階段通路誘導灯
消防法と建築基準法を兼ねる防災照明
階段通路誘導灯は、火災時や停電時に避難経路となる階段や傾斜路を照らし、安全な避難を支援するための照明器具である。法的には、消防法施行令に基づく「通路誘導灯」としての機能と、建築基準法に基づく「非常用照明」としての機能を一台で兼ね備えた設備として扱われる。
通常、誘導灯といえば緑色の表示面を持つ器具を想像するが、階段通路誘導灯は足元の明るさを確保することを主目的としているため、白色のLEDや蛍光灯を光源とし、レンズやグローブによって床面照度を確保する構造となっている。設置基準としては、階段や傾斜路の床面および踊り場の中心線において、1ルクス以上(LEDや蛍光灯の場合は2ルクス以上)の照度を確保できるよう配置しなければならない。
非常電源容量と長時間定格型
本器具は、商用電源が喪失した停電時において、内蔵された蓄電池または非常用自家発電設備からの電源供給により、即座に非常点灯に切り替わる機能を必須とする。消防法では原則として「20分間以上」の点灯継続が義務付けられているが、避難に時間を要する特定防火対象物(百貨店、ホテル、病院など)や、大規模な高層建築物、地下街などにおいては、防災性能の強化が求められる。
具体的には、延べ面積が50,000平方メートルを超える大規模建築物や、15階建て以上の高層ビルなどでは、避難完了までに長時間を要することが想定されるため、60分以上の点灯持続能力を持つ「長時間定格型」の誘導灯を選定しなければならない。設計図書や機器表において、標準型か長時間型かの区分を明確に記載することは、建築確認申請や消防同意において極めて重要である。
点検機能とメンテナンス
階段通路誘導灯には、外観から容易に点検ができるよう、器具本体に点検スイッチと、充電モニターランプが設けられている。引き紐を引く、あるいはボタンを押すことで、強制的に商用電源を遮断し、内蔵バッテリーによる点灯状態(非常点灯)へ切り替えることができる。これにより、バッテリーの寿命やランプの断線を定期的に確認することが可能である。
バッテリーにはニッケルカドミウム蓄電池やニッケル水素蓄電池が使用されており、その寿命は通常4年から6年程度である。定期点検において所定の点灯時間を維持できない場合は、バッテリーの交換が必要となる。近年では、カセット式で容易に交換可能なバッテリーユニットが普及しており、メンテナンス性の向上が図られている。
省エネルギー制御と人感センサーの活用
階段通路誘導灯は、原則として「常時点灯」が求められる設備である。これは、いつ火災や停電が発生しても確実に避難経路を視認できるようにするためであるが、人のいない夜間の階段で常にフル点灯させることはエネルギーの浪費となる。
この課題に対し、消防庁の認定を受けた人感センサー付き器具であれば、在室検知による制御が認められている。不特定多数が利用する階段においては、消灯してしまうと利用者に不安感(暗闇への恐怖)を与えるため、人がいない時は明るさを落とす「段調光(待機時減光)」タイプを採用するのが一般的である。一方、共同住宅の非常階段など、特定に居住者のみが利用する場所に限り、待機時に完全に消灯する「消灯型」の採用も許容されている。












