電気設備の知識と技術 > 受変電設備の基礎知識 > 断路器・負荷開閉器・遮断器の特性と選定方法
短絡事故などが発生したとき、数千から数万アンペアという大電流が電路に流れる。構内に敷設する幹線ケーブルは数百アンペアまでの許容電流が一般的であり、これを大幅に超える大電流が流れれば、発熱により被覆が溶融し、発火につながる。実際の電気設備では、多重の安全装置により遮断器の動作やヒューズ溶断により事故回路が遮断されるが、需要家内の設備だけでなく、電力会社側の変圧器や発電機に大きな負担を与えることになる。
回路を流れている電流を強制的に切り離そうとしても、電流は電路を流れ続けようとするため、電極が物理的に離れた瞬間、電極間にアークが発生する。アークは光と熱を発生させ、飛散したアークが導体間につながると短絡事故になる。
アークは、空気が電離してプラズマ状態になったもので、10,000℃もの温度を持ち、熱と光が放出される。アークは導電性を持っており、アークを通して電流が流れ続けようとする。このアークを素早く冷却し、導電性を断つことでアークを消すのが遮断の仕組みである。アークを消すことを「消弧」と呼び、この消弧能力が遮断器の重要な特性となっている。
交流回路の場合、プラス・ゼロ・マイナスという周期で電圧が変化している、冷却によって導電性が低くなれば、ゼロ点でアークが消滅する。ここで絶縁が完全に得られることで遮断は完了となる。絶縁が確実に得られなければ、再発孤(アークの再発生現象)となる。
定格遮断容量を間違えて選定すると、遮断できずアークが発生し、遮断器を破壊する原因となる。これが原因で変電所が停電すれば、付近一帯を巻き込んだ停電につながるおそれがある。アークの消孤を確実に行うための機器選定が重要である。
家庭用機器でアークを簡単に視認する方法は、家庭用のハンドドライヤーや電気ヒーターなど、古格的電流の大きな電気機器を運転した状態のまま、コンセントプラグをそのまま抜くことである。100Vの電圧であってもわずかに放電するが、この放電がアークである。
100Vの電圧で12A程度が流れるドライヤーや電気ヒーターの回路であれば、プラグを抜くだけで十分な絶縁が得られため、アークを消すことが可能である。しかし、6,600Vといった高圧電路を流れる電流は、家庭用の電気機器とは比較にならないほど大きなアークが発生する。
高圧遮断器は、遮断時のアークを消孤させる性能に特化している。従来は絶縁油を内蔵した油遮断器(OCB)が使われていたが、火災のおそれがあるため、今ではまったく使用されず、気中開閉器や真空遮断器といった高圧用遮断器が用いられる。
気中遮断器(ACB)は、遮断するために使用する圧縮空気製造部が過大であることや、圧縮空気によって発生する大きな遮断音の発生があり、低圧バスダクトの主幹など限られた用途での採用が多い。特別高圧受変電設備ではガス遮断器(GCB)、高圧変電設備では真空遮断器(VCB)が最も広く使われている。
断路器は、負荷電流の流れていない電路の開閉を行う装置である。
負荷電流の流れる電路は開閉できず、「電流が流れていない充電状態の電路」のみ開閉可能である。設備点検時の安全対策のために、切り離しを目的とする「開閉のみ」を行う設備として扱われる。断路器で負荷電流が流れている電路を開閉すると、アークが発生し、短絡事故につながる。
負荷開閉器は、負荷電流が流れている電路を開閉できる開閉装置である。定格電流よりも小さな電流値であれば、電流が流れたままの状態で開閉ができるため、手動での緊急停電などにも対応可能である。
ただし、負荷開閉器のみでは短絡などで発生する定格電流以上の事故電流の遮断は不可能である。短絡電流から電路を保護するには、負荷開閉器に限流ヒューズを組込み、ヒューズの溶断によって短絡電流を遮断するのが一般的である。
限流ヒューズは一度でも短絡電流が流れると、内部で溶断し絶縁状態となるので、交換が必要となる。
