハロゲンランプと似た形状をしているが、同一光束を得る場合も大きな省エネルギーを図ることができる。
演色性はRa90以上を確保しており、照射対象の色表現は良好である。他のHIDランプと比較すると、寿命が若干短い傾向にある。
ランプを変えるだけで、光の大きさや角度まで変えられるため、照射対象の形状や距離によってランプを使い分け、最適な光効果を得られる。
一般的なスポットライト照明器具では、灯具の反射板によって光の角度が決められてしまうが、CDM-Rランプが使える灯具であれば、ランプの変更によって照射角度が変更でき、多彩な照明設計が可能である。
仕様書やカタログには、光の照射角度によって「PAR10」「PAR20」「PAR30」といった表記がなされる。PARとは( Parabolic Aluminum Refrector )の頭文字を取った言葉で、パラボラのように湾曲したミラーに、アルミニウム製のリフレクター(反射板)を設けたものである。
ステージ照明に極めて広く使用されている「パーライト」も、このPARを意味している。
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