均等充電
蓄電池の品質を維持するために行う充電方式のひとつで、長期間使用に伴うセル電圧のばらつきを補正し、均一化するために行う充電のこと。均等充電は、複数のセルを直列に接続して構成される蓄電池システムにおいて、個々のセルの充電状態のばらつきを是正し、全体のバランスを均一な状態に戻すための充電行程である。
直列接続された蓄電池は、浮動充電を長期間継続的に行う運用を続けていると、蓄電池のセルごとに電圧のばらつきが発生し、電位差が発生してセルに悪影響を及ぼすことがある。これにより、充電が進むにつれて充電状態が良好なセルと、充電が遅れているセルとの間で電圧差が拡大していくことになる。
セルの電圧を均一化することで電位差による不具合の改善が期待できるが、これは定期的に実施する必要がある。均等充電を実施する推奨期間はメーカーによって若干異なるため、システムに応じてメーカーへの確認が必要である。
均等充電は、主にフォークリフト、無停電電源装置(UPS)、非常用照明、太陽光発電の蓄電システムなどに使用される開放型または制御弁式(VRLA)鉛蓄電池に対して実施される標準的なメンテナンス手順のひとつである。
実施頻度は用途や環境によって異なるが、一般的には1〜3ヶ月に1回程度の定期的な実施が推奨されている。特に、バッテリーを深く使い切る「深度放電」が発生した後や、長期間充電せずに放置された後には、不均一が顕著になるため、速やかに実施することが望ましい。
- 蓄電池システム全体の容量は、最も充電状態が悪い(容量が少ない)セルの能力となる
- 充電状態の良いセルが先行して満充電となり、それ以外が過充電状態または過放電になりやすい
- 過酷な充放電ストレスは、セルの劣化を早め、バッテリー全体の寿命を著しく縮める
均等充電を行う場合、充電器の出力を上げてセル全体を充電する。通常よりも高い電圧を印加し、意図的に一定時間「過充電」の状態を維持する。このプロセスにより、電圧が低く充電の遅れていたセルにも電流がしっかりと流れ込み、すべてのセルを満充電状態まで引き上げる。
全てのセルの電圧を均一化する間、先行して満充電となったセルから水素ガスが多量に放出されるため、均等充電後は補水を行うといったメンテナンスを行う。これは補水式の鉛蓄電池を正常に使用するための必須事項となる。
強制的な充電により、鉛蓄電池特有の「サルフェーション(硫酸鉛の結晶化)」を解消する副次的な効果も持つ。サルフェーションとは、放電によって生成された硫酸鉛の結晶が硬質化し、電極板に付着することで充放電反応を阻害する現象である。均等充電時の高い電圧とガスの発生が、この結晶を分解し、バッテリーの反応効率を回復させることに繋がる。
なおMSEなど制御弁式の蓄電池は、均等充電をする必要がなく、浮動充電のみで性能維持できることから、充電回路の簡略化が可能となる。
蓄電池設備の種類、構造の違いや特徴については蓄電池設備の設置基準と容量計算を参照。












