ホリゾント照明(ホリゾントライト)
ホリゾント照明の概要と役割
ホリゾント照明(Horizon Light)とは、舞台奥に設置された背景幕(ホリゾント幕)を均一に照らし出し、舞台空間に奥行きや季節感、時間的変化を与えるための照明手法、およびその器具の総称である。「ホリゾントライト」とも呼ばれる。
ホリゾント幕は単なる白い布であるが、ここに光を投射することで、抜けるような青空や、燃えるような夕焼け、あるいは闇といった「背景」を出現させる役割を持つ。役者を照らす明かり(地明かり)とは異なり、空間そのものの雰囲気を決定づける重要な演出要素である。
アッパーとロアーの使い分け
ホリゾント照明は、器具の設置位置によって大きく2種類に分類され、それぞれが異なる演出効果を担っている。
- アッパーホリゾントライト(UH):舞台上部のバトンから吊り下げて、上空から幕を照射する器具。「アッパー」や「ボーダーライト」とも呼ばれる。主に「空全体」や「昼光」を表現するのに用いられる。
- ロアーホリゾントライト(LH):舞台奥の床面に設置し、下方向から幕を照射する器具。主に「地平線」や「水平線」、あるいは夕日や朝日のような下からのグラデーション表現に用いられる。
この2つを組み合わせ、上下で異なる色を混ぜ合わせることで、リアルな空のグラデーションや、幻想的な風景を作り出すのが照明デザインの基本となる。
均一な照射を実現する技術
ホリゾント照明において重要かつ難しい技術的課題は、「広い面積をムラなく均一に照らすこと」である。器具と幕の距離は1m〜2m程度と非常に近いため、通常の照明器具では光が強すぎてスポット状のムラができたり、幕の上部まで光が届かなかったりする。
これを防ぐため、ホリゾントライトには特殊な「非対称配光(アシンメトリック)」のリフレクターが採用されている。これは、幕の下部には光を抑え、幕の上部には強い光を飛ばすよう設計されており、これによって近距離からでも高さのある幕全体をフラットな明るさで照らすことが可能となっている。
光源の進化とLED化の恩恵
かつては、500W〜1000Wの高出力ハロゲン電球に、RGB(赤・緑・青)やアンバーのカラーフィルターで色を出し、ゴボを装着して模様を演出していた。ホリゾント照明は長時間点灯させることが多く、熱によってフィルターがすぐに退色してしまうことや、膨大な消費電力が課題であった。
近年では、光源のフルカラーLED化が進んでいる。LED化には以下の大きなメリットがあり、現代の舞台照明の主流となっている。
- メンテナンスフリー:フィルター交換が不要で、熱による消耗が少ない。
- 色表現が豊富:RGBWなどの混色により、フィルターの差し替えなしで多様な色を作り出せる。
- 省電力・低発熱:空調負荷を軽減し、舞台上の温度上昇も抑制できる。