遮断器は、電路開閉、負荷電流の開閉、短絡事故遮断など全ての保護に対応できるが、開閉回数は比較的少なく、多頻度開閉には適していない。
限流ヒューズと違い、事故電流を繰り返し遮断できるのが大きな利点である。低圧遮断器であれば本体のみで事故電流を遮断可能だが、高圧遮断器は遮断器本体のみでの遮断はできず、過電流継電器(OCR)や地絡継電器(GR)など、外部に設置された保護継電器で検出した事故の信号を受けて動作する。
高圧系統に短絡事故や地絡事故が発生した場合、電路に対して事故電流が流れる。短絡の発生であれば、数千から数万アンペアという大電流が流れる。
高圧電線路として広く利用されるCVケーブルを例としても、許容電流は数百アンペア程度であり、数千アンペアの短絡電流に対しては、ヒューズや遮断器によって即時遮断をしなければ大事故につながる。遮断をせずに数千アンペアの電流がCVケーブルに流れれば、被覆が溶融し、発熱・発火につながる。
需要家内の保護装置で事故電流が遮断できなければ、電力会社側の変圧器や発電機にも大きな負担を与えるため、電力会社側の保護装置が働いてしまい、波及事故として扱われるおそれもある。短絡事故の電流は、即座に系統から切り離さなければならない。
回路を流れている電流を強制的に切り離す場合、電気は電路を流れ続けようとするため、電極が実際に離れたとしても、電極間を電子が流れようとして放電が発生する。この電視の流れがアークであり、光と熱を発生させながら電流を流し続けようとする。
アークは、空気が電離してプラズマ状態になったもので、約10,000℃の温度を放ち、さらに可視光が放出される。アークは導電性を持つため、アークを通して電気が流れ続けようとする。このアークを素早く冷却し、導電性を断つことでアークを消す(消孤させる)のが、遮断の仕組みである。
交流回路であれば、電圧は「プラス」「ゼロ」「マイナス」という周期で推移しているため、冷却されて導電性が低くなっていれば、ゼロ点でアークが消滅する。この状態で絶縁が確保されていれば遮断完了となるが、絶縁が完全に得られなければ、再発孤(アークの再発生現象)が発生する。
遮断器の選定において、定格遮断容量を間違えて選定すると、遮断時にアークの再発孤が発生し、遮断器を破損する原因となる。これを原因として電力会社側の変電所が停電すれば、付近一帯を巻き込んだ停電が発生し、波及事故につながる。アークの消孤を確実に行うため、保護協調が十分に図られた機器選定が重要である。
アークを簡単に視認する方法として、家庭用のハンドドライヤーなど比較的電流の大きな機器が運転した状態で、スイッチを切らずにコンセントプラグを抜くと、わずかに放電する。この放電もアークの一種である。
100Vの電圧で12A程度が流れるドライヤーの回路であれば、発生したアークは即座に冷やされ、かつコンセントの平刃間の距離は十分に離れているため絶縁性能が高く、放電はすぐに消失する。しかし6,600Vの高圧電路を流れる数百アンペアの電流を遮断した場合では、家庭用のドライヤーなどとは比較にならない規模のアークが発生する。
アークが他の導体と接触すると短絡事故になる。アークを効率良く消孤するためには、真空遮断器などの高性能な遮断器を用いると良い。従来は、絶縁油を内蔵した「油遮断器(OCB)」が広く使われていたが、火災のおそれがあるために、今ではまったく使用されていない。
気中遮断器(ACB)という遮断器もあるが、遮断するために使用する圧縮空気製造部が過大であることや、圧縮空気によって発生する大きな遮断音の発生により、低圧バスダクトなど大電流の遮断が必要な場合を除き選定することはあまりない。
なお特別高圧の受変電設備では、より消弧性能の高い「ガス遮断器(GCB)」が用いられている。
高圧遮断器の引外し方式には、電圧引外し、コンデンサ引外し、不足電圧引外し、電流引外しの4種類がある。
