架空地線
架空地線(Overhead Ground Wire)は、送電線や配電線といった電力インフラの安全稼働のため、送電鉄塔や電柱の最も上部に施設される電線であり、「架空」に張られた「接地された電線」を示す。設置目的は「落雷」から、重要な電力線を保護することにある。
雷撃から配電線や送電線を保護するため、雷撃を遮蔽するよう電線上部に架設する接地線。送電線・配電線の最上部に架空敷設することで、送電線への直撃雷を保護する避雷設備の役割を持つ。
架空地線は、実質的に巨大な避雷針として機能する。雷は通常、最も高い物体や、鋭利な先端を起点に発生するおそれが高い。架空地線は、電力線よりも高い位置に設置されることで、落雷が電力線に影響することを防止する。受けた雷撃電流は、架空地線から鉄塔・電柱、地下に埋設された接地線を通じて大地へと安全に流され、下部の電力線への直撃や、それに伴う停電・機器破損を未然に防ぐ。
送電線や配電線の頂部から大地に異常電圧・電流を逃がす役割から、グランドワイヤー(ground wire)とも呼ばれている。
雷害には、直撃雷だけでなく「誘導雷」という副次的な現象も存在する。雷雲の接近による静電誘導や、近隣への落雷による電磁誘導によって、周囲の電力線には予期せぬ異常電圧が発生することがある。架空地線は、接地された状態で電力線の上部を覆うように張られているため、この異常電圧の発生を抑制・軽減する役割も担っている。
架空地線に直撃雷が発生した場合、雷電流は架空地線を伝わって流れ、鉄塔を経由して地面に流れる。雷電圧が著しく高い場合、鉄塔のインピーダンスにより電位が上昇し架空地線から送電線に逆流する「逆フラッシオーバ」が発生する。架空地線と共に埋設地線を敷設し、鉄塔の接地抵抗を軽減させるのが逆フラッシオーバの防止に有効である。
架空地線の内部に光ファイバーを通し、避雷設備としてだけでなく通信機能を付与した「OPGW」と呼ばれる架空地線が普及している。光ファイバーは落雷や超高圧の送電圧によって生み出される電磁界の影響を受けず、安定した通信を可能にでき、かつ架空地線の内部に収容でき合理性が極めて高い。












