電気設備の知識と技術 > 電気設備用語辞典 > インバータ
電子制御により電圧や電流、周波数などをコントロールする装置。インバータは工業用途で極めて幅広く普及しており、空調機の制御、蛍光灯の点灯などで使用される。交流の電源を入力し、コンバータで直流に変換し、さらにインバーターで交流に戻すことで電圧や周波数を変換する。単に「インバーター」と呼んでいるが、コンバーターを組み合わせた電圧・周波数変換装置であると考えて良い。
照明器具の分野では、従来の蛍光灯は50Hz~60Hzで点灯する機構のため、高速で移動する物体や飛翔物の見え方にちらつきを生じていたが、インバータを搭載することで周波数を高め、点滅が肉眼で判別できなくすることで品質を高めた「Hf蛍光灯」という製品がある。周波数が高ければ、肉眼で検出できる「ちらつき」が改善できるため、照明環境が改善する。
空調機やファン、ポンプの分野でもインバーターが活用されている。ファンやポンプは電動機の極数と周波数によって回転数が決められており、周波数も一定であるため、回転速度は極数の変更によって行われる。モーターの回転速度は N = 120 × f(周波数) / P(極数) で算出可能であるが、極数Pは2の倍数であり、極数を変えると回転速度の変動が大きくなる。
インバーターは周波数を変更できる装置のため、周波数fを変更できる。そのため、周波数を細かに変更することで回転速度を変更でき、不要な高速運転を避けたり、周波数を少しずつ変化するソフトスタートにより始動電流を低減させるなど、モーターの可変速に適している。周波数を自由に調整する方法としてPWM制御が広く用いられる。インバーターの出力電圧はパルス形状で階段的な波形となるため、平滑回路を組み合わせて正弦波に整流して用いられている。
段階的にしか速度制御できない電動機と比べて、電動機の制御にインバーターを採用することで、周波数を細かに設定すれば回転速度調整も、トルクの無断階調整も容易となる。ファンやポンプは回転速度が能力と相関しているため、電源周波数をインバータで変化させ、電動機の回転数を制御して能力調整する「インバーター制御」を組み込み、ファンやポンプの能力調整を行っている。
インバーターは、周波数や電圧を調整することで、電動機の回転速度を変化させることができるが、電動機の回転数を下げることができれば、回転数の3乗という高い乗率で電力が低減できる。これにより大幅に消費電力が低減できるため、省エネルギー効果が非常に高く評価できる。
建築物の省エネルギー性能を計算する場合でも、ファンにインバーターを搭載することは非常に効果的であり、約60%ほどの電力まで低減できるものとして設定されている。インバーターは電源系統を高調波で汚染する原因になるなどデメリットも内包しているが、消費電力を大きく低減できるという利点があり、空調機、ファン、ポンプ、エレベーターなど回転機械に対して幅広く適用できる。
インバータで周波数を変えて運転する場合、電圧を維持したまま周波数のみを低下させると、励磁電流が著しく増大し、始動電流が大きくなり発熱も高くなるため故障の原因となる。周波数を下げて運転する場合、電圧も同様に低下させて電流値も低下させ、発熱を防止するよう注意を要する。
最も効率良く電動機を制御できる電圧と周波数の特性は「Vf特性」と呼ばれ、一般的な制御はVf特性に合わせて一定となるように制御されるが、低周波数域では発生トルクを調整するために、若干電圧を高める微調整が行われている。
インバータによる制御を行うと、電源系統に「高調波」と呼ばれる電流のひずみを発生させる。高調波は通信機器に異常ノイズを発生させたり、コンデンサに異常振動やうなりを発生させるため危険である。パッシブフィルタやアクティブフィルタといった、高調波を打ち消す機構の検討が重要である。
高調波についての詳細は高調波の知識を参照。
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