電圧引外し方式は、遮断時に電圧を印加して遮断器を動作させる方式である。遮断器を動作させるための制御電源を用意しなければならないため、受変電設備内に蓄電池を設けることになるが、保護継電器への適用が幅広く、動作が確実なため信頼性が高い方式である。
電源装置を別途設けなければならないため、性能は高いがコスト面の負担も大きい。
キュービクル内部に直流電源装置を収容する場合、放熱対策を十分に行う。蓄電池は熱に弱く、周囲温度が上昇する期待寿命が著しく低下する。キュービクル内部の熱管理が重要である。
コンデンサ引外しは、引外し用コンデンサを遮断器動作用として常時充電し、コンデンサの放電エネルギーによって引外す方式である。通称「コンデンサートリップ」や「コントリ」とも呼ばれている。
電圧引外しと同様、高い信頼性のある引外し方式であるが、制御電源を喪失すると、数回の引外しで完全放電し使用不能となる。かつ30~60秒の時間経過でも引外し不能となるため注意を要する。直流電源装置が不要となるので、電圧引外し方式よりも安価である。
電流引外しは、事故電流を変流器で変成し、二次電流によって遮断器を動作させる方式である。最も安価な方式であり、直流原電装置やコンデンサなどの付属装置がなく、事故電流をCTで検出し引外しを行う。
高圧気中負荷開閉器(PAS)は、電流が流れた状態で開閉ができる「開閉器」のうち、受電点など責任分界点で用いられる開閉器である。
電流が流れたまま回路の切り離しができる開閉性能を持っているが、遮断機能は搭載されておらず、短絡による事故電流は遮断できない。
PASは、電力会社との責任分界点において、区分開閉器として使用されており、需要家側の設備として、PASの一次側には事故電流を遮断するための装置を設けられない。受変電設備のケーブルヘッドから、PASまでの高圧ケーブルで短絡事故が発生した場合、事故を遮断できるのは電力会社側の遮断器しかなく、近隣を巻き込んだ停電事故が発生する。
近隣を巻き込んだ停電は「波及事故」と呼ばれ、損害賠償や補償を含む大きな電気事故として取り扱われるが、PASを設けている場合、波及事故を回避できる可能性が高い。これは「過電流蓄勢トリップ」と呼ばれる機能によるものであるが、後に解説する。
PASは、受電点に設けられる電柱(一号柱)の上部または、電柱が設けられない建物であれば外壁に直接取り付ける。無電柱地域ではPASを使用できず、地上に高圧キャビネットを設けて、UGSやUASといった負荷開閉器を使用することになる。
PASには、地絡事故を検出する機能持たせることが可能で、これは付属する「SOG装置」と呼ばれる装置で対応する。SOG装置には100V電源が必要であるが、電柱が建物から離れているなど、電源敷設工事が困難であれば、高圧電線路から100Vを得るためのVT付きを選定すると良い。
PASは高さ15m程度の電柱上部に設けられるため、地域により落雷事故に遭遇する可能性が高く、避雷器(LA)が必須となる。落雷による電流を建物内に引き込まないように、100V電源はVTで対応し、かつ故障警報の信号を建物内に取り込まないという判断も有り得る。
従来の高圧交流負荷開閉器は、絶縁油を使用した製品が普及していた。現在では、故障による噴油事故の頻発により、油を利用した気中開閉器を使用してはならないと高圧受電設備規定で定めているため、設置されることはない。
負荷開閉器は、短絡事故などで発生する事故電流を遮断する機構を搭載していない。PASでの事故遮断ができない以上、電力会社側の変電所で事故電流の遮断が発生し、近隣を含む停電を伴う。
変電所から需要家までの電気の供給にあっては、専用の引込をしているのは稀で、殆どが周囲にある建物に対しても電気が供給されている。変電所側の遮断器が動作すると、地域一帯が停電してしまう「波及事故」となる。
