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気中開閉器

気中開閉器は、電路の開閉および事故時の電流遮断を、大気中(空気中)で行う機器の総称である。日本の電気設備設計の実務において「気中開閉器」と呼称する場合、電力会社の配電線から高圧電力を引き込む「責任分界点」に設置される高圧交流負荷開閉器(PAS:Pole Air Switch)と、低圧配電盤の主幹などに設けられる気中遮断器(ACB:Air Circuit Breaker)の2種類を指すことが一般的である。

いずれも絶縁ガスや真空、絶縁油を用いず、空気の絶縁性能と消弧機構を利用して大電流を安全に遮断する構造を持つ。

アークの消弧原理と低圧気中遮断器(ACB)

電路に大電流が流れている状態で接点を開放すると、接点間に強力なアーク放電が発生し、電流が流れ続けようとする。気中開閉器は、このアークを空気中で引き伸ばし、消弧室(アークシュート)と呼ばれる金属板の隙間に押し込んで分断・冷却することで、速やかにアークを消滅(消弧)させるメカニズムを備えている。

低圧の気中遮断器(ACB)は、キュービクル式高圧受変電設備の低圧側主幹や、大電流を搬送するバスダクトの起点などに設置される。数百アンペアから数千アンペアという極めて大きな定格電流と短絡電流を安全に遮断する能力を持ち、低圧回路における最上位の保護装置として機能する。

電柱上に設置された高圧気中開閉器(PAS)

高圧気中開閉器(PAS)による波及事故の防止

高圧受電設備において、PASは需要家の敷地境界にある引込小柱(第1柱)などに設置される。需要家の構内で短絡事故や地絡事故が発生した際、その異常電流が電力会社の配電線にまで波及し、近隣一帯を巻き込む大規模な停電(波及事故)を引き起こすことを防ぐための重要な関所となる。

PAS本体の筐体は屋外の過酷な環境に曝されるため、以下のような対策が施された製品が選定される。

  • 筐体の材質に耐久性の高いステンレスを採用し、錆や腐食を防止する。
  • 海岸に近い地域や工業地帯では、塩害や腐食性ガスによる絶縁低下を防ぐため、耐重塩害仕様や防塵仕様とする。
  • 配電線路から侵入する雷サージから構内設備を保護するため、避雷器(LA)を内蔵する。

SOG制御装置と地絡方向継電器(DGR)

PASは単体で事故電流を検知することはできず、異常を検知して開閉器をトリップ(開放)させるための制御装置が必要となる。これがSOG(Storage Over Current Ground)制御装置である。

SOG制御装置には、構内の地絡事故(漏電)の発生方向を正確に判別する地絡方向継電器(DGR)の機能が組み込まれている。もらい事故(他の需要家で発生した地絡事故の電流が自局に流れ込む現象)による不要な動作を防ぎ、自局の構内で発生した地絡事故のみを確実に捉えてPASを開放する。これにより、電力会社の変電所にある遮断器が動作する前に事故回路を切り離し、波及事故を未然に防止する。

制御電源の確保とVT(計器用変圧器)内蔵型

SOG制御装置を常時稼働させ、異常発生時にPASのトリップコイルを励磁させるためには、AC100Vの制御電源が不可欠である。しかし、引込柱は建物のキュービクルから離れた場所に位置することが多く、構内から100V電源を専用配線で引き回すことは、電圧降下や配線工事費の増加、さらに断線による保護機能喪失のリスクを伴う。

この問題を解決するため、外部からの電源供給が困難な現場では「VT内蔵型PAS」が採用される。PAS本体の内部に計器用変圧器(VT)が組み込まれており、引き込んだ6600Vの高圧電力から直接100Vの制御電源を降圧してSOG装置に供給する仕組みである。これにより、電源線の長距離配線が不要となり、設備の信頼性が大きく向上する。

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