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ホーム分電盤

住宅用途に特化して作られた分電盤の総称で、樹脂製のコンパクトな分電盤内に、電力会社との責任分界点となる「アンペアブレーカー」、漏電事故から保護する「漏電遮断器」、各負荷に電源供給する分岐開閉器を収容したパッケージ型の分電盤である。

ワンルームマンションの住戸など、多くの分岐回路を必要としない小規模用途であれば、2~4回路用の小型で安価な製品を選定すると良い。3~4LDK以上の大規模な住宅用途であれば、各室ごとにブレーカーが区分され、それぞれエアコンなど回路が多くなるため、16~20回路以上の製品のホーム分電盤を選定することになる。

規模に応じた分電盤を選定し、必要に応じて将来機器増設用の予備回路を設けておくと良い。大型エアコンやIHクッキングヒーター、電子コンベックなど、建物利用中に200V機器を新規に導入する予定があれば、200V機器専用のブレーカーを用意しておくと、より汎用性が高まる。

分電盤の設置場所と保護カバー

ホーム分電盤を選定する場合、安全面を重視し、前面にカバー付きの製品を選定するのを基本とするが、分電盤をクローゼットや棚に収容するなど、蓋を設けなくても安全性が担保できるのであれば、前面カバーを省略するのも一案である。

ホーム分電盤の前面には直接ブレーカーの操作ツマミが表れるが、内扉でも充電部は隠ぺいされており、一定以上の安全性は保たれている。不用意に接触すると危険のため、天井に近い高所などに設けるのを基本とする。

クローゼットや棚の内部にホーム分電盤を配置する場合、容易に点検できるように、盤の前面に物を置けないよう計画する。分電盤の前面に物が置ける状態では、事故時にすぐに点検できないばかりか、電気事故時の発熱や火花が可燃物に引火し、火災になるおそれがあり危険である。

ホーム分電盤を構成する材料は樹脂製が一般的であるが、金属製の製品も生産販売されている。駐車場や物置、納戸などに分電盤を設ける場合、長尺材料の接触で破損しないように、金属製のホーム分電盤とすると安全性が高まる。

非常用回路は漏電遮断器の一次側

ホーム分電盤から、自火報機能付きのインターホン(P型3級受信機)や感知器など、防災設備への電源供給が必要な場合、漏電遮断器の一次側から電源送りを行う。不用意にブレーカーをオフとされないよう、赤色のロックキャップを取付け、かつ「ブレーカーを切らないで下さい」というような表示で注意喚起を行う。

多機能タイプのホーム分電盤

多機能タイプのホーム分電盤では、オール電化対応、太陽光発電対応、落雷対策のSPD内蔵、エネルギー計測機能、感震機能など、多くの付帯機能が用意されているため、設計者はクライアントの要望に合わせて、コストと安全性を考えつつ合理的な計画を行うべきである。

エコキュート(電気温水器)対応

エコキュートや電気温水器を設ける場合、通常使用する家庭内の電気機器への電源供給とは違う系統から送電する。リミッタースペースの一次側に電気温水器や蓄熱機器へのブレーカーを設けることになる。

IHクッキングヒーター対応

IHクッキングヒーターは電気エネルギーで熱を生み出す調理器具であり、消費電力が非常に大きい。ホーム分電盤に200Vのブレーカーを設けることになるが、機種によって20Aと30Aがあるので、ヒーター側の仕様書に応じたブレーカーサイズとする。

オール電化住宅では、電気温水器とIHクッキングヒーターを併用するのが基本であり、ガス併用の住宅と比較して、ホーム分電盤は非常に大きくなる。

太陽光発電連系対応

太陽光発電設備を住宅屋根に設ける場合、電力会社への売電や、構内利用のための接続点として、ホーム分電盤内に連系用ブレーカーを設ける。系統連系では電流の流れが逆向きとなるため、逆接続対応ブレーカーという特殊な製品を選定しなければならない。

感震機能対応

地震によって発生する電気火災を防止する機能を付与した分電盤である。震度5強以上の揺れを検出してブレーカーを遮断する機能を搭載している。

地震が発生した瞬間に遮断すると避難の支障となり危険なので、数分間はブザーやランプで警報を行い、一定時間経過後に主幹のブレーカーを遮断する。一定時間内に安全が確認できれば、ブレーカーの遮断をキャンセルできる。

地震による停電で最も危険なのは、復電後に電気機器に電源が送られ、火災につながる「通電火災」である。電気ヒーターなどがオン状態のまま家具や衣料品が接触していると、時間経過によって出火のおそれがあり大変危険である。停電発生後に復電した場合は、一定時間経過後にブレーカーを遮断して安全を確保する。

分電盤の仕組み、特徴、設置計画の詳細については分電盤・配電盤の仕組みと違いを参照。

 
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