フィードバック制御
出力値を入力側へ戻す閉ループ制御
フィードバック制御は、制御対象の現在の状態(出力値・制御量)を測定し、その値を目標値(入力値)と比較して、両者が一致するように修正動作を連続的に行う制御方式である。出力結果を入力側に戻して反映させる回路構成をとることから「閉ループ制御」とも呼ばれる。
自動制御において基本となる方式であり、エアコンの室温調整だけでなく、自動車のクルーズコントロール、ロボットアームの位置決め、化学プラントの流量制御など、あらゆる産業分野で採用されている。常に結果を見ながら調整を行うため、目標値通りの出力を維持する精度が高いのが特徴である。
偏差の補正とハンチング現象
フィードバック制御の基本動作は、目標値(SV)と測定値(PV)の差分である「偏差」をゼロに近づけることにある。最も単純な方式は「オンオフ制御」である。これは、目標値を下回ればスイッチをオンにし、上回ればオフにするという二値的な操作を行う。
しかし、加熱ヒーターや大型モーターなどの制御対象には、エネルギーを与えてから実際に温度や速度が変化するまでに時間的な遅れが存在する。この遅れにより、目標値に達してスイッチを切っても、余熱や慣性で行き過ぎてしまう「オーバーシュート」や、逆に下がりすぎてしまう「アンダーシュート」が発生する。この上下動を繰り返す波打ち現象を「ハンチング」と呼び、制御品質を悪化させる要因となる。
PID制御による安定化
ハンチングを抑制し、滑らかで素早い制御を実現するために、実務ではPID制御が広く用いられる。これは以下の3つの動作を組み合わせたものである。
- P動作(比例):偏差の大きさに比例して操作量を決める。目標値に近づくにつれてブレーキをかけるように操作量を減らすが、偏差が残りやすい(残留偏差)。
- I動作(積分):過去の偏差の蓄積(積分値)に応じて操作量を決める。P動作で残った微小なズレ(オフセット)を解消し、目標値に完全に一致させる役割を持つ。
- D動作(微分):偏差の変化速度(傾き)を見て操作量を決める。外乱などによる急激な変化を予測して、事前に大きな修正力を加えることで応答性を高める。
これら3つの要素を適切に調整することで、オーバーシュートを最小限に抑えつつ、短時間で目標値に収束させることが可能となる。
外乱に対する応答遅れ
フィードバック制御の弱点は「結果が起きてから対処する」という点にある。例えば、空調制御において「窓が開けられて冷気が入ってきた(外乱)」という事象が発生した場合、フィードバック制御は「室温が下がった」という結果を温度センサーが検知して初めて、ヒーターの出力を上げる指令を出す。
したがって、どうしても対応に時間差が生じ、一時的な温度低下を避けることができない。制御対象の熱容量が大きい場合や、センサーの反応速度が遅い場合、この遅れが顕著となり、外乱が収まった後も過剰に加熱してしまうなどの不安定さを招くことがある。
フィードフォワード制御との併用
フィードバック制御の「後追い」という欠点を補うために、フィードフォワード制御を組み合わせる手法が有効である。これは、外乱(窓の開閉や外気温の変化など)を事前に検出し、その影響が出る前にあらかじめ操作量を修正する方式である。
例えば、ボイラーの蒸気圧制御において、蒸気の使用量が急増することを流量計で検知し、圧力が下がる前に燃料バルブを開くといった制御を行う。ただし、フィードフォワード制御単体では、計算上の予測でしか動かないため、実際の結果とズレが生じても修正できない。そのため、フィードフォワードで大枠の変動を吸収し、残った誤差をフィードバック制御で精密に合わせるという「複合制御」を行うことで、外乱に強く精度の高いシステムを構築できる。
検出器と操作端の重要性
フィードバック制御の品質は、制御装置の性能だけでなく、現状を測定する検出器(センサー)と、実際に動く操作端(アクチュエーター)の性能に依存する。センサーにノイズが乗っていたり、測定位置が不適切であったりすれば、誤った情報に基づいて制御が行われ、系が暴走するおそれがある。
また、バルブやダンパーなどの操作端にガタつきや動作遅れがあると、計算通りの制御が行えず、ハンチングの原因となる。安定したフィードバック制御系を構築するためには、適切なPID調整を行うとともに、センサーやアクチュエーターの定期的なメンテナンスが不可欠である。