波及事故を起こした場合、自家用電気工作物を維持管理している電気主任技術者は、経済産業省への電気事故を報告しなければならない。かつ、停電による被害を受けた周辺施設から損害賠償の請求を受けるおそれもある。
このような大きな問題につながる「波及事故」を防ぐため、PASに内蔵されている安全機能の一つが「過電流蓄勢トリップ」である。これはSOG動作とも呼ばれている。過電流蓄勢トリップが適切に働けば、地域停電を伴う事故が発生しても、波及事故として扱わなくても良いこととなっている。
事故を起こした需要家は、電力会社の系統から切り離された状態となる。事故点を調査し、問題が除去できれば、PASを投入することで再送電を受けられるが、事故が取り除かれていない状態で再送電を受け、再び電力会社側の遮断器が動作した場合、二度目の送電は行われない。この時点で「波及事故」として扱われる。
断路器は、充電されている電路を開閉するための装置で、主に「遮断器の充電を開放し点検を行う」ために用いる。断路器はディスコンまたはDSとも呼ばれる。
充電された電路を開閉する機能しか持たず、負荷電流の開閉機能はない。負荷開閉機能はないが、短絡電流を一定時間、異常なく流せるだけの耐量は確保されているため、短絡時にDS部分だけが故障することはない。
負荷電流を断路器で切り離すのは厳禁である。開閉時に発生したアークを消孤させる機構を備えていないため、アースが飛散し導体間まで広がるおそれがある。導体同士がアークで短絡すると、爆発を伴う大事故につながり、操作者に大きな被害をもたらすため大変危険である。
一般的な安全対策として、断路器の二次側に設ける遮断器とのインターロックの構築が望まれる。インターロックは「遮断器が投入されている状態では断路器を操作できない」という安全装置であり、遮断器が開放状態となっていない限り、断路器は物理ロックが施されるというのが最も安全である。
断路器は負荷電流を開放できないが、高圧ケーブルの充電電流や、計器用変圧器の励磁電流など、極めて小さな電流の開閉であれば可能である。
断路器と遮断器を併設する方式のほか、引出式の遮断器を採用すれば、断路器の設置を省略できる。この場合も、負荷電流が流れている状態で遮断器が引き出されないように、インターロックによって「引出操作によって遮断器を放勢」や「物理的ロック状態とし引き出せない」といった対応が必要となる。
断路器の定格電圧は、高圧遮断器と同様に、公称電圧3.3kVの場合は定格電圧3.6kV、公称電圧6.6kVの場合は定格電圧7.2kVを選定する。
定格電流は最大負荷電流の1.5倍程度とすると良い。将来の負荷増強に対応できるよう、若干大きめの定格電流とするのが望まれる。遮断器と違い、遮断容量といった点からの確認はない。
定格短時間電流は、断路器の負荷側に設けられている高圧遮断器が動作し、事故電流が遮断されるまでの間、発生する事故電流に耐えなければならない。
高圧遮断器と同様、規定時間は、JISでは1秒、JECでは2秒とされており、遮断器によって事故電流が取り除かれるまでの間、異常を発生させずに耐えるだけの性能が確保されている。
断路器は遠隔操作に適した装置ではなく、手動操作が基本となる。断路器の付近に操作用のフック棒を用意し、必要に応じて手動での開閉を行うこととなるため、フック棒はキュービクルの内部に収容しておくと良い。
どの列盤にフック棒を収容しているかがすぐにわかるよう、列盤の表面に「フック棒収容位置」といった表示をするのが良い。
フック棒による開閉操作は、力を掛けて一気に行うのが原則である。負荷電流が流れていないとはいえ、電極間がわずかに離れた状態ではアークの発生のおそれがあり危険である。投入、開放のどちらであっても、勢い良く操作し、所定の距離まで離隔させるよう注意して操作する。
高圧の受変電設備において、受電用、分岐用を問わず最も一般的に採用される遮断器は、真空遮断器である。真空遮断器は遮断時のの騒音が小さく、8kA、12.5kA、20kAなど幅広い短絡電流に対応できる。
小規模な受変電設備では、受電点にLBSを使用する「PF・S方式」が普及しているが、300kVAを超える規模では「CB方式」の採用につき、真空遮断器が極めて幅広く普及している。
真空遮断器は、通常の負荷電流遮断だけでなく、事故電流の遮断が可能である。短絡、地絡、不足電圧など各種保護継電器の信号を受けて、遮断器を開放または自動投入を行い、停復電の自動化を行える。
真空遮断器を選定する場合、定格電流は負荷電流の1.3倍以上として計画すると良い。もし負荷電流が200Aであれば、200×1.3 = 260A以上と考えると、400Aまたは600AのVCBを選定する。ただし、真空遮断器の選定は定格電流だけでなく、短絡容量も考慮して選定しなければならない。
進相コンデンサを保護する遮断器であれば、突入電流が大きいという理由から、定格電流の1.3倍では不足するおそれがあるため、定格電流の1.5倍以上とすると良い。
真空遮断器は、短絡容量として8kA、12.5kA、20kAといった種類がある。電力会社に対し、B種接地工事の抵抗値や、電源インピーダンスの問合せを行うと、需要家の受電点における三相短絡電流が提示されるので、提示された数値を上回る短絡容量を選定する。
指示された三相短絡電流が「5kA」であれば、8kAまたは12.5kAとすれば良いが、一般には12.5kAが主流となっている。遮断器の定格電流は、常時流れる電流値ではなく、短絡時に流れる大電流に耐えられる数値にて決定することが多く、負荷電流が100Aの系統であっても、短絡容量の状況によっては、定格電流が600Aにせざるを得ない場合もある。
定格電圧は、公称電圧3.3kVの場合は定格電圧3.6kV、公称電圧6.6kVの場合は定格電圧7.2kVを選定する。定格電圧 = 回路公称電圧×1.2 / 1.1 という式から求められた値となる。
受電用の遮断器は、契約電力や受電電圧、力率によっても選定できるため、負荷電流が定まらない場合は、最大電流の想定で検討することも可能である。想定される負荷電流に対して、1.3倍程度を見込むのは前述の通りである。
契約電力2,000kWを想定した受変電設備の場合、定格電流は2000 / ( 6.6 × √3 × 0.85 ) × 1.3 = 268Aと考え、直近上位の400Aとすれば良い。ただし、短絡電流に対する遮断容量もあわせて検討する必要がある。
定格短時間電流は、定格遮断電流と同じ電流を、一定時間流しても「異常が発生しない」限界値である。規定された時間は、JISでは1秒、JECでは2秒とされている。高圧真空遮断器の場合、周波数を基準として遮断時間が設定されており、3サイクル(50Hz:60ms・60Hz:100ms)で事故電流を遮断することとなっている。
なお遮断時間は、遮断器のトリップコイルが励磁され始めてから、アークを消弧するまでの時間である。
真空遮断器には、取付方式、蓄勢方式、インターロックの有無など、必要に応じた付加機能もあわせて検討しなければならない。代表的な遮断器の機能について解説する。
真空遮断器の取り付け方法には、固定式と引出式がある。固定式は名称の通り、母線と遮断器が固定されているため停電なく取り外すことは出来ない。一次側に断路器(DS)を設け、停電状態としなければ点検することは不可能である。
引出式は、電路を充電した状態で、遮断器を母線から切り離す機構を持った遮断器である。遮断器を手前に引き出すことで電路から切り離されるので、一次側に断路器を設けずに本体が点検できる。
引出式のVCBはコスト面で不利だが、断路器の設置省略により箱内スペースに余裕が生まれるので、メンテナンスの面で優位となる。引出式VCBは、VCB本体を引き出すことで点検可能なため、断路機能付き遮断器と考えて良い。
本体コストは固定式の方が安価なため、引出式を採用しないこともあるが、断路器を設けるのが必須となり、キュービクルの箱サイズは大きくなる。定価ベースであるが、600Aの「固定手動ばね方式」は35万円程度、「引出式電動ばね方式」は70万円程度である。
インターロックは、「遮断器が開放されていない限り断路器が動作しない」という安全対策である。断路器は負荷電流の開閉は不可能なので、直近二次側に設けられている遮断器が開放されれば、無負荷となるので断路器で安全に開放できる。
逆に、遮断器が投入された状態で、万が一二次側に負荷電流が流れていると、断路器による開閉によりアークが発生し、短絡事故につながるおそれがあるため、インターロックによって物理的なロックを行うことを推奨している。
引出式の真空遮断器のインターロックは、「負荷電流が流れた状態で引出しが行われる」という行為に対するものだが、自動でスプリングを開放して遮断状態にする、遮断器がオフ状態(遮断状態)でなければ引出しがロックされるといった機構が存在する。
VCBの遮断機構が動作できる状態まで、内蔵する「ばね」に力を蓄えている状態を「蓄勢」と呼び、遮断器が動作し蓄勢されていない状態は「放勢」と呼ばれる。
遮断器の動作においては、動作時に電極を利確する速度が遮断能力に影響する。素早く電極から離れるほど遮断能力が高まるため、強力なばねの力を用い、遮断能力を高められるよう工夫されている。ばねの力を蓄える方法としては、手動と電動の二種類が製品化されている。
手動ばね方式のVCBは、手でハンドルを回すことによってバネに力を蓄えて蓄勢する。手動ばね方式は、手でハンドルを回さなければ二度目の遮断器動作ができないため、遠隔制御や停復電制御をしている環境には不向きである。
電動ばね方式は遮断器内部に小型モータが内蔵されており、モーターの回転力でばねを蓄勢する。電力の供給が断たれている場合、手動で蓄勢できるように手動蓄勢装置も内蔵しているのが通常である。手動式よりも電動式の方がコストは高い。
どちらも遠隔で遮断動作は可能であるが、蓄勢状態にするための方式が違うことに注意して計画する。
現在は生産を休止している「油遮断器」や、最新の「ガス遮断器」について説明する。
古くから使用されている遮断器で、新規に採用される事例はない。鉄製タンク内に入っている絶縁油内で、接触子を開閉する方式である。
電流遮断時に発生するアークは、絶縁油の気化熱を利用して冷却し消弧する。効率良く電流遮断を行うため、接触子を覆ってしまう消弧室形と呼ばれる方式により、油量の少ない製品が普及していた。
絶縁油は可燃物であり、建物の不燃化の点で不利になることや、絶縁油の点検が煩雑であること、真空遮断器が開発されたことなどから、新規の案件で採用することはない。
絶縁性能の高い「SF6ガス」を消弧媒体として利用した遮断器で、特別高圧受変電設備に採用実績が多い。真空遮断器と比較してコストが高く、設置に必要な面積が大きいため、6.6kV高圧受変電設備に採用する事例はほとんどない。
接点をSF6ガス内部に設け、遮断で発生したアークにSF6ガスを吹き付けて消弧する。1.5MPa程度に圧縮したガスを蓄えておき、遮断時には接触子に対して高圧ガスを噴射する。非常に高い消弧性能を持っている。
負荷開閉器(LBS)は、負荷電流が流れた状態の電路を開閉できる装置である。断路器よりも性能が高く、遮断器よりも簡易という位置付けの装置と考えれば良い。
LBSは負荷電流を開閉する機能があるが、短絡電流を遮断する機能はない。短絡電流の遮断には限流ヒューズを使用するのが基本である。負荷開閉の操作は断路器と同様、フック棒を用いた手動操作となる。短絡電流を除去したヒューズは再利用できず使い捨てのため、新品に交換しなければならない。
LBSの本体に付属している引外しレバーにフックを掛けて引くと、スプリングの力で可動接触子が急速に離れる。このとき負荷電流の開放によりアークが発生するが、LBSにはアークの方向を制御する「アークシュート」と呼ばれる装置が設けられているため、隣接する導体へのアーク飛散は発生しない。
アークシュートはアークの熱エネルギーを奪い、かつ電流を絞ることで消弧を促す。この仕組は「細隙消弧」と呼ばれ、LBSの消弧方式の主流となっている。
負荷開閉器の定格電流は、負荷電流の1.3倍以上をの容量で選定するのが基本だが、一般的にLBSの定格電流は200Aであるため、750~1,000kVAクラスの中・大規模変圧器でなければ、ほぼ定格電流による問題は発生しない。
負荷開閉器に搭載する限流ヒューズは「変圧器用」「モーター用」「コンデンサ用」「一般用」の種類に応じた遮断電流が設定されており、保護する負荷対象にあわせた選定が求められる。
変圧器の開閉にあっては、励磁電流やケーブル充電電流による瞬間的な突入電流が発生し、進相コンデンサーは長時間に渡る過渡電流や、突入電流が発生する。
LBSは多頻度開閉に適した機器ではなく、負荷電流を何度も開閉していると故障につながる。負荷電流の開閉は200Aが定格であったとしても、約200回程度で限界となる。
コンデンサを開閉する場合、力率改善に伴い多頻度開閉の機会が多くなるため、LBSではすぐに使用不可能となるおそれがある。多頻度開閉が見込まれる系統は、電磁接触器を選定すると良い。
LBSは、屋内使用の場合の耐用年数は15年、屋外使用の場合の耐用年数は10年とされる。多頻度開閉に対する寿命も考慮しなければならず、負荷電流が流れている電路を開閉した回数が200回を超えたものについては、更新が推奨される。
耐用年数を超過すると、絶縁性能の劣化、アークの消弧性能の低下など、開閉の信頼性低下が懸念される。
負荷開閉器には短絡電流を遮断する機能がないため、限流ヒューズを搭載して短絡保護が行われる。限流ヒューズは、短絡電流の大電流に対する良好な遮断特性を持っているが、定格電流の2倍程度にしか達しない小電流による事故に適しておらず、溶断不良を起こす可能性がある。
溶断不良は、ヒューズ本体が過熱によりヒューズが爆発するなど、大きな電気事故につながるため大変危険である。
短絡などで発生した事故電流によりヒューズの一部が遮断された場合、切れたヒューズは交換することとなるが、切れなかった他相のヒューズは性能が著しく劣化しているおそれがあるため、再利用せず全て交換するのが基本である。
単相3線式の電路に限流ヒューズを設ける場合、中性線にヒューズを入れてはならない。中性線が欠相状態となると、中性線を除く相に接続されている負荷が直列回路となり、過電圧や過電流による焼損事故が発生する。単相3線式の場合は、中性線を除く2相にのみヒューズを挿入する。
相間絶縁バリアは、LBSの導体間に対して挿入する絶縁物であり、アークに対する保護だけでなく、内部に侵入した小動物による相間短絡を保護する目的で設ける。線間だけでなく、大地間に対する保護も考慮すると、4枚バリアが基本となる。
受電方式において「PF・S方式」を採用する場合、LBSに対して絶縁バリアの設置が義務付けられる。JIS C4620:2004では「PF・S形の主遮断装置に用いる高圧交流負荷開閉器で高圧充電露出部がある場合には、前面に透明な隔壁を設け、赤字で危険表示をする。その相間及び側面に絶縁バリアを設ける。」と明記されている。
PF・S方式ではなく、CB方式で受電している場合、LBSに対する絶縁バリアの有無に関する規定がないため、バリアが設けられていない受変電設備は多数ある。
絶縁バリアが設けられてあれば、小動物などがキュービクル内部に侵入した場合であっても、地絡や相間短絡による事故が防止できるというメリットがあるので、安全強化を目的として、自主的に絶縁バリアを設けている事例もある。
バリアを標準付属品としているメーカーと、オプション対応としているメーカーがあるため、設計図に記載する場合は注意を要する。
サイト内検索